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PHR(Personal Health Record)サービスに求められる要件~新型コロナ接触確認アプリの利用意向を踏まえて

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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3つのプランとは、「全国で医療情報を確認できる仕組みの拡大」「電子処方箋の仕組みの構築」「自身の保健医療情報を活用できる仕組(PHR:Personal Health Record)みの拡大」である1。このうち、「自身の保健医療情報を活用できる仕組み(PHR)」については、国がつくる基盤を使って、健康増進サービスを提供する民間PHR事業者が参入することが期待されている。
現在、日本には、まだ本格的なPHRサービスは少なく、PHRという言葉もあまり認知されていない。また、一般に、自分自身の健診結果等の健康情報をサービス提供会社に提供することへの抵抗感は強く、サービス提供システムへの信頼性やセキュリティへの信頼性を強く求める人が多い。
本稿では、PHRサービスではないものの、国が推奨するオンラインサービスの1つとして、新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)の利用意向やセキュリティ不安を紹介しながら、健康に関連するオンラインサービス・アプリ等がどのようにすれば受け入れられるのかについて考えたい。利用したデータは、2020年7月からニッセイ基礎研究所で定期的に実施してきた「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査2」である。
1 村松容子「データヘルス改革 集中改革プラン~いよいよPHRシステムが稼働」ニッセイ基礎研究所 保険年金フォーカス(2021年1月26日)
2 第1回(2020年6月26日~29日、有効回答数2,062)、第2回(2020年9月25日~28日、有効回答数2,066)、第3回(2020年12月19~21日、有効回答数2,069)、第4回(2021年03月26日~29日、2070)。インターネット調査。対象は、全国に住む20~69歳の男女個人(株式会社マクロミルのモニタ)。
1――新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)の利用意向
2――PHRについての考え方
今年2月に開催された厚生労働省による「健診等情報利活用ワーキンググループ(民間利活用作業班)」では、PHRサービスの利用等についてのアンケート調査(民間PHRサービス利用者へのアンケート調査)の結果が報告された3。2020年12月に実施されたその調査によると、「パーソナルヘルスレコード(PHR)」という名称について、66.7%が「まったく知らない」と回答しており、まだ一般的に知られている状況にないことがわかる。また、名称の認知だけでなく、こういったシステムが稼働していること自体を認知していない人も多い可能性がある。
同報告によると、PHRの現利用者が過去利用者(離脱者)と比べてサービスについて多く回答している項目として、「ユーザビリティ」「アプリ利用による健康意識の変容を実感」「アプリ利用による心理的安心感を実感」をあげており、これらの項目がサービスの継続利用の促進要因と捉えることができる4。一方で、離脱者のほうが現利用者より多く回答している項目として、「データ登録のコスト知覚(入力が面倒)」「セキュリティ不安(個人情報の漏えいが心配)」「PHRサービスやアプリ同士の連携にかかる手間が面倒」をあげており、これらの項目はサービスの継続利用の阻害要因と捉えることができる。つまり、セキュリティに不安がないこと、利用しやすいこと、効果の実感を持てることが、サービスを利用してもらうための要素となっていることがわかる。
3 厚生労働省「健診等情報利活用ワーキンググループ民間利活用作業班(第6回)」資料3:PHRサービス利用者へのアンケート調査結果等
4 弊社調査によっても、「利用しやすいこと」「効果の実感が得られること」「楽しいこと」が健康関連サービス継続利用のポイントとして確認できている。村松容子、井上智紀「健康関連サービス・商品、継続利用のポイントは?」ニッセイ基礎研究所 基礎研レター(2020年11月10日)
3――PHRサービスに求められる要件
また、現在のところ、PHRという言葉を知らない人も多い。国による健診等データを搭載した仕組みが構築されていることを知らない人も多い可能性がある。どういった情報が搭載されているのか、誰がどう活用するのかといった仕組み自体について、周知を図る必要があるだろう。
最後に、PHRサービスは、現在のところ、健康保険組合などの保険者が契約をして加入者個人に利用させるケースが多い。実際に契約利用している健康保険組合へのヒアリングによると、契約時にどの事業者のサービスを使うのが良いか判断に困ったことがあるようだ5。PHRサービスを充実させるためには、セキュリティ対策やサービス内容につき、一定基準をクリアしている事業者を国等が認定して開示するなど、利用者が安心してサービスを選択するための仕組み作りが必要になるだろう。
5 厚生労働省「健診等情報利活用ワーキンググループ 民間利活用作業班(第5回)」(2020年12月)資料
(2021年03月31日「基礎研レター」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
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