2021年02月26日

鉱工業生産21年1月-緊急事態宣言下でも製造業の生産活動は底堅い

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.1月の生産は3ヵ月ぶりの増加

鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 経済産業省が2月26日に公表した鉱工業指数によると、21年1月の鉱工業生産指数は前月比4.2%(12月:同▲1.0%)と3ヵ月ぶりに上昇し、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:前月比4.0%、当社予想は同5.3%)通りの結果となった。出荷指数は前月比3.2%と3ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比▲0.2%と2ヵ月ぶりの低下となった。

1月の生産を業種別にみると、鉄道車両などの輸送機械(除く自動車)は前月比▲13.9%の大幅減産となったが、自動車が同3.7%の上昇となったため、輸送機械は同0.8%と3ヵ月ぶりの上昇となった。設備投資需要の回復を背景に、生産用機械(前月比8.1%)、汎用・業務用機械(同11.7%)が高い伸びとなった。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は20年10-12月期の前期比12.4%の後、21年1月は前月比8.7%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は20年10-12月期の前期比2.6%の後、21年1月は前月比1.7%となった。輸出向け出荷の好調によって大きく押し上げられていることには注意が必要だが、国内の設備投資の動きを反映する国内向けについても持ち直しの動きは明確となっている。
財別の出荷動向 製造業の機械投資は生産活動の回復を受けて底堅く推移する一方、飲食、宿泊業などを含む非製造業の建設投資は低迷が続くことが予想される。

消費財出荷指数は20年10-12月期の前期比2.1%の後、21年1月は前月比2.8%となった。耐久消費財が前月比7.8%(10-12月期:前期比13.1%)、非耐久消費財が前月比0.7%(10-12月期:前期比▲3.5%)となった。

GDP統計の民間消費は、20年7-9月期の前期比5.1%の後、10-12月期は同2.2%となった。足もとの消費関連指標を確認すると、巣ごもり需要の拡大から財は堅調を維持しているが、Go To キャンペーン事業の一時停止、飲食店の営業時間短縮要請、緊急事態宣言再発令の影響から、外食、旅行などのサービス消費は20年末以降弱い動きとなっている。21年1-3月期の民間消費は3四半期ぶりの減少となる可能性が高い。

2.緊急事態宣言下でも底堅さを維持

製造工業生産予測指数は、21年2月が前月比2.1%、3月が同▲6.1%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(1月)、予測修正率(2月)はそれぞれ▲3.1%、▲0.8%であった。

予測指数を業種別にみると、3ヵ月ぶりの増産となった輸送機械は2月が前月比▲2.2%、3月が同▲1.4%と2ヵ月連続の減産計画となっているが、半導体不足や福島県沖地震に伴う供給制約の影響でさらに下振れる可能性がある。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
21年1月の生産指数を2、3月の予測指数で先延ばしすると、21年1-3月の生産は前期比2.6%となる。20年10-12月期の前期比6.4%からは減速するものの、3四半期連続の増産は確保できそうだ。20年冬以降は欧米で経済活動の制限が広がり、日本でも1月に緊急事態宣言が再発令されたが、その影響を強く受けているのは主としてサービス業であり、製造業の生産活動は底堅さを維持している。

現時点では、21年1-3月期は3四半期ぶりのマイナス成長になると予想しているが、緊急事態宣言の影響が外食、宿泊などの対面型サービス消費に偏っており、財の消費は比較的底堅いこと、製造業の生産活動がしっかりしていることから、成長率のマイナス幅は前回の緊急事態宣言時(2020年4-6月期)を大きく下回る可能性が高い。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2021年02月26日「経済・金融フラッシュ」)

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