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- フィボナッチ数列について(その3)-フィボナッチ数列はどこで使用され、どんな場面に現れてくるのか(自然界以外)-
はじめに
一山崩し
・n個の玉がある。2人が交互に玉を取り合って、最後に玉を取り尽くした方が勝ちとなる。
・最初は、全ての玉を取ることはできないが、任意の個数の玉を取ってもよい。
・各段階で、直前に相手が取った玉の数の2倍まで取ることができる。
それは、「残された玉の数がフィボナッチ数になると、その時点で必ず後手必勝になる」ということである。実際に考えてみると、以下のような具合である。
(1) 3個の玉がある場合、先手が1個取れば後手は残りの2個、先手が2個取れば後手は残りの1個を取ればよいので明らかである。
(2) 次に、5個の玉がある場合、先手が1個取れば後手は1個取ることで①の状況になる。先手が2個以上とれば後手は残りの玉を取ればよい。
(3) 8個の玉がある場合、先手が1個取れば後手は2個取ることで(2)の状況になる。先手が2個取れば後手は1個取って(2)の状況になり、先手が3個以上取れば、後手は残りの玉を取ればよい。
(4) 13個の玉がある場合、先手が1個取れば後手は1個取ることで残りは11個となるが、次に先手は1個か2個しか取れないのでいずれにしてもその後後手が2個ないしは1個取ることで(3)の状況になる。先手が2個取れば後手は3個取れば(3)の状況になる。
(5) 1個の玉がある場合、先手が3個((21-13)÷3))以上の玉を取る場合には後手は④の状況に持っていくことができ、先手が3個未満の玉しか取らない場合には、例えば21=8+13 と考えて、(3)と(4)の手法を用いることができる。
このようにして、先手の取る個数に応じて、フィボナッチ数の分解を考えて、後手は常に残りの玉の個数がいくつかのステップを踏むことでフィボナッチ数になるようにしておけば(また、そのことはフィボナッチ数列が前2項の和であり、相手の2倍までしか玉が取れないというルールにより常に可能となる)、先手がいくつの個数を取ろうが後手は必ず残りの玉の個数をフィボナッチ数とするように持っていくことができて、必ず勝てることになる。
従って、逆に言えば、「最初の玉の数がフィボナッチ数でなければ、先手は残りの玉の個数がフィボナッチ数となるように最初に必要な個数を取れば、先手必勝」ということになる。
このように、このゲームは、最初の玉の個数で先手必勝か後手必勝かが決まることになる。
n 段の階段を1段または2段ずつ上る方法
これは数学的帰納法で証明できる。
n=1 の時は、1段上りの1通りしかないのでF2=1で正しい。
n=2 の時は、1段上りと2段上りの2通りがあるので、F3=2で正しい。
n=k及びn=k+1の時に正しいとする。
(k+2)段に上るためには、(1)k段から2段上りする、(2)(k+1)段から1段上りする、の2つの方法があるが、(1)の場合の、k段までの上り方はFk+1 通りあり、(2)の(k+1)段までの上り方はFk+2 通りある。
従って、(k+2)段に上る方法は、
Fk+1 +Fk+2 =Fk+3
となり、n=k+2 の時も正しくなる。
自然数nを1と2の順序付きの和で表す方法の数
ガラス板を2枚重ねにした場合の光の反射の数
従って、Fn+1=Fn+Fn-1 となり、Fnはフィボナッチ数列となっていることがわかる。
株式投資におけるフィボナッチ数列の適用
もう1つは、下げ相場に対する戻り幅の測定や上げ相場に対する上値目標値を、フィボナッチ数列や黄金比を用いて計算し、相場の予測値を出すものである。「フィボナッチ・リトレースメント(Fibonacci retracement)」と呼ばれて、チャート上の抵抗ラインと支持ラインの水準を示すテクニカル分析の一手法となっている。
具体的には、下図で示されるような感じである。即ち、株価が上昇や下落する際に、最大値や最小値から一定の水準に相当する株価が抵抗ラインや支持ラインとして意識され、この株価からいったんは反転や反落が想定されるというものである。具体的には、例えば、以下のような比率が主要なフィボナッチ比率として使用されている。
黄金比φ 0.618
φ2(=1-φ) 0.382
φ3 0.236
1-φ3 0.764
多くの投資家がこれらの水準を抵抗ラインや支持ラインとして意識している水準なので、この近辺には思惑の買いや売りが入りやすく出来高は必然的に大きくなっていくことになると言われている。
あるいは、エリオット波動との関係では、以下のような見方もされる。
その他
加えて、フランス人の数学者ブノワ・マンデルブロ(Benoît B. Mandelbrot)が考案した「フラクタル(fractal)」という概念にも関わっていくことになる。「フラクタル」というのは、自己相似性という特殊な性質を有する幾何学的図形のことをいい、図形の全体をいくつかの部分に分解していった時に同じ形が再現されていくことをいう。自然は一見すると無秩序なカオス状態のようにみえるが、よく観察すると同じ構造が繰り返されているような「フラクタル構造」になっている(ものが多く観察される)と言われている。「フラクタル」については、今後の研究員の眼で報告することとしたい。
カリフラワーの一種であるロマネスコは、明確なフラクタル図形をした野菜として有名で、そこで見られる螺旋が右向きで8本、左向きで13本等となって、フィボナッチ数列の数となっている。
最後に
今回の一連の研究員の眼を通じて、「フィボナッチ数列」を大学入試等のための勉強の対象としてみるのではなくて、改めて自然や社会の現象に観察される対象としてみた場合に、なかなか面白いものだと感じていただければと思っている。
中村 亮一
研究・専門分野
(2021年03月26日「研究員の眼」)
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