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- 中国、インフラ公募REITの対象範囲を拡大へ~再生可能エネルギー施設、保障性賃貸住宅に期待~
コラム
2021年07月06日
2021年7月2日夜、中国国家発展改革委員会は「インフラ不動産投資信託基金(REITs)パイロットプロジェクトの更なる促進に関する通知」(以下「通知」)を発表し、現行インフラ公募REITの対象範囲を拡大する方針を明らかにした。
2021年5月31日、優先区域と優先分野等1条件付きで、中国における初のインフラ公募REIT9銘柄の売出しが始まり、個人投資家からの申し込みが殺到した。申し込み額は発行規模の十数倍超にあたり、一部銘柄は公募期間を短縮し、新規申し込みの受付を早めに終了した。6月21日、中国における初のインフラ公募REIT9銘柄が上場し、初日の平均値上がり率は5.21%だった。取引価格は2日目にわずかに下落し、3日目から14日目にかけて小幅に変動しながらも、インフラ公募REIT9銘柄の価格は全体として上昇している。
2021年5月31日、優先区域と優先分野等1条件付きで、中国における初のインフラ公募REIT9銘柄の売出しが始まり、個人投資家からの申し込みが殺到した。申し込み額は発行規模の十数倍超にあたり、一部銘柄は公募期間を短縮し、新規申し込みの受付を早めに終了した。6月21日、中国における初のインフラ公募REIT9銘柄が上場し、初日の平均値上がり率は5.21%だった。取引価格は2日目にわずかに下落し、3日目から14日目にかけて小幅に変動しながらも、インフラ公募REIT9銘柄の価格は全体として上昇している。
7月2日の「通知」では、インフラ公募REITの対象区域は全国範囲へ拡大した。京津冀(北京市、天津市、河北省など首都圏)、長江経済ベルト(上海市、江蘇省などその流域の11省・市)、グレーターベイエリア(粤港澳大湾区:香港、マカオ、広東省珠江デルタの9都市)、海南省等優先区域を重点的に推進する方針は従来の通りである。
すでに上場実績のある高速道路、廃棄物処理、物流・産業園区に加え、新たに充電ステーションを含めたエネルギーインフラ施設、保障性賃貸住宅(低所得世帯向けの低賃料公営住宅)、水利施設、自然遺産・観光施設、駐車場等が対象分野として追加された。
ただし、該当インフラ施設の資産評価額が10億元(約170億円)以上、追加募集規模は初回募集規模の2倍以上というオリジネーターの資金力および長期的な成長が実現できる経営能力を問われる条件も追加された。さらに、新規インフラ事業に投資する金額は調達資金の8割以上という条件が、9割以上に変更された。同時に、新規プロジェクトの申告先も全国インフラ公募REITパイロットプロジェクトライブラリに統合し、手続きを一本化した。
今回インフラ公募REITの対象拡大を受け、再生可能エネルギー施設、保障性賃貸住宅等中国の国家戦略の基本方針に関わる分野に注目したい。近年、中国ではすでに再生可能エネルギー分野では大きな成果を上げている。中国の第14次五カ年計画(2021年~2025年)期間中、再生可能エネルギーはエネルギー消費増分の50%以上を占める見通しであり、再生可能エネルギーの成長性は非常に期待されている。インフラ公募REITの対象範囲の拡大は、こういった新規再生可能エネルギープロジェクトに新たな資金源を提供できる。同時に、再生可能エネルギー施設は優良資産として中国インフラ公募REIT全体の収益向上につながることが期待される。
保障性賃貸住宅の供給増加は、中国の第14次五カ年計画のもう1つの重要な目標である。中国の住宅供給市場は、長期にわたり分譲住宅に重点を置き、賃貸住宅の供給は十分とは言えない。住宅の建設において土地の用途が制限され、土地使用権の取得関連諸費用が高く、低賃料の賃貸住宅の提供が困難である。保障性賃貸住宅の供給を拡大するため、国務院は7月2日に「保障性賃貸住宅の発展促進に関する意見」を発表し、保障性賃貸住宅を建設するにあたり、土地の用途変更が可能とし、申請手続きを簡素化し、助成金や税制優遇、融資期間の延長等金融支援策を提供し、保障性賃貸住宅制度を完備しようとしている。インフラ公募REITの導入は保障性賃貸住宅の建設・改修に資金源を提供し、運用・管理等専門業者の介入により賃貸住宅市場の環境整備に貢献できることが期待される。
1 詳細は、研究員の眼「中国、インフラセクター向け公募REITパイロットプロジェクト実施へ」https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=64362?site=nli、「中国、インフラ公募REIT上場へ~計9銘柄、発行総額は5千億円超となる見通し~」https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=67820?site=nliを参照。
すでに上場実績のある高速道路、廃棄物処理、物流・産業園区に加え、新たに充電ステーションを含めたエネルギーインフラ施設、保障性賃貸住宅(低所得世帯向けの低賃料公営住宅)、水利施設、自然遺産・観光施設、駐車場等が対象分野として追加された。
ただし、該当インフラ施設の資産評価額が10億元(約170億円)以上、追加募集規模は初回募集規模の2倍以上というオリジネーターの資金力および長期的な成長が実現できる経営能力を問われる条件も追加された。さらに、新規インフラ事業に投資する金額は調達資金の8割以上という条件が、9割以上に変更された。同時に、新規プロジェクトの申告先も全国インフラ公募REITパイロットプロジェクトライブラリに統合し、手続きを一本化した。
今回インフラ公募REITの対象拡大を受け、再生可能エネルギー施設、保障性賃貸住宅等中国の国家戦略の基本方針に関わる分野に注目したい。近年、中国ではすでに再生可能エネルギー分野では大きな成果を上げている。中国の第14次五カ年計画(2021年~2025年)期間中、再生可能エネルギーはエネルギー消費増分の50%以上を占める見通しであり、再生可能エネルギーの成長性は非常に期待されている。インフラ公募REITの対象範囲の拡大は、こういった新規再生可能エネルギープロジェクトに新たな資金源を提供できる。同時に、再生可能エネルギー施設は優良資産として中国インフラ公募REIT全体の収益向上につながることが期待される。
保障性賃貸住宅の供給増加は、中国の第14次五カ年計画のもう1つの重要な目標である。中国の住宅供給市場は、長期にわたり分譲住宅に重点を置き、賃貸住宅の供給は十分とは言えない。住宅の建設において土地の用途が制限され、土地使用権の取得関連諸費用が高く、低賃料の賃貸住宅の提供が困難である。保障性賃貸住宅の供給を拡大するため、国務院は7月2日に「保障性賃貸住宅の発展促進に関する意見」を発表し、保障性賃貸住宅を建設するにあたり、土地の用途変更が可能とし、申請手続きを簡素化し、助成金や税制優遇、融資期間の延長等金融支援策を提供し、保障性賃貸住宅制度を完備しようとしている。インフラ公募REITの導入は保障性賃貸住宅の建設・改修に資金源を提供し、運用・管理等専門業者の介入により賃貸住宅市場の環境整備に貢献できることが期待される。
1 詳細は、研究員の眼「中国、インフラセクター向け公募REITパイロットプロジェクト実施へ」https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=64362?site=nli、「中国、インフラ公募REIT上場へ~計9銘柄、発行総額は5千億円超となる見通し~」https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=67820?site=nliを参照。
(2021年07月06日「研究員の眼」)
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経歴
- 【職歴】
2018年 早稲田大学 アジア太平洋研究科 博士(学術)
2018年 ニッセイ基礎研究所 入社
【資格】
環境プランナー、国際環境リーダー
【加入団体等】
日本NPO学会、Nonprofit Management & Leadership(米)
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