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未婚化と雇用 ~コロナ禍で求められる雇用の確保~
総合政策研究部 部長 清水 勘
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1――人口減少と少子化
2――日本の独特な未婚事情
その未婚化について内閣府が国際比較調査を行っている(図表4)。調査によれば、諸外国と比べ日本では「適当な相手に巡り合わない」「経済的な余裕がない」といった未婚の理由が際立っている1。他方、諸外国の上位の理由をみると「結婚する必要を感じないから」「同棲のままで十分だから」等であり、未婚の理由が日本とかなり異なることがわかる。「就学」→「就職」→「結婚」→「出産」の順でライフイベントをこなすことが一般的な日本では、結婚しなければ出生に繋がりにくい。一方で、事実婚が一般化している一部の外国では未婚のまま婚外子を授かる場合も少なくない。こうして考えると同じ未婚であっても、人口へのインプリケーションという面で日本と外国では事情が異なりそうだ。更に、上述のライフイベントに従えば、就職は結婚の前提となる。雇用が不安定になれば、経済的な余裕が失われ、その結果、結婚や出生に至らないという連鎖が起きることになる。
戦前に7割近くを占めていた見合い結婚は、その後の社会構造やライフスタイルの変化を受け、いまや1割を下回るまで低下し、その一方で、恋愛結婚が足許では9割に迫るほど上昇している。その恋愛結婚のきっかけを見ると、「職場」や「友人・兄弟を通じて」が多い(図表6)。時代の変遷と共に出会いの経路が変わるのは当然だが、その変化の方向が互助的な枠組みで成り立つ見合い結婚から恋愛結婚に向かうと、職場や友人に繋がる積極的な社会参加がより重要となってくる。前述した通り、未婚化が上昇した時期はバブル崩壊以降の失われた20年と重なり、就職を通じた社会参加が困難だった時期だ。日本独特の理由を背景に未婚化が進んだことは、バブル崩壊という日本経済の困窮を色濃く反映した結果のように思えてならない。
1 外国と比べた場合、日本は「今は仕事(勉強)に打ち込みたいから」、「独身の自由さや気楽さを失いたくないから」、「今は、趣味や娯楽を楽しみたいから」等、自らの意思で未婚でいるとする理由も高いが、「適当な相手に巡り合わない」「経済的な余裕がない」が上位を占める理由であることに変わりはない。
3――少子化対策として動きだした雇用推進
内閣府の「子ども・子育て白書」が、非正規雇用対策の推進や若者の就労推進を少子化社会対策として盛り込んだのは2010年に遡る。2019年には「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太方針2019)で、30代半ばから40代半ばとされる就職氷河期世代について、向こう3年間で正規雇用者を30万人増やすという具体的な数値目標が掲げられた。
4――雇用を阻むコロナの壁
新卒の就職も気になるところだ。令和2年度大学等卒業予定者の就職内定状況(12月1日現在)は、82.2%と歴史的に依然高い水準にはあるが、前年同期比では4.9ポイントの低下となり、平成8年調査開始以降では、リーマンショック直後の平成21年度大学等卒業予定者の就職内定状況(平成21年12月1日付)で記録した7.4ポイントに次ぐ低下となっている。
2 厚生労働省 新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について(1月8日現在集計分)
5――おわりに
政府は、雇用調整助成金など雇用維持に向けた対策に打って出たが、雇用を巡る環境はなお厳しい。第2の就職氷河期世代を作らない為にも、官民を挙げて雇用支援を途切れなく展開することを期待したい。
3 第26回新成人の恋愛結婚に関する意識調査(株式会社オーネット)
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2021年01月22日「研究員の眼」)
03-3512-1811
- 【職歴】
1987年に日本生命保険に入社。リーマンブラザーズ派遣、外務省派遣を経て国際投資部、ニューヨーク、シンガポールの各投資現地法人にて外国株式投資、外国債券投資、外国為替取引に従事。
08年より米国保険現地法人CIOを担当した後、11年より特別勘定運用部長、14年より金融投資部長を歴任し、16年よりニッセイ基礎研究所へ。
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