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こどもの数が減り続けている-優(まさ)れる宝 子に及(し)かめやも

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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◇ こどもの割合は最も低い水準とみられる
過去からの推移をみると、ピークは1954年の2989万人だった。それが、1987年には2500万人を割り、1996年には2000万人を下回った。2021年のこどもの数は、ピーク時からみて、ほぼ半減したことになる。
では、人口全体に占めるこどもの割合はどう推移しているだろうか。こどもの割合は、2021年4月1日時点で、前年より0.1ポイント低い11.9%だった。この割合は、第2次ベビーブームが終わった1975年以降、47年連続で低下している。
1920年の初の国勢調査以降のデータをみていくと、戦前はずっと36%超で推移しており、ピークは1938年の37.1%だった。つまり、現在のこどもの割合は、当時の3分の1未満の水準ということになる。
それ以前の信頼できる統計は乏しいが、こどもの割合が大きく低下した時期があるとは考えにくい。いま、日本のこどもの割合は、歴史上、最も低い水準とみることができるだろう。
◇ 現在40歳代以下の人は、「自分よりも若い世代のほうが数が多い」という経験がない
つぎに、15歳未満を0~4歳、5~9歳、10~14歳に3区分して、その数の推移を比較してみる。すると、最後に0~4歳が5~9歳を上回ったのは1976年。また、最後に5~9歳が10~14歳を上回ったのは1981年となる。それ以降、約40年間にわたり、低年齢ほど数が少ない状態が続いていることになる。
つまり、現在40歳代以下の人は、「自分よりも若い世代のほうが数が多い」という経験をしたことがない。第2次ベビーブームの前に生まれた、50歳代以上の人とは、異なる世代感覚を持っている、といえるかもしれない。
◇ こどもの割合は主要国中で最低
たとえば、アメリカの18.6%(調査時点2018年7月1日)、イギリスの18.1%(同2018年7月1日)、フランスの17.7%(同2021年1月1日)はもとより、イタリアの13.3%(同2018年7月1日)、ドイツの13.6%(同2019年1月1日)、韓国の12.2%(同2020年7月1日)をも下回っている。
よく、日本は世界で最も高齢化が進んでいる、といわれる。今回公表された、こどもの割合の国際比較をみると、日本は少子化も他国に比べて進んでいる、といえるだろう。
◇ コロナ禍が少子化に拍車
6月に公表された「令和2年(2020) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」(厚生労働省)によると、2020年の出生数は84.1万人で、前年に比べて2.4万人減少した。
また、2020年の婚姻件数は52.5万組で、前年に比べて7.4万組減っている。日本では、婚姻外の出生が限られていることを踏まえると、婚姻件数の減少の影響は、今後、さらなる出生数の減少につながるだろう。新型コロナが少子化に拍車をかけている、といえそうだ。
◇ こどもがいることで、社会に活気がもたらされる
そればかりではなく、こどもがいること自体で、いまの社会に活気がもたらされる、という効果についても、よく考えてみるべきかもしれない。
奈良時代の歌人・山上憶良(やまのうえのおくら)は、万葉集に、つぎの歌を残している。
「銀(しろがね)も 金(くがね)も玉も なにせむに 優(まさ)れる宝 子に及(し)かめやも」
(解釈) 銀も金も宝石も、どうして優れた宝であろうか、いやけっしてそうではない。それらの宝も、こどもという宝に及ぶだろうか、いや及ぶものではない。
奈良時代に、どれだけのこどもがいたのか、正確なところはよくわからない。ただ、長い時を経たいまも、この歌にあらわれている、こどもの大切さは変わらないだろう。
(2021年06月10日「研究員の眼」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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