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- Covid-19における外出抑制~人々の自発的な抑制と飲食店への営業自粛要請~
Covid-19(変異株)の感染拡大により、2021年4月には3度目の緊急事態宣言が発出された。これまで新規感染者数が増加を繰り返す中で、人と人との接触機会を減らすことを目的とした対策が実施されてきた。需要者については「不要不急の外出自粛要請」により人々の自発的な外出抑制を期待した対策であり、供給側については飲食店や百貨店、劇場等の商業施設や公共施設への休業及び、営業時間の短縮要請により人々の外出自粛を求める対策が実施されてきた。こうした需給両面を通じた外出抑制策の効果について実証的に検討するのが本論の目的である。
ただし、2020年2月からこれまでの感染状況及びそれへの対応策は時期により異なっている。特に、地域単位でみると、飲食店への休業・時短要請の対応で大きく異なる。各地域のCovid-19への対策を整理した上で検討する。
分析結果をまとめると以下の通りである。
(自発的な外出抑制効果)
- 第1波(2020年2月1日~5月31日)には、人口10万人当たりの新規感染者が1単位増加すれば5%前後の外出率の減少がみられ,人々の自発的な外出抑制効果が強く確認できる。
- 第2波(2020年7月1日~9月30日)以降、外出抑制の効果は急激に低下している。第2波では0.8%前後の外出率の減少となり、その後はさらに低下して0.3%前後の低下に留まっている。
- 第4波前半期にはCovid-19(変異株)への感染リスクの受け止めから大都市圏を含む地域での上昇がみられるが、傾向として外出抑制効果が低下したのは大都市圏を含む地域である。
(供給面への制約の効果)
- 第1波では概ね30%台の外出抑制効果があったが、第2波以降は19時台以降の外出率で5%~15%台の減少と効果は大きく低下している。
- 第2波以降の減少率の水準でみれば、要請対象となる時間帯(19時以降)の効果は、大きく落ちているわけではない。
- 強めの要請をおこなった場合、あるいは緊急事態宣言を受けて政府と一体でおこなった場合には、15%前後の外出率の減少がみられ、飲食店への営業自粛要請による外出抑制効果はより高まることが確認できる。
- 第3波前半(2020年10月1日~12月27日)は、要請内容を強めても外出抑制効果がさほど高まっていない。大都市圏を含む地域で対応が異なったこと、政府との折衝を巡る行き違い的な動きがあったことが影響していると考えられる。
以上のように、人々の自発的な外出抑制効果及び、飲食店への営業自粛要請の効果は,第2波以降大きく低下している。特に、新規感染者数の増加を受けた自発的な外出抑制の効果は、概ね1%未満となっている。人々の自発的な外出抑制効果を期待する対策への依存は厳しい状況にある。
もっとも、飲食店への営業自粛要請は、第2波以降大きく低下したものの5~10%前後の抑制効果を有しており、特に、強めの要請をおこなった場合、あるいは緊急事態宣言を受けて政府と一体でおこなった場合には、外出抑制効果は15%程度へより高まることが確認できる。しかし、飲食店への強めの要請をおこなえば良いというものではない。特に、東京都など一部の地域では2020年11月末以降から5カ月におよぶ飲食店への営業自粛要請が実施されている。その中で、要請への「協力金」の支給状況に関する情報はほとんど確認できない。たとえば、東京都の「申請の流れ」をみると、2021年1月8日以降の実施分の支給は「3月上旬」とされている。しかし各種メディアの報道では,同期間の支給は2021年4月23日時点で半分程度とのことである。これでは資金繰りの厳しい中小零細企業を中心に、ただ飲食店など一部の産業へ負担を押し付け,産業間や地域間で不公平感を増長させるような結果となるのではなかろうか。営業自粛要請もまた、飲食店の自発的な行動に期待しての対策である。要請協力金に関する支給状況・結果を示した上で協力要請をするなど、政策への信頼感を高める必要がある。
■目次
1――はじめに
2――新規感染者とNPIの推移
1|新規感染者の状況
2|Covid-19への対策
3――外出抑制に関する先行研究
1|需要者による自発的な外出抑制
2|供給面への制約による外出抑制効果
4――外出抑制効果の検証
1|データ
2|推計
5――外出抑制効果の分析結果
1|第1波(2020年2月1日~5月31日)
2|第2波(2020年7月1日~9月30日)
3|第3波前半(2020年10月1日~12月27日)
4|第3波後半(2021年1月7日~3月31日)
5|第4波前半(2021年4月1日~5月7日)
6――まとめ
(2021年06月10日「基礎研レポート」)
大阪経済大学経済学部教授
小巻 泰之
研究・専門分野
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