コラム
2021年04月08日

2021年に入っても積立投資、増加中~2021年3月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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2018年1月以来の大規模な資金流入

2021年3月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、外国株式に7,300億円と大規模な資金流入があった【図表1】。それに加えて3月はバランス型や国内株式も資金流入に転じたこともあり、ファンド全体で9,300億円の資金流入と2月の4,300億円から倍以上の資金流入となった。
【図表1】 2021年3月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入
ファンド全体への資金流入が1カ月で9,000億円を超えたのは2018年1月の9,600億円の資金流入以来である。2018年1月は当月に新規設定された複数のファンドに合計3,700億円の資金流入があり、いわゆる新設ファンドによって資金流入がかなり膨らんだ。この3月も100億円を超える資金流入があった新設ファンド(【図表2】赤太字など)もあったが、新設ファンド全体では1,100億円の資金流入にとどまり、2月と同程度であった。
【図表2】 2021年3月の推計純流入ランキング

2021年に入って一段と積立投資による買付が増えている様子

投信販売を牽引した外国株式は3月に7,300億円の資金流入と2月の7,700億円の資金流入と比べるとやや鈍化したが、引き続き大規模であった。2月はラップ口座等の資産配分の見直し等によって外国株式への資金流入が膨らんでいた。実際にSMA専用ファンドを除外すると外国株式には3月に7,500億円の資金流入と2月の6,900億円から600億円増加となる。一般販売されているファンドに限ると、3月は2月以上に外国株式の販売が好調であったといえよう。
 
外国株式をタイプ別にみると、アクティブ・ファンドに5,800億円、インデックス・ファンドに1,500億円の資金流入があった。2021年に入って世界的に株価が堅調であり、一般的には高値警戒感から投資を見送ることや、利益確定の売却が出やすい状況にある。そのような市場環境の中でも、3カ月連続でアクティブ・ファンドに5000億円以上(1月5,200億円、2月6,000億円)、インデックス・ファンドに1,000億円以上(1月1,600億円、2月1,700億円)の資金流入があったことになる。
 
このように外国株式に大規模な資金流入が続いている背景には、まずは他に目ぼしい投資先があまりないことがあるだろう。そのため、多くの販社で積極的に外国株式ファンドを、特にアクティブ・ファンドを推奨していると思われる。また、外国株式のインデックス・ファンドでは、2021年に入ってから積立投資に伴う資金流入がさらに増えていることもあげられる。

月初の買付が反映される第3営業日の外国株式インデックス・ファンドの推計資金流入金額をみても、そのことが分かる【図表3】。外国株式インデックス・ファンドの第3営業日の流入金額は2020年からほぼ右肩上がりで増加し、2020年11月以降は200億円を超えている。2021年に入っても増加基調は変わらず、2021年3月、4月に大幅に増加し300億円を上回る資金流入があった。これらの資金流入すべてが積立投資によるものとは限らないが、趨勢からは月初に設定された毎月積立による外国株式インデックス・ファンドの買付が増加していることが推察される。特に、この3月と4月は新年度に向けてなのか、一段と増えたのかもしれない。
【図表3】外国株式インデックス・ファンドの月初第3営業日の推計資金流出入

外国株式投資に前のめりになり過ぎていないのか?

なお、2020年4月から2021年3月までの1年間、つまり2020年度の外国株式への資金流入は5兆1,400億円(アクティブ・ファンドが3兆9,800億円、インデックス・ファンドが1兆1,600億円)に達している。販売が好調で、特に先ほど見てきたように積立投資による買付が増えていることは、喜ばしいことである。ただ、その一方で外国株式に対して先行きを楽観視しすぎている投資家や、本質的にある価格変動性の大きさ、つまり今後、下落する可能性を軽視している投資家が増えているのではないかと心配になる。
 
この1年のパフォーマンスを振り返ると外国株式は、2020年9月と10月の2カ月は月間で下落したものの、その他の10カ月は上昇し、基準価額(分配金込み)が1年通して下落したファンドはなく、多くのファンドが5割以上も上昇した。テーマ型の外国株式ファンドの中には基準価額が2倍以上になったものもあった。2021年3月に限ってみても、多くの外国株式ファンドが上昇し、中には10%以上も上昇するファンド(赤太字)もあった【図表4】。そのような市場環境の中、いつも以上に外国株式投資に前のめりになっている投資家が数多くいるため、外国株式の資金流入がより膨らんでいる可能性もあると思われる。
【図表4】 2021年3月の高パフォーマンス・ランキング
2021年3月と同様にファンド全体への資金流入が大規模であった2018年1月は、あくまでも偶然だと思われるが、翌月に米国株式を中心に世界的に株式相場が崩れ、株価が元の水準に戻るまでに半年以上もかかった。最近の状況としては、世界的に株価が高値圏にあるという点と株価を底上げしていた米金融政策の出口の可能性なども意識されてきだしており、いつ株価が崩れてもおかしくない状況にあるといえる。

やはり投資家は株式相場が堅調なうちに、リスクを取り過ぎていないか、外国株式ファンドを保有しすぎていないか、今一度、基本に立ち返り、ポートフォリオを見直すことも必要だと思われる。販売する側も、顧客である投資家に新しい投資商品の情報提供をするだけでなく、投資家が保有する金融資産において外国株式ファンドなどを保有しすぎてないかをチェックすることも求められるだろう。

バランス型と国内株式は売却一巡?

冒頭でも触れた通り3月は、外国株式への大規模な資金流入以外にもバランス型と国内株式が資金流入に転じた。バランス型は2020年11月以降、資金流出が続いていたが5カ月ぶりの資金流入となり、しかも流入金額も1,000億円と大きかった。バランス型への資金流入は、以前から人気の高いリスク・コントロール型、TAA型のファンド(【図表2】青太字)や3月に新規設定されたファンドに集中していた。ゆえに、投資家がバランス型全体の流入金額ほどバランス型ファンドを積極的に購入した印象は乏しい。ただ、資金流出が続いていたバランス型ファンドからの資金流出が3月に鈍化しており、昨年から続いていた(一部の)バランス型ファンドの売却が一巡してきているのかもしれない。3月にバランス型が純流入に転じたことは、投資家が高水準にある株価を踏まえて、バランス型に戻りつつある兆候ともみえるため、今後の動向が注目される。
 
また、国内株式は2月末から3月にかけての株価の不安定な値動きの影響が大きかったと思われる。日経平均株価が大きく下落した翌営業日、特に2万9,000円を下回った翌営業日には国内株式のインデックス・ファンドには大規模な資金流入があった。それに加えて、国内株式ファンドの利益確定等に伴う売却自体がある程度落ち着いたこともあり、国内株式のインデックス・ファンドは3月に800億円の資金流入に転じた。一方、国内株式のアクティブ・ファンドについては資金流出こそ止まらなかったが、流出金額は300億円と2月の1,400億円と比べて大幅に減少した。
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではあり ません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資 信託の勧誘するものではありません 。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2021年04月08日「研究員の眼」)

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