2021年05月06日

米個人所得・消費支出(21年3月)-家計への直接給付で個人所得(前月比)が統計開始以来最大の増加

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得、個人消費ともに前月からプラスに転換、市場予想を上回った

4月30日、米商務省の経済分析局(BEA)は3月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+21.1%(前月改定値:▲7.0%)と▲7.1%から小幅上方修正された前月から大幅なプラスに転じ、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+20.3%も上回った(図表1)。個人消費支出は前月比+4.2%(前月:▲1.0%)と前月からプラスに転じたほか、市場予想(+4.1%)も小幅に上回った。また、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+3.6%(前月:▲1.2%)とこちらもプラスに転じた一方、市場予想(+3.7%)は小幅に下回った(図表5)。貯蓄率1は27.6%(前月:13.9%)と、前月から+13.7%ポイント増加した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.5%(前月:+0.2%)となり、前月を上回った一方、市場予想(+0.5%)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.4%(前月:+0.1%)と、こちらは前月を上回ったほか、市場予想(+0.3%)も上回った(図表6)。前年同月比は総合指数が+2.3%(前月改定値:+1.5%)と+1.6%から下方修正された前月を上回った一方、市場予想(+2.3%)に一致した。コア指数は+1.8%(前月:+1.4%)と、こちらも前月を上回った一方、市場予想(+1.8%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:直接給付で所得が大幅に増加

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 3月の個人所得は3月上旬に決まった追加経済対策(米国救済計画)に伴い、家計向けに1人最大1,400ドル直接給付された結果、前月比で1959年の統計開始以来最大の伸びとなった(図表1)。

また、所得の伸びに比べて個人消費の伸びが限定的となった結果、貯蓄率は20年4月(33.7%)以来の水準に上昇しており、所得対比で消費余力を大幅に残している。このため、今後ワクチン接種の進捗に伴ってソーシャルディスタンシングの解消など経済正常化の動きが強まる中で、個人消費は大幅に回復が見込まれる。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数(前年同月比)は、総合指数がFRBの物価目標(2%)を20年10月(+2.1%)以来上回った。これは新型コロナの影響で大幅に低下した前年の反動に加え、エネルギー価格が上昇したことが大きい。もっとも、物価の基調を示すコア指数は依然として物価目標を下回っている。FRBは物価指標が目先は物価目標を上回る可能性を示唆しているものの、一時的な要因によるものと判断しており、当面の金融政策判断に影響しないことを明確にしている。

3.所得動向:家計向けの直接給付で移転所得が大幅に増加

3月の個人所得(前月比)は、利息配当収入が+0.3%(前月:+0.7%)と前月から伸びが鈍化した一方、賃金・給与が+1.1%(前月:横這い)、自営業者所得が+6.2%(前月:+3.0%)と前月から伸びが加速した(図表2)。さらに、移転所得が+95.1%(前月:▲27.5%)と前月のマイナスから大幅なプラスに転じた。移転所得は前月比年率+3兆9,857億ドル増加したが、このうち米国救済計画に盛り込まれた家計向けの直接給付が+3兆9,483億ドルの増加と大宗をしめた。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、3月の名目が+23.6%(前月:▲7.9%)、価格変動の影響を除いた実質ベースが+23.0%(前月:▲8.1%)となり、名目、実質ともに1959年の統計開始以来最大の伸びとなった。(図表3)。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:財消費が大幅なプラスに転換

3月の名目個人消費(前月比)は、財消費が+8.1%(前月:▲3.0%)と前月から大幅なプラスに転換したほか、サービス消費も+2.2%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速した(図表4)。

財消費では、耐久財が+10.8%(前月:▲4.9%)、非耐久財が+6.5%(前月:▲1.9%)といずれも前月からプラスに転じた。

耐久財では、自動車・自動車部品が+14.1%(前月:▲5.5%)、家具・家電が+9.1%(前月:▲5.1%)、娯楽財・スポーツカーが+10.2%(前月:▲4.9%)と軒並み前月から大幅なプラスに転じた。

非耐久財では、ガソリン・エネルギーが+11.4%(前月:+9.1%)と前月から伸びが加速したほか、衣料・靴が+15.7%(前月:▲6.0%)、食料・飲料が+3.4%(前月:▲2.1%)と前月からプラスに転じた。

サービス消費は、住宅・公共料金が▲0.1%(前月+0.6%)と前月からマイナスに転じた一方、医療サービスが+1.0%(前月:+0.6%)、娯楽が+6.9%(前月:+0.9%)、金融サービスが+1.6%(前月:+0.4%)と前月から伸びが加速したほか、外食・宿泊が+11.9%(前月:▲2.0%)、輸送が+11.1%(前月:▲0.6%)と前月から大幅なプラスに転じた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:前月比、前年同月比ともにエネルギー価格が押上げ

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+4.9%(前月:+3.9%)と10ヵ月連続のプラスとなったほか、前月から伸びが加速した(図表6)。また、食料品価格指数は+0.2%(前月:+0.2)と小幅ながら2ヵ月連続でプラスとなった。

前年同月比では、エネルギー価格指数が+13.1%(前月:+1.3%)と2ヵ月連続でプラスとなったほか、前月から大幅に伸びが加速した(図表7)。一方、食料品価格指数は+2.9%(前月:+3.3%)と、こちらは17年7月以来45ヵ月連続のプラスとなった。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2021年05月06日「経済・金融フラッシュ」)

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