2021年01月12日

リカレント教育は重要ですか?

基礎研REPORT(冊子版)1月号[vol.286]

生活研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任   金 明中

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最近、マスコミで「人生100年時代」という言葉をよく耳にします。人生100年時代という言葉は、2016年に出版され、日本でも30万部を超えるベストセラーになった『LIFESHIFT(ライフ・シフト)-100年時代の人生戦略』、東洋経済新報社、以下『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』)に由来しています。
 
日本人の平均寿命は、1950年の男性58.0歳、女性61.5歳から2018年には男性81.41歳、女性87.45歳まで伸びています。さらに、2019年における65歳時点の平均余命は、男性が19.83年、女性が24.63年まで上昇しました。つまり、健康であれば平均的に男性は85歳頃まで、そして、女性は92歳頃まで生きることができる時代になりました。
 
毎年9月15日の「老人の日」の後に発表されている日本の100歳以上の高齢者の数は、2020年に8万450人で2019年より9176人も増え、初めて8万人を超えることになりました。100歳以上の高齢者の数は、1997年以降からは年間1000人以上増加しはじめ、特に、2007年から2016年までは10年連続で年間3000人以上も増加しました。
 
100歳以上の高齢者に占める女性の割合は、1963年の86.9%から1984年には77.8%まで下がった後、再び上昇し2020年には88.2%に至っています。
100歳以上の割合
長寿化は人生設計の見直しを要求します。『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』によると、これまで多くの人々は「教育→ 仕事→引退」という3ステージの生き方で生活してきました。しかし、寿命が延び、健康に生活する時間が長くなれば、働く期間も長くなり、転職する人も、また日本の多くの企業が設定している60歳定年以降に働くことを希望する人も多くなると考えられます。特に、転職後に、または定年後に既存の仕事とは変わった仕事を希望する人が増加すると予想され、そこでリカレント教育の重要性が高まってきています。
 
リカレント教育(recurrent education)とは、義務教育や基礎教育を終えて労働に従事するようになってからも、個人が必要とすれば教育機関に戻って学ぶことができる教育システムです。文部科学省では、リカレント教育を「『学校教育』を、人々の生涯にわたって、分散させようとする理念であり、その本来の意味は、『職業上必要な知識・技術』を修得するために、フルタイムの就学と、フルタイムの就職を繰り返すことである」と定義しています。
 
日本における今までのリカレント教育は、主に「社会人学習」として実施されてきました。会社に通う社会人が大学の学部(通信制)、大学院、専修学校で学びたいことを学習するケースが多いものの、諸外国に比べると、日本のリカレント教育への参加者は低い水準に止まっています。例えば、2015年時点の「『学士』課程入学者に占める25歳以上の人の割合」と「『修士』課程入学者に占める30歳以上の人の割合」は、それぞれ2.5%と12.9%で、OECD平均16.6%と26.3%を大きく下回っています。さらに、日本では学ぶことへの意欲が年齢とともに弱まる傾向にある現状を考慮すると、中高年齢層に対するリカレント教育は十分に普及できていない可能性が高い状況です。
 
文部科学省が2018年に発表した「教育・生涯学習に関する世論調査」によると、「あなたは、学校を出て一度社会人となった後に、大学、大学院、短大、専門学校などの学校において学んだことがありますか」という質問に対して、「学習したことがある」と「学習してみたい」と回答した年齢代別割合の合計は、50代は40.2%、60代は34.5%、70歳は22.1%で、30代の51.9%と40代の46.0%を下回る結果が出ました。
 
政府は、少子高齢化の進展に伴い、社会保障制度の財政状況が厳しくなっていることと労働力不足の問題を解決するために、定年延長を含めて高齢者が継続して働く環境を構築しようとしています。また、働き方改革を推進し副業・兼業の普及促進も図っています。政府の目標通り、人々がより長く働き、より多様な分野で働くためには、企業もOJTなどの教育訓練以外に、より多様な学び直しが経験できる機会を提供する必要があります。
 
株式会社ワークポートが2020年2月に実施した調査結果によると、学び直しやスキルアップのための支援や取り組みを行っている企業に魅力を感じると回答した回答者の割合は93.5%に達しました。労働力不足が深刻化する中で、企業がより多様な学び直しの機会を提供すると、良い人材を獲得できる可能性も高くなるでしょう。
 
今後、リカレント教育が個人の知識や経験を豊かにするだけでなく、地域社会や商店街の活性化にも貢献できるシステムとして整備されることを心から願うところです。
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生活研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
社会保障論、労働経済学、日・韓社会政策比較分析、韓国経済

(2021年01月12日「基礎研マンスリー」)

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