2020年10月08日

新型コロナ対応で今考えておきたい三つのこと

基礎研REPORT(冊子版)10月号[vol.283]

保険研究部 取締役 研究理事・ジェロントロジー推進室兼任   松澤 登

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緊急事態宣言解除の際には、感染の波が繰り返し来ることが想定され、医療体制が危機に陥る場合には再度の緊急事態宣言を出すとの説明があった。現状、新規感染者は落ち着いているようであるが、今後、新型コロナ後初めてといってよい冬を迎えるにあたって、どのような対策が求められるのであろうか。

2020年5月25日に緊急事態宣言の解除が行われたが、平常時に戻ったわけではない。新型インフルエンザ特措法に基づく「新型コロナウイルス感染症対策本部」は設置されたままである(特措法15条)。したがって、各都道府県にも対策本部が置かれ(特措法第23条)、都道府県対策本部長(知事)は、その区域に係る新型コロナウイルス対策の実施に関し、必要な要請を行うことができる(特措法第24条第9項)。

したがって現段階においても、三密回避やテレワークの要請など、協力要請レベルのことは対策本部の議事を経て、知事が行うことができる。

それでは、緊急事態宣言を改めて出すとされた場合、その意味とはどのようなものであろうか。緊急事態宣言は、新型コロナウイルス感染症のまん延により「国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼしているとき、または、そのおそれがある」(特措法第32条、施行令第6条)場合に、期間、区域、概要を定めて出される。定められた区域のある都道府県の知事は、緊急事態宣言が出されたときに、各種の要請・指示を行う権限を有する。

この要請・指示ができるものは、二つある。一つは外出自粛の要請である(特措法第45条第1項)。もう一つは、多数の者が利用する施設、または当該施設を使用する催し物の、利用停止要請(特措法第45条第2項)、および要請に従わない場合の停止指示である(同条第3項)。

ここからは、都道府県知事が外出自粛要請や、施設や催し物の閉鎖・停止要請・指示を出すためには、緊急事態宣言が出されることが前提とされているようにも読める。

ただ、特措法による緊急事態宣言の発出は非常に重たい。緊急事態宣言により、包括的一般的な自粛要請、施設や催し物の閉鎖要請・指示が出され、事実上経済が停止してしまった経験を我々はすでにしてきている。現状で、政府は、新型コロナ感染拡大防止を行いつつ、経済も回すという難しいかじ取りを行っている。

今後、冬季に向かって新型コロナ感染が再拡大することも想定されるが、今どのようなことを考えておくべきであろうか。三つのものが挙げられる。

一つ目は、緊急事態宣言発出前の都道府県知事の協力要請範囲の拡充である。緊急事態宣言発出前の協力要請規定である特措法第24条第9項に関しては、特措法第26条により、必要事項を定めるべきことを都道府県の条例に委任している。

したがって、新型コロナ感染拡大の抑止策として、条例によって、たとえば、施設に対する感染予防のための措置の要求、感染予防のための措置を行わない施設における営業自粛要請等を定めることが考えられる。現在、都道府県知事による対策が脚光を浴びている。しかし、条例という議会の意思表示に基づくことで、知事からの要請の内容に一層の正当性を与えるものと思われる。

二つ目は、緊急事態宣言発出後の影響を限定的なものとすることである。まず、生活のためや通勤等を除く県境をまたがる移動自粛要請を、特措法の条文に盛り込むことが考えられる。ゴールデンウイークの際は、感染拡大地域以外を含む、全国に緊急事態宣言が出された。他方、知事が県境をまたがる移動自粛要請発言を独自にしており、事実上の移動自粛要請が行われている。

しかし、移動の自由は非常に重要な国民の権利であり、自粛要請レベルであっても、明文の法的根拠は必要と考える。また、県境移動の自粛要請を正面から認めることにより、クラスターを追えている県にまで緊急事態宣言が出されることを回避できるのではないかと思われる。年末年始の帰省・旅行シーズンに向けて臨時国会での対応を検討すべきである。

三つ目は、強弱をつけた各種要請・指示の発出である。たとえば、接待を伴う夜の飲食店を中心に、特に感染予防対策に協力しないところに強い閉鎖要請・指示を行い、感染予防対策を行うことで、クラスターの発生がない、あるいはまれである業種・事業者は営業継続を認めるとすることが考えられる。この点、特措法第45条第2項第3項は、閉鎖要請・指示を「できる」とする規定であることから、政府の対処方針で明確化すれば足り、法律の改正までは不要なのではないかと思われる。

条例を制定する、あるいは、緊急事態宣言を限定的に発令する、および、緊急事態宣言下における要請・指示を柔軟化するという三つの方策により、医療崩壊を招かない適切なタイミングでの対応が適切になされることが重要と考える。
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保険研究部   取締役 研究理事・ジェロントロジー推進室兼任

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
一般法務、企業法務、保険法・保険業法

(2020年10月08日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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