コラム
2020年05月01日

中国、インフラセクター向け公募REITパイロットプロジェクト実施へ

社会研究部 研究員 胡 笳

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2020年4月30日夜、中国証券監督管理委員会と中国国家発展改革委員会が、「インフラセクターにおける不動産投資信託基金(REITs)パイロットプロジェクトの実施に関する通知」を発表し、中国本土における公募REITの正式なスタートとなった。「通知」では公募REIT発行の優先区域および優先分野も発表されている。

優先区域は、京津冀(北京市、天津市、河北省など首都圏)、長江経済ベルト(上海市、江蘇省などその流域の11省・市)、雄安新区(河北省にある北京市の非首都機能移転の受け入れ先)、グレーターベイエリア(粤港澳大湾区:香港、マカオ、広東省珠江デルタの9都市)、海南省、長江デルタ(上海市、江蘇省南部、浙江省北部の一部地域)および国家級新区、一部の国家級経済技術開発区である。

優先分野は、倉庫・物流、有料道路等交通施設、電気・水道・ガス等のライフライン、汚水・ゴミ・固体廃棄物・危険廃棄物処理場などとされ、その他、通信システム等新型インフラ、および国家戦略性新興産業クラスター、ハイテク産業園区、特色のある産業園区も対象として明記されている。

ただし、インフラ公募REITのパイロットプロジェクトは、竣工済み、かつ安定的な運営実績があることが前提条件として要求されている。

公募REITの発行はこれまで通り「証券法」、「証券投資基金法」の関連規定に従うことになるが、中国証券監督管理委員会はプレイヤーの役割分担及び発行、販売、運営、情報公開等に関する細則を策定する予定である。

現在最も期待されているのは、2020年末までに、60万カ所を超えると予想される中国工業情報化部が推進している5Gアンテナ局設置への公募REITの活用である。既に設置され電波発射が開始された約13万カ所のアンテナ基地局は、直ちにインフラ公募REITを通じた資産流動化策の候補となる。

新型コロナウイルスの影響で外出自粛の中、テレワークの普及や宅配サービスの利用頻度が高まり、高速かつ安定的なインタネット回線がより強く求められている。通信システム等インフラ公募REITは、この需要に応える手段となり、同時に中国の金融市場に大きな影響を与えるだろう。
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社会研究部   研究員

胡 笳 (こ か)

研究・専門分野
土地・住宅、中国不動産全般

経歴
  • 【職歴】
     2018年 早稲田大学 アジア太平洋研究科 博士(学術)
     2018年 ニッセイ基礎研究所 入社
    【資格】
     環境プランナー、国際環境リーダー

    【加入団体等】
     日本NPO学会、Nonprofit Management & Leadership(米)

(2020年05月01日「研究員の眼」)

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