2021年03月12日

わが国の不動産投資市場規模(1)-ボトムアップ・アプローチによる推計結果~「収益不動産」は約272兆円、「投資適格不動産」は約171兆円。

金融研究部 主任研究員 吉田 資

株式会社価値総合研究所 パブリックコンサルティング第3事業部 主任研究員 室 剛朗 

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2-3. 推計方法
「収益不動産」の資産規模を、図表-6に示した手順で、収益還元法に基づく「ボトムアップ・アプローチ」による推計方法を行う。

まず、「着工床面積の積算」と「レンタブル比」のデータをもとに「賃貸可能床面積」を推計する。次に、推計した「賃貸可能床面積」と、「平均賃料」や「平均稼働率」のデータをもとに、「総収入の推計」を行う。3段階目として、推計した「総収入」と、「平均コスト比率」をもとに、「NOI」を推計する。最後に、推計した「NOI」を「キャップレート」で除して、「収益不動産の総額」を求める。各用途の詳細な推計方法は図表-7に示した。
図表-6 推計手順
図表-7 「用途別」推計方法

3. 「収益不動産」資産規模の推計結果

3. 「収益不動産」資産規模の推計結果

3-1. 概要
本調査では、「収益不動産」の資産規模は約272.3兆円、「投資適格不動産」の資産規模は約171.3兆円と推計された。J- REITの資産総額は約23.3兆円(2020年12月)、不動産私募ファンドの市場規模は21.1 兆円(2020年6月時点)で、既に証券化された不動産の市場規模は、約44.4兆円である。これに基づけば、「収益不動産272兆円」の16 %、「投資適格不動産171兆円」の26%が既に証券化されていることになる。(図表―8)。

先行研究7によれば、米国の証券化率(投資不動産に占める証券化不動産)は42%である。日本では2001年のJ-REIT開設以降、不動産と金融の融合は着実に進んでいるが、「収益不動産」の証券化という観点でみると、米国と比べてまだ拡大余地はある。
図表-8 「収益不動産」の市場規模
 
7 小夫 考一郎「グローバルな視点から見た日本の不動産市場の魅力と課題」東洋経済新報社 不動産政策研究各論Ⅳ 国際不動産政策 不動産政策研究会編 2018 年
3-. 「用途別」資産規模
「収益不動産272兆円」を用途別にみると、「オフィス」が約99.5兆円(占率37%)と最も大きく、次いで「商業施設」が約71.1兆円(26%)、「賃貸住宅」が約64.9兆円(24%)、「物流施設」が約23.9兆円(9%)、「ホテル」が約12.9兆円(5%)と推計された(図表―9)。

J- REITの資産総額(用途別)は、「オフィス」が約9.1兆円と最も大きく、次いで「物流施設」が約3.7兆円、「賃貸住宅」が約3.4兆円、「商業施設」が約3.4兆円、「ホテル」が約1.8兆円である。

「収益不動産272兆円」におけるJ-REITの保有比率は、「物流施設」が15.5%と最も大きく、次いで「ホテル」が14.0%、「オフィス」が9.2%、「賃貸住宅」が5.2%、「商業施設」が4.7%となった(図表―10)。
図表-9 用途別「収益不動産」の市場規模
図表-10 J-REIT保有資産との比較
次回は、収益不動産の資産規模を「用途別」や「エリア別」に概観した上で、不動産投資市場の拡大可能性について考察する。
 
 

(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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金融研究部

吉田 資 (よしだ たすく)

株式会社価値総合研究所 パブリックコンサルティング第3事業部 主任研究員 室 剛朗 

(2021年03月12日「不動産投資レポート」)

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