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- 貸出・マネタリー統計(21年2月)~コロナ禍で銀行貸出は高い伸びを維持、普通預金等の伸びは過去最高を更新
2021年03月09日
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1.貸出動向:対面サービス業向けの貸出増加が顕著
2.マネタリーベース: 通貨供給量の伸びは10カ月連続の上昇
3月2日に発表された2月のマネタリーベースによると、日銀による通貨供給量(日銀当座預金+市中に流通する紙幣・貨幣)を示すマネタリーベースの伸び率(平残)は前年比19.6%と、前月(同18.9%)を上回り、2017年4月以来の高水準となった(図表7)。伸び率の上昇は10カ月連続であり、コロナ禍において通貨供給量の拡大が続いている。
日銀当座預金の減少要因となる政府による国債(国庫短期証券を含む)発行は、コロナ対応の歳出拡大を受けて高い水準で推移しているが、日銀が大規模な国債買入れによって資金供給の拡大を続けていることで(図表8)、日銀当座預金残高の伸びが拡大している。
また、日銀券発行高の伸び率が前年比6.1%と2016年6月以来の高水準を記録したこともマネタリーベースの増勢加速に寄与している(図表7)。外出自粛が続くなかで、家庭などにおいて高額紙幣を退蔵する傾向(タンス預金化)が強まっている可能性が高い。
日銀当座預金の減少要因となる政府による国債(国庫短期証券を含む)発行は、コロナ対応の歳出拡大を受けて高い水準で推移しているが、日銀が大規模な国債買入れによって資金供給の拡大を続けていることで(図表8)、日銀当座預金残高の伸びが拡大している。
また、日銀券発行高の伸び率が前年比6.1%と2016年6月以来の高水準を記録したこともマネタリーベースの増勢加速に寄与している(図表7)。外出自粛が続くなかで、家庭などにおいて高額紙幣を退蔵する傾向(タンス預金化)が強まっている可能性が高い。
なお、2月末時点のマネタリーベース残高は615兆円と前月末比1.8兆円減少した。ただし、もともと2月は季節柄国債の発行超過(日銀当座預金減少要因)が大きく、マネタリーベースが拡大しにくい時期にあたるため、こうした季節性を除外した季節調整済み系列(平残)では前月比で6.7兆円増加している(図表10)。昨年末からは伸びがやや鈍化しているが、コロナ拡大前との比較では高い伸びが維持されている。
国内でもワクチンの接種が始まったが、経済活動の正常化にはまだかなりの時間を要する。政府による補助金等の支給がマネタリーベースの増加要因となるうえ、日銀が金利上昇抑制のために積極的な国債買入れを続けるとみられることから、マネタリーベースの伸び率は高止まりする可能性が高い。
国内でもワクチンの接種が始まったが、経済活動の正常化にはまだかなりの時間を要する。政府による補助金等の支給がマネタリーベースの増加要因となるうえ、日銀が金利上昇抑制のために積極的な国債買入れを続けるとみられることから、マネタリーベースの伸び率は高止まりする可能性が高い。
3.マネーストック: 預金通貨の伸びが過去最高を更新、投資信託はプラス幅を拡大
3月9日に発表された2月のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比9.62%(前月は9.41%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同8.01%(前月は7.84%)とともに上昇した(図表11)。伸び率はともに2004年4月の現行統計開始以降の最高を更新している。
M3の内訳では、普通預金等の預金通貨(前月15.5%→当月15.8%)の伸び率が上昇し(図表12)、過去最高を更新、全体をけん引している。預金の増加に繋がる貸出の高い伸びが続いているほか、政府による各種給付金等の支給、緊急事態宣言再発令に伴う消費減少の結果、普通預金の増勢がさらに強まったとみられる。
また、既述のとおり、高額紙幣を退蔵する傾向(タンス預金化)の強まりが背景にあるとみられるが、現金通貨(前月5.7%→当月6.1%)の伸び率も前月から上昇している(図表12)。一方、CD(譲渡性預金・前月8.7%→当月7.1%)の伸びがプラス幅を縮小したほか、定期預金などの準通貨(前月▲2.2%→当月▲2.1%)の伸びは引き続きマイナス圏かつ小動きに留まった(図表13)。
M3の内訳では、普通預金等の預金通貨(前月15.5%→当月15.8%)の伸び率が上昇し(図表12)、過去最高を更新、全体をけん引している。預金の増加に繋がる貸出の高い伸びが続いているほか、政府による各種給付金等の支給、緊急事態宣言再発令に伴う消費減少の結果、普通預金の増勢がさらに強まったとみられる。
また、既述のとおり、高額紙幣を退蔵する傾向(タンス預金化)の強まりが背景にあるとみられるが、現金通貨(前月5.7%→当月6.1%)の伸び率も前月から上昇している(図表12)。一方、CD(譲渡性預金・前月8.7%→当月7.1%)の伸びがプラス幅を縮小したほか、定期預金などの準通貨(前月▲2.2%→当月▲2.1%)の伸びは引き続きマイナス圏かつ小動きに留まった(図表13)。

内訳を見ると、規模の大きい金銭の信託(前月▲1.3%→当月▲1.1%)や国債(前月▲5.0%→当月▲6.3%)、外債(前月1.4%→当月1.2%)の伸び率が低迷し、広義流動性全体の重荷となった。また、世界的な株価上昇などを受けて資金流入が進んだ結果、投資信託(私募やREITなども含む元本ベース、前月0.8%→当月5.2%)の伸び率はプラス幅を拡大したものの、預金通貨の伸び率(当月15.8%)には大きく及んでいない(図表13)。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2021年03月09日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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