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出生率の決定要因や少子化施策の効果に関する分析-埼玉県における少子化対策に関する施策の効果検証を中心に-

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
日本社会事業大学 社会福祉学部 教授 金子 能宏
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2000年に1.28であった埼玉県の出生率は、その後上昇と低下を繰り返し、2015年には1.32まで上昇した。しかしながらその後は低下傾向に転じ、2017年の出生率は1.19まで低下した。すべての調査年において埼玉県の平均出生率を上回っている市町村は、さいたま市、熊谷市、川口市、秩父市、本庄市、深谷市、草加市、戸田市、朝霞市、八潮市、富士見市、吉川市、滑川町の13市町村である。地域別出生率の推移をヒストグラムで見ると、出生率が2015年以降低下する中で、出生率が1.25を下回る地域の分布が年々大きくなっていた。
出生率の要因分解(平均との差)を行った結果、出生率の低い市町村では「20歳~39歳人口割合(女性)」が平均値より低く、「15~49歳女性の就業率」が平均値より高い傾向がみられた。一方、男性の場合は、出生率が高い市町村で「20歳~39歳人口割合(男性)」と「15~49歳男性の就業率」が平均値より高い傾向がみられた。
「第1子から全出生世帯へのお祝い金等給付事業」と「第3子以降の出生世帯に限定した給付事業または第3子以降世帯のみに上乗のあるお祝い金等事業」の政策効果を推計するために差分の差分法(DID分析)を行った結果、分析時期を2015年と2016年にした分析では政策効果に統計的に有意な結果は表れなかった。そこで、政策の効果が出るまでには多少時間がかかることを考慮し、分析時期を2015年と2017年に調整し、分析を行った結果、「第1子から全出生世帯への祝い金等給付事業」を実施している市町村(トリートメントグループ)の出生率が高いという結果が出ており、統計的にも有意であった。
ロジスティック分析の結果、補助対象児当たりの多子世帯保育料補助額が増加した場合、出生率が改善された市町村に含まれる確率が少しではありながら高くなるという結果が出ており、統計的にも有意であった。パネル分析の結果からは、可住地人口密度(対数)が高い市町村と15~49歳の就業率(男性)が高い市町村で出生率が高いという結果が出た。
現在、日本では埼玉県のみならず、全国の地方自治体で出生率を改善させるための多様な政策が実施されている。しかしながら、地方自治体の努力にも関わらず、施策の効果がはっきり現れているところはそれほど多くない。出生率は地方自治体が実施する施策のみならず、親の雇用形態や所得水準、住居環境、意識など多様な要因が影響を与えている可能性が高い。従って、出生率改善の効果を高めるためには、お祝い金などの経済的支援のみならず、より多様な側面から多様な支援を行う必要がある。
■目次
1――はじめに
2――先行研究
3――出生率の地域差
4――出生率と関連指標との相関関係分析
5――実証分析
(1)出生率の要因分解(平均との差)
(2)回帰分析
(3)差分の差分法による分析(Difference in Difference Analysis, DID分析)
(4)ロジスティック分析
(5)パネル分析
6――おわりに
7――参考文献
(2019年09月19日「基礎研レポート」)
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