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CPIとGDPデフレーターにおける乖離について -家計消費デフレーターとCPI-
日本大学経済学部教授 小巻 泰之
総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次
金融政策で消費者物価指数(以下、CPI)の変化率は重要な政策変数として注目されている。特に,日本銀行による「量的・質的金融緩和」の導入によりCPIへの注目は高まっている。
物価指標については従来からCPIの他、GDPデフレーターが注目されてきた。これら2つの代表的な物価指標であるCPIとGDPデフレーターは、捕捉範囲や作成方法の違いから、両統計には乖離があることが知られている。CPIとGDPデフレーターを比較すると、2000年以降、概ねCPIは種々のデフレーターの上方に位置している。また、2007年7-9月期以降CPIが上昇(下落)する局面で種々デフレーターは下落(上昇)するなど、全く異なる動きを示している。さらに、対象範囲が最も近い国内家計最終消費デフレーター(以下、HDCデフレーター)とCPIでさえも、デフレと言われる期間において概ね0.77%程度(2002年1-3月期~2012年1-3月期の平均)乖離している。
両統計の乖離は、一見、1%を下回る些細なものとみることができるが、リーマンショック前後の一時期を除けば、概ねCPIの変化率は±1.0%の範囲で推移しており、この乖離は決して小さなものではない。事実,両統計の乖離は、これまでも金融政策の変更や決定で、「GDPデフレーターがマイナスであるのに、CPIがプラスだけで政策変更しても良いのか」といった議論がみられてきた。
両統計の乖離は、総務省資料や土肥原・他(2006)等で指摘されているように、(1)ウエイト、(2)指数算式、(3)対象範囲及び概念の違い、等から生じているとされている。一般的には両統計の乖離は所与として物価及び経済動向が判断されることが多く,乖離原因を詳細に検討した先行研究は多くない。そもそもCPIとHDCデフレーターは異なる尺度により物価動向を測っているのであろうか。物価動向などに関する異なった情報を得ることができるのであろうか。
他方、両統計の乖離は、ウエイトや指数算式を合わせれば縮小するのであろうか。特に、CPIの指数算式をパーシェ型に変更すればHDCデフレーターとの乖離は縮小するのであろうか。
本論では,両統計の乖離原因を明確にすることにより,両統計の乖離が前提(所与)として物価動向などが分析されている現状についての適否を検討する。
(2013年07月12日「基礎研レポート」)
日本大学経済学部教授 小巻 泰之
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