2021年04月07日

不動産価格は既にピーク-第17回不動産市況アンケート結果

基礎研REPORT(冊子版)4月号[vol.289]

金融研究部 主任研究員   吉田 資

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ニッセイ基礎研究所では、不動産市況の現状および今後の方向性を把握すべく、不動産分野の実務家・専門家を対象に「不動産市況アンケート」( 第17回)を実施した(回答者数121名、回収率;60.2%)。

1―不動産投資市場の景況感

1│現在の景況感
「不動産投資市場全体(物件売買、新規開発、ファンド組成)の現在の景況感」について質問したところ、「平常・普通」との回答が約4割、プラスの回答(「良い」と「やや良い」の合計)が3割強、マイナスの回答(「悪い」と「やや悪い」の合計)が2割強となった[図表1]。

実体経済と金融市場、賃貸市場と投資市場の乖離が広がり、セクター間で景況感が大きく異なるなか、不動産分野の実務家・専門家の間でも景況感に対する見方が分かれた。
[図表1]不動産投資市場全体の現在の景況感
2│6ヵ月後の景況見通し
6ヵ月後の景況見通しは、悪化との回答(36%・「悪くなる」と「やや悪くなる」の合計)が好転との回答(23%・「良くなる」と「やや良くなる」の合計)を上回り、悲観的な見方がやや強まった[図表2]。
[図表2]不動産投資市場全体の6ヶ月後の景況見通し

2―投資セクター選好

1│概況
「今後、価格上昇や市場拡大が期待できる投資セクター(証券化商品含む)」について質問したところ、「物流施設」(85%)との回答が最も多く、次いで「産業関係施設(データセンターなど)」(59%)、「賃貸マンション」(38%)、「エネルギー関連施設(太陽光発電施設など)」(30%)との回答が多かった。

「物流施設」に関して、ネット通販の増加に伴い、EC 関連企業は物流拠点の拡大に積極的で、首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率は過去最低値を更新した。賃料も緩やかに上昇しており、実務家・専門家の期待が高まっている。

「産業関連施設」に含まれるデータセンターは、今や社会インフラとなった各種クラウドサービスや動画等のコンテンツ配信サービスの提供・配信基盤であり、クラウドサービスやコンテンツの成長に伴い、社会インフラとしての重要度が増している。

また、「賃貸マンション」は、他のセクターと比較して賃料変動が小さく安定収益を志向する投資家の関心が高まっている。

一方「、アウトレットモール(」2%)「、リゾート施設(」2%)「、都市型商業ビル」2%)を期待する回答は、下位に留まった。
2│前回調査との比較 [期待が高まった(後退した)投資セクター]
前回調査(2020 年1月)から回答割合が10%以上増加した投資セクター(期待が高まった投資セクター)は、「物流施設」(56%→85%)、「産業関連施設」(24%→59%)、「賃貸マンション」(22%→38%)、「エネルギー関連施設」(6%→30%)であった。

これに対して、前回調査から回答割合が10%以上減少した投資セクター(期待が後退した投資セクター)は、「オフィスビル」(53%→14%)、「海外不動産(」24%→7%)「、ホテル(」17%→5%)であった[図表3]。
[図表3]今後、価格上昇や市場拡大が期待できるセクター(前回調査との比較)
「オフィスビル」について、2020年4月の緊急事態宣言発令後、テナントの誘致に時間を要し空室率が上昇に転じている。新規募集賃料も下落傾向にある。

「海外不動産」は、前回調査では、国内不動産の高値警戒感や、グローバル分散投資のニーズなどを背景に、投資家の関心が高まっていた。しかし、欧米諸国は、新型コロナウィルスの感染状況がより深刻であり、不動産市場への悪影響が大きいとの見方がある。

3―投資エリア選好

「今後、価格上昇や市場拡大が期待できる投資エリア」について質問したところ、「東京都心5区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区)」(54%)との回答が最も多く、次いで「東京都区部(都心5区を除く)(」21%)「、福岡市(」13%)との回答が多かった[図表4]。

2020年7月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生基本方針2020」では、新型コロナウィルスの感染拡大を踏まえて、「新たな日常」を支える地域社会を構築し、「東京一極集中」の是正を進めて行く方針が掲げられた。実際に、事業拠点の地域分散や東京からの人口流出の動きが見られるものの、今回調査では東京を挙げる回答が多かった。
[図表4]今後、価格上昇や市場拡大が期待できるエリア(回答は1つ)

4―不動産投資市場のリスク要因

1│概況 
「不動産投資市場への影響が懸念されるリスク」について質問したところ、「新型コロナ拡大」(66%)との回答が最も多く、次いで「国内景気」(65%)、「ニューノーマル(デジタル化の進展、人々の行動変容など)」(43%)との回答が多かった 。

一方「、欧州政治・外交(」0%)と「地政学リスク(中東情報、北朝鮮など)」(0%)との回答はなかった。
2│前回調査との比較 [懸念が高まった(後退した)リスク要因]
前回調査から回答割合が10%以上増加したリスク要因は、「国内景気」(49%→65%)と「賃貸市況」(10%→23%)であった。

一方、前回調査から回答割合が10%以上減少したリスク要因は「米国政治・外交」(44%→20%)、「中国経済」(40%→6%)、「地政学リスク」(34%→0%)、「欧米経済」(27%→12%)、「自然災害リスク」(23%→9%)であった[図表5]。

今回調査では、コロナ収束の見通しや今後の国内景気の動向、ニューノーマル(新常態)による不動産賃貸市場への影響など国内要因に関心が高まるなか、相対的に海外情勢や自然災害への懸念が後退したものと思われる。
[図表5]不動産賃貸市場のリスク要因(前回調査との比較)

5―不動産価格のピーク時期

「東京の不動産価格のピーク時期」について、「2020年あるいは現時点(既に価格はピーク」(66%)との回答が最も多く、次いで「2021年」(18%)との回答が多かった[図表6]。

前回調査では、2020年との回答が37%、2021年以降との回答が4割強を占めるなど不動産価格の上昇が継続するとの見方が強かったが、今回調査ではそうした見方は大きく後退し、「既にピークは過ぎた」とする見方が大幅に増える結果となった。
[図表6]東京の不動産価格のピーク時期
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

(2021年04月07日「基礎研マンスリー」)

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