2021年03月03日

ユーロ圏消費者物価(2月)-総合・コア指数ともにインフレ率は1%前後

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:2か月連続で1%近い上昇

3月2日、欧州委員会統計局(Eurostat)は2月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
前年同月比は+0.9%、市場予想1(+0.9%)と同じで、前月(+0.9%)から変わらず(図表1)
前月比は+0.2%、予想(+0.2%)と同じで、前月(+0.2%)から変わらず

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2
前年同月比は+1.1%、予想(+1.1%)と同じで、前月(+1.4%)から減速(図表2)
前月比は+0.1%、前月(▲0.5%)から上昇

(図表1)(図表1)/(図表2)(図表1)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。

2.結果の詳細:独VAT引き下げ終了などで高めの上昇率が続くが過熱感はない

2月のHICP上昇率(前年同月比)は、全体で+0.9%の伸び率となり、2か月連続で1%近い伸びとなった。一方、「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」は同+1.1%と前月からやや減速している。

以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。

まず、コア部分の「エネルギーと飲食料を除く総合」(前年同月比+1.1%)の内訳を見ると、「エネルギーを除く財3」は1月の1.5%から2月に+1.0%まで減速している。1月は冬の値下げシーズンの後倒しによって衣類価格の減速が抑えられ、高めの伸び率となったが、その影響が緩和したと見られる。一方、「サービス」は1月+1.4%から2月は+1.2%とやや減速しているものの財価格を超える伸び率を維持している。
(図表3)ユーロ圏の飲食料価格の上昇率と内訳 コア以外の部分では「エネルギー」が、11月▲8.3%→12月▲6.9%→1月▲4.1%→2月▲1.7%と大きくマイナス幅を縮小させた。エネルギーの前年同月比寄与度は、2月で▲0.17%ポイント程度と見られ、全体のインフレ率を押し下げる効果はほぼなくなっている(前掲図表1・2)。

一方「飲食料(アルコール含む)」については、2月は前年同月比で+1.4%(1月+1.5%)となった。このうち加工食品が+1.3%(1月+1.3%)、未加工食品は+1.4%(1月+2.0%)となった。未加工食品を中心に食料品価格のインフレ率は安定していると言える(図表3)。
総じて見ると、エネルギー価格の前年同月比寄与度が夏頃(約▲0.8%ポイント)から0.6%ポイント程度上昇しておりこれが全体のインフレ率を大きく押し上げている。さらにコア部分としてウェイトの大きいサービス価格(エネルギーは含まれない)については、1%を超える水準まで上昇している。ただし、コロナ禍前の19年後半はサービス価格上昇率が1.5%を超える月も多かったことに鑑みれば足もとのインフレ圧力に過熱感はそれほどないと言えるだろう。
(図表4)ユーロ圏HICP上昇率(前年同月比)/(図表5)ユーロ圏HICP上昇率(前月比)
国別のHICP上昇率を見ると(図表4・5)、2月は前年同月比で未公表のオーストリアを除く18か国中8か国でインフレ率が加速し、11か国がプラス圏にある。特に、経済大国でウェイトが最も大きいドイツでは、コロナ禍で時限的に導入していたVAT引き下げが1月に終了し4、2月は前年同月比+1.6%(1月同+1.6%)と高めの伸び率を維持している点が特徴的と言える。
 
3 飲食料も除く。
4 ドイツではVAT引き下げを実施しており、インフレ率が押し下げられている。具体的には7月から税率で19%→16%(軽減税率は7%→5%)への引き下げを12月まで実施した。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2021年03月03日「経済・金融フラッシュ」)

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