2021年04月20日

コロナ禍1年の仕事の変化-約4分の1で収入減少、収入補填と自由時間の増加で副業・兼業も

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■要旨
 
  • ニッセイ基礎研究所の3月末の調査では、20~60歳代の社会人のうち、コロナ前と職業や勤め先が変わったのは9.5%で、うちコロナ禍の影響によるものは3.9%である。非正規雇用者や自営業、飲食業等の従事者では仕事が変わった者が比較的多く、経営者や管理職、高年収層、運輸業従事者等ではほぼ変わっていない。
     
  • コロナ前と比べた収入増加層は6.6%、減少層は24.8%である。減少層は自営業や非正規雇用者、飲食業等の対面型サービス業従事者で多い。なお、自営業は約半数、非正規雇用者は約3割、サービス業従事者は4割前後で就労収入が減少しており、深刻な状況がうかがえる。
     
  • 現在の副業や兼業従事者は14.7%で、うちコロナ禍の収入減少によるものは3.7%、自由時間が増えたことによるものは2.7%である。コロナ禍で増えた副業や兼業の背景には、減少した収入の補填といったやむを得ない状況に加えて、テレワークで自由時間が増えたことを契機とした前向きな状況もうかがえた。
     
  • コロナ禍で一層、「ギグワーカー」が増えているようだが課題も多い。個人事業主となるため、最低賃金や労災保険など雇用契約を前提とした労働者保護の仕組みが適用されず、契約上の格差も懸念される。関係各所でギグワーカーを守るインフラ整備を進めることで、日本でもデジタルを土台とした労働市場が成長していくのではないか。


■目次

1――はじめに
  ~コロナ禍1年で就業者48万人減少、失業者29万人増加、職業や収入などの変化は?
2――コロナ禍1年の職業や勤め先の変化
  ~約1割で変化、非正規や自営業、飲食業などで転職・失業も
  1|全体の状況
   ~20~60歳代の約1割で1年前と仕事が変化、コロナ禍の直接的な影響は約4%
  2|属性別の状況
   ~経営者・管理職や高年収層は変わらず、非正規や低年収層、飲食業などでやや変化
3――コロナ禍1年の収入の変化
  ~約4分の1が収入減少、自営業や非正規、サービス業で多い
  1|全体の状況~約4分の1で1年前より収入減少、約7割は変わらない
  2|属性別の状況
   ~自営業の約半数や非正規の約3割、サービス業の4割前後で収入減少
4――コロナ禍における副業・兼業の状況
  ~過半数にコロナ禍の影響、収入減少の補填、自由時間の増加
  1|全体の状況
   ~約15%が副業・兼業、うち過半数に収入減少や自由時間の増加などコロナ禍の影響
  2|属性別の副業・兼業の有無
   ~自営業の約4分の1、パート・アルバイトの約2割、正規雇用でも約2割
  3|属性別の副業・兼業の状況
   ~増えた副業・兼業は収入減少の補填、正規雇用者の自由時間の増加
5――おわりに~コロナ禍で需要の増したギグワーカー、副業・兼業の今後の課題は
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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