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2025年06月11日

中国REIT市場の動向と今後の見通し~不動産市場低迷の中で見えてきたREIT市場の成長~

社会研究部 研究員 胡 笳

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■要旨

中国の不動産市場は、過剰供給や財務規制「三道紅線(3つのレッドライン)」の影響を受け、近年著しく低迷している。住宅価格は全国的に下落傾向を続け、その影響は地方財政や建設関連産業にも波及し、経済全体に対する下押し圧力を強めている。不動産企業は、従来の高レバレッジ型ビジネスモデルから、賃貸住宅事業へのシフトやREITの活用などを通じて、着実性を重視する中国においては新たなビジネスモデルへの転換を迫られている。

このような状況下で、REIT(不動産投資信託)市場、特にインフラ公募REITへの注目が高まっている。オフィスや商業不動産を基盤とする私募型の類REITは、テナント需要の鈍化等を背景に収益性が低下しているのに対し、インフラ資産を投資対象とするインフラ公募REIT市場は、政策支援や安定した実需を背景に、堅調に拡大を続けている。

インフラ公募REITは証券取引所に上場される透明性の高い金融商品として制度設計されている。投資対象となるインフラ資産には、3年以上の運営実績、今後3年間の純キャッシュフロー分配率が4%以上であること、明確な権利関係の確立など、厳格な基準が設定されている。また、分配可能利益の90%以上を投資家に分配することが義務づけられており、安定性と信頼性の高い資金運用手段として評価が高まっている。

今後は、再生可能エネルギー施設やデータセンターといった新たなインフラ分野への展開が進むことにより、インフラ公募REIT市場については、さらなる多様化と拡大が見込まれる。また、インフラ公募REITは、今後の公共によるインフラ更新や都市再開発といったプロジェクトにおいて、持続可能な資金調達手段としての役割が一層高まるものと期待される。一方で、情報開示の透明性向上や法制度の整備は依然として重要な課題である。

■目次

はじめに
1――中国の不動産市場の低迷と広がる経済への影響
2――類REIT市場の動向
  1|市場の拡大と発行済み総額の推移、用途別比率
  2|低下する確定分配率
3――インフラ公募REIT市場の動向
  1|時価総額の推移とグローバルなREIT市場における位置付け
  2|保有不動産の用途別割合と分配金利回り
  3|インフラ公募REIT指数
4――2025年以降の中国REIT市場の見通し
  1|市場拡大の可能性と新たな資産領域の展開
  2|投資家保護と情報開示の透明性向上
  3|インフラ公募REITの役割拡大
  4|今後の政策動向と制度整備の方向性

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年06月11日「基礎研レポート」)

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社会研究部   研究員

胡 笳 (こ か)

研究・専門分野
中国REIT、中国不動産全般

経歴
  • 【職歴】
     2018年 早稲田大学 アジア太平洋研究科 博士(学術)
     2018年 ニッセイ基礎研究所 入社
    【資格】
     環境プランナー、国際環境リーダー

    【加入団体等】
     日本NPO学会、Nonprofit Management & Leadership(米)

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レポート紹介

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