2021年05月06日

ユーロ圏消費者物価(4月)-総合指数は加速したが、コア部分は減速

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:総合指数は19年4月以来の高い伸び率

4月30日、欧州委員会統計局(Eurostat)は4月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
前年同月比は+1.6%、市場予想1(+1.6%)と同じで、前月(+1.3%)から加速(図表1)
前月比は+0.6%、予想(+0.5%)を上回ったものの、前月(+0.9%)からは減速

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2
前年同月比は+0.8%、予想(+0.8%)と同じで、前月(+0.9%)から減速(図表2)
前月比は+0.6%、前月(1.0%)から減速

(図表1)ユーロ圏のHICP上昇率/(図表2)ユーロ圏のHICP上昇率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。

2.結果の詳細:総合指数は高い伸び率だが、インフレ圧力は強くない

4月のHICP上昇率(前年同月比)は全体で+1.6%となり、19年4月(+1.7%)以来となる高い伸び率を記録した。一方、「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」は同+0.8%となり、21年1月の1.4%をピークに伸び率は減速している。

以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。

まず、コア部分の「エネルギーと飲食料を除く総合」(前年同月比+0.8%)の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」は2月1.0%→3月0.3%→4月0.5%となり、4月は3月から加速する一方、「サービス」は2月1.2%→3月1.3%→4月0.9%と減速し、1%を割る伸び率となった。

コア以外の部分では「エネルギー」が、4月は前年同月比10.3%となり、3月の4.3%からさらに大幅に加速した。前年同月比寄与度では、約0.94%ポイントに達していると見られ、全体の伸び率の大部分がエネルギー価格により押し上げられている(前掲図表1・2)。

一方「飲食料(アルコール含む)」は、4月は前年同月比で0.7%(3月1.1%)と減速、飲食料としては16年9月以来となる1%割れの低い伸び率となった(図表3)。飲食料のうち加工食品の伸び率は1.0%(3月1.0%)、未加工食品は▲0.4%(3月1.6%)だった。特に未加工食品で前年同月の価格が大きく上昇していたため、今年4月の前年同月比伸び率がマイナスとなり飲食料全体の伸び率を低下させている。
(図表3)ユーロ圏の飲食料価格の上昇率と内訳/(図表4)ユーロ圏のコアHICP上昇率
総じて見ると、エネルギー価格が全体のインフレ率を大きく押し上げているものの、コア部分や飲食料の伸び率は減速しており、インフレ圧力としては弱い状態が続いていると言える。なお、ドイツではコロナ禍のため時限的に導入していたVAT引き下げが1月に終了しており、コア部分についても、こうした一時的な要因によってインフレ率が0.3%ポイント程度押し上げられていると見られる(図表4)。
(図表5)ユーロ圏HICP上昇率(前年同月比)/(図表6)ユーロ圏HICP上昇率(前月比)
最後に、国別のHICP上昇率を見ると、4月は前年同月比伸び率で19か国中15か国のインフレ率が加速した。その結果、17か国のインフレ率がプラスの伸び率を記録している(図表5・6)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2021年05月06日「経済・金融フラッシュ」)

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