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「多子化する東京都」-少子化データを読む-大都会型子ども政策に、エリア少子化政策を重ねる危険性(1)
生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
はじめに
「東京都の進学塾はかつてない活況を呈しています。新しく開設したクラスはすぐに満席。有名校への進学は激戦ですね。世の中では少子化なんていっていますけれども、東京は子どもが増えていますので。」
この言葉を聞いて「違和感がない」少子化の専門家や少子化事業に従事している方はさておき、驚いた方については、もしかすると「エリア別(地元)少子化対策」に対する根本的な考えの見直しが必要であるかもしれない。
そもそも少子化というのは「子どもの数が年々減っていくこと」を指す。
日本全体でみるならば、出生率長期低迷の結果として少子化社会が発生し、人口ピラミッドが逆三角形となり、死亡数が常に出生数を上回ることによって人口減少が生じていることについては、もはや異論はない状況である。
日本全体としては「低出生率=少子化」というのは間違いない。
しかし、少子化に関して出生率との関係を語るとき、生じやすい誤解の罠がある。
日本という国レベルで生じている、低出生率(出生率が極めて低い)からくる全体としての少子化(子どもの数が減っていくこと)を金太郎飴的に「それは全エリアで起こるもの」、と考えてしまう誤解の罠である。
実は、低出生率であっても少子化するとは限らないのである。
「極めて低い出生率からくる少子化(子どもの数の減少)」という、日本全体で見ると生じている「低出生率=子どもの数の減少(いわゆる少子化)」現象をひっくり返すエリアがある。
最初の進学塾の塾長の言葉にもどるが、エリア別に見るならば「東京都」という「人口モンスター特区」が存在している。このことを少子化対策を考える上では決して見逃してはならない。
ヒトが増え続ける人口モンスター特区・東京都
経済学の世界では周知の事実、「ミクロの利益とマクロの利益は必ずしも一致しない」という世界が日本全体と東京都に関して、極めてわかりやすく当てはまる状況となっている。
日本全体が受けている打撃としての人口減少は、東京都では打撃と感じられないどころか、むしろ人口増加による過密化という正反対のデメリット感さえも生み出している。
(2018年02月13日「研究員の眼」)
03-3512-1878
- プロフィール
1995年:日本生命保険相互会社 入社
1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向
・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
・【こども家庭庁】内閣府特命担当大臣主宰「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」構成員(2024年度)
・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
※都道府県委員職は年度最新順
・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
・【高知県】高知県「元気な未来創造戦略推進委員会 委員」(2024年度)
・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年度)
・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年度)
・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
・【愛媛県法人会連合会】えひめ結婚支援センターアドバイザー委員(2016年度~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)
日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
日本労務学会 会員
日本性差医学・医療学会 会員
日本保険学会 会員
性差医療情報ネットワーク 会員
JADPメンタル心理カウンセラー
JADP上級心理カウンセラー
天野 馨南子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/01/09 | 2013~23年 都道府県出生減(少子化)ランキング/合計特殊出生率との相関は「なし」 | 天野 馨南子 | 基礎研マンスリー |
2024/11/05 | 【少子化対策・人口動態データ報】2013~23年 都道府県出生数減少率(少子化)ランキング-合計特殊出生率との相関は「なし」- | 天野 馨南子 | 基礎研レター |
2024/07/11 | 【地方創生・人口動態データ報】2023年 都道府県転入超過ランキング~勝敗を決めたのはエリアの「雇用力」~ | 天野 馨南子 | ニッセイ基礎研所報 |
2024/07/08 | 【人口戦略会議レポート解説】消滅可能性自治体割合都道府県ランキング-勝者に学ぶ。そして勝者は世界を目指せ- | 天野 馨南子 | 基礎研レター |
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