コラム
2021年04月07日

まん延防止等重点措置は緊急事態宣言と何が違うのか

保険研究部 常務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長・ジェロントロジー推進室研究理事兼任   松澤 登

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今回大阪府等に発令された「まん延防止等重点措置」は、「緊急事態宣言」とどう違うのであろうか。「まん延防止等重点措置」とは、2021年2月13日施行の改正新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、特措法)で新たに導入された制度である。

大まかなイメージとしては、2020年4月に出された一度目の緊急事態宣言は特措法の想定する「緊急事態宣言」であった一方、2021年1月に出された二度目の緊急事態宣言は実際には「まん延防止等重点措置」に相当する措置であったと捉えるのが妥当と思われる。

一度目の緊急事態宣言の時は、居酒屋や理髪店などへは営業自粛要請、スポーツや劇場などへは興行中止要請が行われ、また各種公共施設等がほぼ閉鎖された。二度目の緊急事態宣言の時においては、居酒屋は夜8時までの時短営業要請が行われ、各種興行や各種施設は入場人数を限定すること等が要請された。

このように二度目の緊急事態宣言が一度目より緩やかであったのは、新型コロナ感染症を克服するまでには長期戦を覚悟するほかはなく、長期戦のためには経済を動かせる範囲では動かしておく必要があると判断されたことによると推察される。そして、後述の通り、まん延防止等重点措置は、この二度目の緊急事態宣言で行ったことがほぼ実施できるものとされている。
 
ところで、改正前の特措法では、緊急事態宣言のもとで営業自粛要請に従わない事業者に対しては、営業自粛指示とその旨の公表しかできなかった。改正特措法では、営業自粛指示を営業自粛命令に格上げ(改正特措法第45条第3項)し、命令違反に対しては30万円以下の過料に処すこととされた(改正特措法第79条)。このように都道府県知事の営業自粛要請に対して最終的に過料という金銭的なペナルティを課すことができるようになり、改正特措法の緊急事態宣言は、従前よりも一段、強い措置となったと言える。

一方、まん延防止等重点措置は、2021年1月からの二度目の緊急事態宣言と比較して考えると決して軽いものではない。特に、時短営業要請違反事業者に対しては要請に従うように命ずることができ(改正特措法第31条の6第3項)、命令違反事業者には20万円以下の過料を課す (改正特措法第80条第1号)。このような過料を課すことは、2021年2月13日より前の特措法による緊急事態宣言ではできなかった。

以上を例えると、新型コロナが国内で発生したことを受け、政府対策本部が設置され、新型コロナへの感染状況の監視とともに一般的な感染予防を政府等が要請するにとどまる段階は一階部分になる。そして緊急事態宣言を出された段階が二階部分となるとすると、今回の改正は二階部分を以前よりもかさ上げするとともに、中二階としてまん延防止等重点措置を作ったということになる(イメージとして図表参照)。
【図表】イメージ図
まん延防止等重点措置では、具体的に、営業時間の変更(時短営業)のほか、従業員への検査推奨、入場者の整理、発熱者の入場禁止、手指消毒設備の設置等が求められる(改正特措法第31条の6第1項、施行令第5条の5)。まん延防止等重点措置が新たに規定されたことを踏まえると、今後、緊急事態宣言が発令されるのはまん延防止等重点措置では出せない措置、端的に言うと営業停止要請・命令が必要となった場合に限られるものと考えられる。緊急事態宣言が発令されるのは、非常に厳しい状況下にある場合と言える。

細かい法律論をすると、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の発令には、前提要件となる感染状況が全国的か地域的か、あるいは対象となる地域が県全体か、県のさらに一部地域かということもあるが、制度の運用上はあまり本質的な相違ではないように思われる。

留意したいのは、今回のまん延防止等重点措置が、これまで我々が経験してきた緊急事態宣言より軽いものであり、活動自粛を求められる程度も軽いものとの誤った認識が仮に一般化しているのであれば、それは関係各所の広報活動の不足と、「まんぼう」と一見かわいい風に略したネーミングセンスの問題が大きいように思う。
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保険研究部   常務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長・ジェロントロジー推進室研究理事兼任

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

(2021年04月07日「研究員の眼」)

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