コラム
2021年06月28日

フラクタルって知っていますか-1.26次元や1.58次元の図形ってどんなものなのだろう-

保険研究部 研究理事   中村 亮一

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はじめに

「フラクタル」という言葉を聞いたことがあるだろうか。実は、このコラムでも「フィボナッチ数列について(その3)-フィボナッチ数列はどこで使用され、どんな場面に現れてくるのか(自然界以外)-」(2021.3.26)の最後に、フィボナッチ数列との関連の中で若干触れておいた。

今回は、この「フラクタル」という概念及びそれが自然界等でどのように観測され、またそれが社会でどのように利用されているのかについて、紹介する。

まずは、今回の研究員の眼では、「フラクタル」という概念及び代表的な「フラクタル図形」について紹介する。

フラクタルとは

フラクタル(fractal」というのは、「自己相似性」という特殊な性質を有する幾何学的構造のことをいい、より具体的には「図形の全体をいくつかの部分に分解していった時に全体と同じ形が再現されていく構造」のことをいう。フランス人の数学者ブノワ・マンデルブロ(Benoît B. Mandelbrot)が考案した概念である1。フラクタル構造を有する図形が「フラクタル図形」となる。

自然は一見すると無秩序なカオス状態のようにみえるが、よく観察すると同じ構造が繰り返されている「フラクタル構造」になっている(ものが多く観察される)と言われている。
 
1 因みに、「フラクタル(fractal)」は、ラテン語の「フラクタス(fractus)」から作られたマンデルプロの造語であり、英語の「一部・断片・破片」等の意味を有する「フラクション(fraction)」と同じ語源となっている。

コッホ曲線

まずは、フラクタル図形として最も有名な「コッホ曲線」について紹介する。これは1904年にスウェーデンの数学者ヘルゲ・フォン・コッホ (Helge von Koch) が考案したものである。以下が示すように、線分を3等分し、分割した2点を頂点とする正三角形の作図を無限に繰り返すことによって得られる図形である。
コッホ曲線
無限回数を繰り返した図形を示すことは困難なので、一定回数後の姿を示すと以下の通りになる(以下のフラクタル図形においても同様)。
フラクタル図形2
このコッホ曲線について、その長さを測定してみると、1回の操作で線分の長さが 4/3 倍になるので、操作を無限に繰り返して得られるコッホ曲線の長さは無限大となる。

コッホ雪片

コッホ雪片(Koch snowflake)というのは、コッホ曲線を3つ繋ぎ合わせた正三角形をベースに作られるフラクタル図形である。即ち、以下のようなプロセスを経て作成される。
コッホ雪片
コッホ曲線は無限の長さを持つので、同様にコッホ雪片の周長(周囲の長さ)も無限の長さを持つ。一方で、コッホ雪片の曲線で囲まれた面積は有限に留まる。最初の正三角形の面積を 1 とするとコッホ雪片の面積は 1.6 に収束する。
{面積が元の正三角形の1.6倍になることの証明}
上記の図からわかるように、1回の操作で1つの線分が(長さが 1/3倍の)4つの線分になる。

よって,n ステップ後の線分の本数は 3・4 n  で、各線分の長さは1/3 n  となる。

(n+1)ステップで増加する面積Sn+1は、1辺が 1/3 n+1  である正三角形 3・4n個分となることから、
面積が元の正三角形の1.6倍になることの証明
最初の三角形の面積は √3/4 なので、コッホ雪片の面積は
面積が元の正三角形の1.6倍になることの証明
となり、元の正三角形の1.6倍となる。

シェルピンスキーの三角形

もう一つ有名なフラクタル図形として「シェルピンスキーの三角形」を紹介しておく。これは、「シェルピンスキーのギャスケット(Sierpiński gasket)」とも呼ばれるもので、自己相似的な無数の三角形からなる図形である。1915年にポーランドの数学者ヴァツワフ・シェルピンスキー(Wacław Franciszek Sierpiński)によって考案された。

これは、以下の手順を繰り返すことで作図される。

(1) 正三角形を用意する。
(2) 正三角形の各辺の中点を互いに結んでできた中央の正三角形を切り取る。
(3) 残った正三角形に対して、(2)の手順を無限に繰り返す。

具体的に、例えば4段階までの過程を示すと、以下の通りとなる。
シェルピンスキーの三角形
これを繰り返していくと、さらに以下のような図形になっていく。
シェルピンスキーの三角形2
この図形の面積は明らかに有限であるが、この図形を構成している正三角形の3辺の長さは、上記の図からわかるように、1回の操作で1.5倍になっていくことから、無限に大きくなっていく。

フラクタル次元

通常「次元」といえば、1次元の直線、2次元の平面、3次元の空間、さらにはこれに時間の概念を加えた4次元といったものを思い浮かべると思われる。ところが、フラクタルの世界においては、「フラクタル次元」という概念が存在し、ここで定義される次元は0以上の実数で整数であるとは限らない。

具体的に、あるフラクタル図形の「フラクタル次元がnである」とは、「相似比が1:aである時に、いわゆる『長さ』の比が1:b となる時の an=b となるnのこと」を言う。

別の定義では、「あるフラクタル図形を1/a に縮小したときに、元の図形を埋めるために必要となる図形の個数がbとなる時のan=b となるnのこと」を言う。

これがいわゆる通常の次元の拡張概念になっていることは、2次元平面では「相似比が1:2になるときに、長さが1:4になっていく」ということから、ご理解いただけるのではないかと思う。

いずれにしても、フラクタル次元は「n=log b/log a 」で定義されることになる。

線の図形は、平面を覆い尽くすように複雑になればなるほど、平面に近くなるので、フラクタル次元は「2」に近くなることになる。このことから、線の図形が平面を覆っている割合を、フラクタル次元を用いて表すことができることになる。

さて、先ほどの「コッホ曲線」を例にとると、図を見ていただければわかるように、a=3、b=4 となるので、 log 4/log 3 ≒1.2618 となる。即ち、「コッホ曲線」は、1.26次元の図形ということになる。

これに対して、「シェルピンスキーの三角形」の場合には、a=2、b=3 となるので、log 3/log 2 ≒1.5849 となる。即ち、「シェルピンスキーの三角形」は、1.58次元の図形ということになる。

従って、「シェルピンスキーの三角形」は「コッホ曲線」や「コッホ雪片」と比べて密である、といえることになる。

カントール集合

上記の2つは、1次元超2次元未満のフラクタル図形となっていた。ここでは、1次元未満のフラクタル図形の例として、「カントール集合」を紹介する。

「カントール集合(Cantor set)」というのは、「閉区間 [0, 1] に属する実数のうち、その三進展開のどの桁にも 1 が含まれないような表示ができるもの全体からなる集合」のことをいう。これだと何だかよくわからないということになると思われるので、幾何学的に示すと、次ページの図のようになる。

以下のように、線分を3等分し、得られた3つの線分の真ん中のものを取り除くという操作を繰り返す。即ち、単位区間I = [0, 1] から、1回目の操作で (1/3, 2/3) を取り除き、2回目の操作で (1/9, 2/9) と (7/9, 8/9) を取り除き……といった具合に操作を無限に繰り返していって残った部分が「カントール集合」となる。
カントール集合(
このカントール集合については、自分自身を 1/3倍に縮小したものを 2個持ってくれば自分自身を再構成できるので、自己相似性を有するフラクタル図形である。そのフラクタル次元は、log2/log3 ≒0.6309 となり、0.63次元の図形ということになる。即ち、通常の直線の2/3未満の次元しか有していないことになる。

メンガーのスポンジ

ここでは、2次元超3次元未満のフラクタル図形の例として、「メンガーのスポンジ」を紹介する。

「メンガーのスポンジ(Menger sponge)」というのは、以下のプロセスで作成される図形2である。

(1) 立方体を、3×3×3の27個の区画に分け、中央(面心・体心)の7個を取り除く。
(2) 残った小さな20個の立方体に対して同じ事を繰り返していく。

「メンガーのスポンジ」のフラクタル次元は、log20/log3=2.7268 となり、2.72次元の図形ということになる。

「メンガーのスポンジ」は、1回のプロセスでその表面積が1/3ずつ増加することになるため、その(2次元的な大きさを示す)表面積は無限となる。一方で、1回のプロセスでその体積は7/27ずつ減少することになるため、その(3次元的な大きさを示す)体積は0となる。

次元と図形の各種指標の関係

これまで紹介してきたフラクタル図形について、その次元と伝統的な図形の基準指標である「長さ」、「面積」、「体積」の関係をまとめると、以下の図表の通りとなっている。
フラクタル図形の「長さ」、「面積」、「体積」の関係
このように、フラクタル図形については、伝統的な図形の基準指標である「長さ」、「面積」、「体積」とは異なるこれらの中間に位置する指標が存在して、それが有限となるものとして存在している形になっていることがわかる。

まとめ

以上、今回は「フラクタル」という概念及び代表的なフラクタル図形について紹介してきた。

今回紹介したもの以外にも、「ドラゴン曲線(Dragon curve)」と呼ばれる図形、「バーンズリーのシダ(Barnsley fern)」と呼ばれるシダを模した図形、「シェルピンスキーのカーペット(Sierpiński carpet)」等が有名なフラクタル図形である。さらには、コッホ曲線やシェルピンスキーの三角形の立体版である「コッホの双正三角錐」や「シェルピンスキーの四面体」等も存在する。

ここまでに紹介したこれらのフラクタル図形は、出発点となる図形をコピーして、主として「相似変換(辺の長さの比や角度を変えずに大きさを変更)」を繰り返すことによって作成される「反復関数系(IFS:Iterated function system)フラクタル」と呼ばれるものである。

さらには、別の作成方法によるフラクタル図形もある。出発点となる図形をコピーして、「反転」と呼ばれる変換による縮小を繰り返して作成する「円反転フラクタル」と呼ばれるものとして「アポロニウスのギャスケット(Apollonian gasket)」や、複素数を使った漸化式を使用して作成する「複素力学系フラクタル」と呼ばれるものとして「マンデルブロ集合(Mandelbrot set)」や「ジュリア集合(Julia set)」といったものもある。興味を感じられた方は、是非こうした図形もご覧になられると面白く感じられるのではないかと思う。

なお、「フラクタル」というのは、ここまで説明してきたように抽象的な数学の概念であるが、一方で実は、このフラクタルが自然界に広くみられることがわかっている。

このシリーズの次回の研究員の眼では、自然界でみられるフラクタルについて紹介することとしたい。
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中村 亮一 (なかむら りょういち)

研究・専門分野
保険会計・計理

(2021年06月28日「研究員の眼」)

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