コラム
2018年04月09日

消え行く日本の子ども-人口減少(少子化)データを読む-わずか半世紀たたず、半減へ

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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はじめに

少子化が叫ばれる中、多方面から人口問題に関する講演の話を頂くようになった。それくらい今の日本に住む人々にとって人口減少問題は注目の的であるということだろう。
 
しかし、いつも違和感がある。
講演において、データを示しつつ話を進めると、講演後の会場に「そこまで先行きが暗澹たるものなのか」という悲痛な声があがり動揺が広がってゆく。
まるで今までは「注目の話題」としてどこか他人事だったが、やっと「想像を超えた現実」に動揺し始めたというような「今さらながら」感である。
 
これまでのレポートでも指摘をしてきたが、日本における社会現象、とりわけヒトに関する話題に関しては「印象論」が横行・蔓延する傾向にある。
社会問題の施策においても、意識調査結果など定性データによって、諸策が論じられやすい傾向がある。つまり、定量的(意識とは別のリアルな現実の数値)には漠然としてのみ捉えられているため、定量データに基づく解説を受けた途端、その問題のイメージが明確になり、はっきりと突きつけられた「リアルデータ」を前に驚愕している、という状態なのである。
 
日本の少子化問題、すなわち人口問題についてもやはり、根本的な定量データについて『一般の人々がイメージしやすい状態で』もっと発信がなされる必要性を強く感じている。
 
今回は、日本の「少子化」という、その深刻さが理解されているようで理解されているとはとてもいいがたい状況について、定量的に1つ、解説をしてみたい。

わずか45年で、生まれる子どもの数が半数以下へ

1947年から2016年までに、日本で生まれた子どもの数の推移を確認してみたい(図表1)。
なぜ1947年からかというと、1947年はいわゆる「団塊世代」と言われる、その年齢の人口が非常に多いマジョリティ世代の開始年となる年だからである。
【図表1】日本で生まれた子どもの数(万人)
団塊世代開始元年の時代には、年間約270万人の子どもが日本で生まれていた。
団塊世代の子ども世代にあたる「団塊ジュニア世代」元年は1971年であるが、その年も年間200万人の子どもが生まれている。
すでにこの段階で(24年間で)、生まれる子どもの数は前の世代の75%(200万÷268万)に減少してはいるのだが、それでもまだ200万人が生まれていた。
 
しかし、そこ(1971年)から45年経過した2016年には、年間に生まれる子どもの数はついに98万人、100万人を切る状態へと減少した。
 
団塊ジュニア元年の1971年から45年、すなわち半世紀も経過しないうちに、日本で年間に生まれる子どもの数は200万人から98万人、つまりは49%、半数以下に激減していたのである。

総人口イメージからの早期脱却を

図表からもわかるように、日本にはアラフィフと呼ばれる40代後半(団塊ジュニア元年生まれ47歳)から70代(団塊世代元年生まれ71歳)まで、「かつての子どもたち」が多数存在している。
 
実はこの中年から老年の人口マジョリティ世代が「人口減少といっても、そうでもない」といったイメージを自らの世代の人口の多さの印象から抱いているのである。
総人口で考えるのであれば、人口の減少が開始したのは2008年であり、わずか8年程度しか経過していない。
また、寿命の延長によって「かつての子どもたち」の減少スピードは緩やかである。
この「かつての子どもたち」の自らの世代の「過去の遺産」の記憶が壁となり、
「半世紀もたたずに、生まれる子どもの数が半減以下」
「年間生まれる赤ちゃんが200万人から100万人未満社会へ」
という深刻な実態が見失われがちである。
 
半世紀で激減した「日本の空の下に生まれる子どもたち」。いまやその数は年間100万人を切った。ちなみに2017年に生まれた赤ちゃんの数は94万人であり、前年度からまた4万人減少している。
 
日本の人口を緩やかに減少しているかに見える総人口でイメージするのではなく、シンプルに「生まれてくる子どもの数」の推移で考える思考が拡散されるならば、日本の空の下で育まれる命の数がどれだけ危機的な状態にあるか、気がつく人がもっと増えるのではないだろうか。
 
そして、少子化社会の下では、多数決(投票など)においては常に若い世代がマイノリティに追い込まれることが正確に把握され、若い世代にどれだけ不利な、また、大きな負担がかかる社会構造に傾きやすいかを理解できる人が増えるのではないだろうか。
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴
  • プロフィール
    1995年:日本生命保険相互会社 入社
    1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向

    ・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
    ・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
    ※都道府県委員職は就任順
    ・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
    ・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
    ・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年~)
    ・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
    ・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年~)
    ・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
    ・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
    ・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
    ・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
    ・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
    ・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
    ・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
    ・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
    ・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
    ・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータアドバイザー会議委員(2020年度~)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータ活用研究会委員(2016年度~2019年度)
    ・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)

    日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
    日本労務学会 会員
    日本性差医学・医療学会 会員
    日本保険学会 会員
    性差医療情報ネットワーク 会員
    JADPメンタル心理カウンセラー
    JADP上級心理カウンセラー

(2018年04月09日「研究員の眼」)

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