- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 不動産 >
- 不動産市場・不動産市況 >
- 2020年のマンション市場と今後の動向-コロナ禍で高まる需要、今マンションは買うべきなのか
2021年02月26日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
5. マンションの面積・単価の動向と、住宅ローン減税制度の変更
不動産の価格を見る際には、総額に加えて、単価についても必ず確認する必要がある。
長谷工総合研究所の調査によると、改正前の2020年までの首都圏の平均総額と平均単価を見てみると、どちらも年々高くなっている(図表9、10)。一方で1戸当たりの平均面積は小さくなっている(図表11)。つまり、今のマンションの購入価格は、単価の上昇がプラスに、面積の縮小がマイナスに作用しているが、単価上昇がより大きいため総額も上昇している。
マンションの価格は、「面積」だけではなく、「立地」、「設備」、「間取り」など、様々な条件に応じて価格が決まる。例えば、多少面積が狭くても、より良い設備が付属していれば、その物件を選択する人も多いのではないだろうか。つまり、「縮小した面積」というマイナス条件を、他のプラス条件で拡充して競争力を保ったことで、「平均総額」と「平均単価」が高まっていると見ることができる。
長谷工総合研究所の調査によると、改正前の2020年までの首都圏の平均総額と平均単価を見てみると、どちらも年々高くなっている(図表9、10)。一方で1戸当たりの平均面積は小さくなっている(図表11)。つまり、今のマンションの購入価格は、単価の上昇がプラスに、面積の縮小がマイナスに作用しているが、単価上昇がより大きいため総額も上昇している。
マンションの価格は、「面積」だけではなく、「立地」、「設備」、「間取り」など、様々な条件に応じて価格が決まる。例えば、多少面積が狭くても、より良い設備が付属していれば、その物件を選択する人も多いのではないだろうか。つまり、「縮小した面積」というマイナス条件を、他のプラス条件で拡充して競争力を保ったことで、「平均総額」と「平均単価」が高まっていると見ることができる。
6. マンション市場にマイナスの影響を与える要素は
では、現在の市況にマンション価格を引き下げるように作用する要素はあるだろうか。
まず、供給者は資金調達が容易にできる状況であり、投げ売りが生じるような事態は想像できない。また、コロナ禍によっても住宅ローンの審査は厳格化しない2と見られ、購入希望者の資金調達が困難となり、需要全体が大幅に減少して、価格が崩れるということも想定しづらい。
しかし、コロナ禍により実体経済が痛んでいるのは確かであり、一部企業の業績悪化や働く人々の所得にまで影響が及んできている。なかでもボーナスや時間外手当は企業業績悪化の影響を受けやすい。リーマン・ショック前後とコロナ禍前後の賃金の推移を比べてみると、コロナ前後のほうが時間外手当がより急速に減少している(図表13,14)。ボーナスカットや時間外勤務が減少すれば、所得減少の割合とほぼ同じ割合で住宅ローンの借入可能額が減少し、需要者の予算も減少する。このため、マンション市場の一部では需要が減退する可能性がある。
ただし、マンション供給量が少ない現在の市場では、ある需要者が購入できないとしても、別の需要者が購入する可能性は高い。潜在的なマンションの購入者層には今回のコロナ禍でも収入にあまり影響のない人も数多く存在すると考えられるため、現在のマンション市場においては、一部の需要者の年収低下が全体のマンション価格の下落に及ぼす影響はあまり大きくないのではないだろうか。
まず、供給者は資金調達が容易にできる状況であり、投げ売りが生じるような事態は想像できない。また、コロナ禍によっても住宅ローンの審査は厳格化しない2と見られ、購入希望者の資金調達が困難となり、需要全体が大幅に減少して、価格が崩れるということも想定しづらい。
しかし、コロナ禍により実体経済が痛んでいるのは確かであり、一部企業の業績悪化や働く人々の所得にまで影響が及んできている。なかでもボーナスや時間外手当は企業業績悪化の影響を受けやすい。リーマン・ショック前後とコロナ禍前後の賃金の推移を比べてみると、コロナ前後のほうが時間外手当がより急速に減少している(図表13,14)。ボーナスカットや時間外勤務が減少すれば、所得減少の割合とほぼ同じ割合で住宅ローンの借入可能額が減少し、需要者の予算も減少する。このため、マンション市場の一部では需要が減退する可能性がある。
ただし、マンション供給量が少ない現在の市場では、ある需要者が購入できないとしても、別の需要者が購入する可能性は高い。潜在的なマンションの購入者層には今回のコロナ禍でも収入にあまり影響のない人も数多く存在すると考えられるため、現在のマンション市場においては、一部の需要者の年収低下が全体のマンション価格の下落に及ぼす影響はあまり大きくないのではないだろうか。
7. 数年以内にマンションが欲しいのであれば買ってもよい
新築マンションも、中古マンションも、現在は超売り手市場といってよい。価格は高値水準であるが、新築マンションの供給調整は続くと思われ、また中古マンションの供給も限定されている。当面はこの価格水準が維持されると思われ、さらに上がる可能性もあるだろう。
今マンションを買うとしたら、人気のある物件は早い者勝ちとなり、価格も下がりにくい可能性が高い。数年のうちにマンションを買いたい、と考えているのであれば、気に入った物件があれば買ってしまうのも一つの考えであろう。
なお、中古マンションの価格には、建物価格に設備更新による工事費が加算されている場合がある。相対的に価格の高いマンションほど、築年とのバランスを考える必要があるように思う。
今マンションを買うとしたら、人気のある物件は早い者勝ちとなり、価格も下がりにくい可能性が高い。数年のうちにマンションを買いたい、と考えているのであれば、気に入った物件があれば買ってしまうのも一つの考えであろう。
なお、中古マンションの価格には、建物価格に設備更新による工事費が加算されている場合がある。相対的に価格の高いマンションほど、築年とのバランスを考える必要があるように思う。
8. 終わりに
一度購入した住宅は一生付き合うことも多い。どのタイミングで購入するかは多くの人が迷うところであろう。
住宅の需要者は、ライフステージの変化や、生活環境の向上を動機に住宅を購入することが多く、需要者数は市況や制度の変化の影響を受けにくい。これに加えてコロナ禍により今の住宅へ不満が増し、住宅の購入を検討する人も増加するとみられる。
住宅は高額の買い物であるため、一時の勢いで決めずに、何度か見に行くなどの慎重さは当然に求められる。しかし、現在新築マンションの供給は限られ、中古マンションの供給が弾力的に増加する可能性も低い。気に入った物件があれば、購入を検討してもよいのではないかと思う。
住宅の需要者は、ライフステージの変化や、生活環境の向上を動機に住宅を購入することが多く、需要者数は市況や制度の変化の影響を受けにくい。これに加えてコロナ禍により今の住宅へ不満が増し、住宅の購入を検討する人も増加するとみられる。
住宅は高額の買い物であるため、一時の勢いで決めずに、何度か見に行くなどの慎重さは当然に求められる。しかし、現在新築マンションの供給は限られ、中古マンションの供給が弾力的に増加する可能性も低い。気に入った物件があれば、購入を検討してもよいのではないかと思う。
(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2021年02月26日「基礎研レポート」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1853
経歴
- 【職歴】
2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
2006年 総合不動産会社に入社
2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員
渡邊 布味子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/03 | インバウンド需要とインバウンド投資が牽引する国内ホテル市場 | 渡邊 布味子 | Weekly エコノミスト・レター |
2025/03/26 | インバウンド市場の現状と展望~コスパ重視の旅行トレンドを背景に高まる日本の観光競争力 | 渡邊 布味子 | 基礎研レター |
2025/03/19 | マンションと大規模修繕(6)-中古マンション購入時には修繕・管理情報の確認・理解が大切に | 渡邊 布味子 | 基礎研レター |
2025/02/26 | 不動産投資市場動向(2024年)~グローバルプレゼンスが向上する日本市場。2024年の取引額は世界金融危機後の最高額に | 渡邊 布味子 | 不動産投資レポート |
新着記事
-
2025年05月01日
日本を米国車が走りまわる日-掃除機は「でかくてがさつ」から脱却- -
2025年05月01日
米個人所得・消費支出(25年3月)-個人消費(前月比)が上振れする一方、PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに横這い -
2025年05月01日
米GDP(25年1-3月期)-前期比年率▲0.3%と22年1-3月期以来のマイナス、市場予想も下回る -
2025年05月01日
ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速 -
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【2020年のマンション市場と今後の動向-コロナ禍で高まる需要、今マンションは買うべきなのか】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
2020年のマンション市場と今後の動向-コロナ禍で高まる需要、今マンションは買うべきなのかのレポート Topへ