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リカレント教育は重要ですか?
生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
Q1.「人生100年時代」は実現可能ですか?
日本人の平均寿命は、1950年に男性58.0歳、女性61.5歳から2018年には男性81.25歳、女性87.32歳まで伸びています。さらに、厚生労働者が発表した「平成30年簡易生命表の概況」によると、2018年における65歳時点の平均余命は、男性が19.55年、女性が24.38歳まで上昇しました。つまり、健康であれば平均的に男性は85歳頃まで、そして、女性は92歳頃まで生きることができる時代になりました。このまま続くと100歳まで生きることが当たり前の時代が近いうちに実現されるかもしれません。
毎年9月15日の「老人の日」の後に発表されている日本の100歳以上の高齢者の数は、2019年に7万1238人で2018年より1489人も増え、初めて7万人を超えることになりました。100歳以上の高齢者の数は、1997年以降からは年間1000人以上増加しはじめ、特に、2007年から2016年までは10年連続で年間3000人以上も増加しました。100歳以上の高齢者に占める女性の割合は、1963年の86.9%から1984年には77.8%まで下がった後、再び上昇し2019年には88.1%に至っています。
Q2.リカレント教育とは何ですか?
リカレント教育(recurrent education)とは、義務教育や基礎教育を終えて労働に従事するようになってからも、個人が必要とすれば教育機関に戻って学ぶことができる教育システムです。文部科学省では、リカレント教育を「『学校教育』を、人々の生涯にわたって、分散させようとする理念であり、その本来の意味は、『職業上必要な知識・技術」を修得するために、フルタイムの就学と、フルタイムの就職を繰り返すことである』と定義しています。
日本における今までのリカレント教育は、主に「社会人学習」として実施されてきました。会社に通う社会人が大学の学部(通信制)、大学院、専修学校で学びたいことを学習するケースが多いものの、諸外国に比べると、日本のリカレント教育への参加者は低い水準に止まっています。例えば、2015年時点の「25歳以上の『学士』課程への入学者の割合」と「30歳以上の『修士』課程への入学者の割合」は、それぞれ2.5%と12.9%で、OECD平均16.6%と26.3%を大きく下回っています。さらに、日本では学ぶことへの意欲が年齢とともに弱まる傾向にある現状を考慮すると、中高年齢層に対するリカレント教育は十分に普及できていない可能性が高い状況です。
文部科学省が2018年に発表した「教育・生涯学習に関する世論調査」によると、「あなたは、学校を出て一度社会人となった後に、大学、大学院、短大、専門学校などの学校において学んだことがありますか」という質問に対して、「学習したことがある」と「学習してみたい」と回答した年齢代別割合の合計は、50代は40.2%、60代は34.5%、70歳は22.1%で、30代の51.9%と40代の46.0%を下回る結果が出ました。
Q3.実際、リカレント教育はどのように実施されていますか?
政府は、少子高齢化の進展に伴う、公的年金基金の枯渇と労働力不足の問題を解決するために、定年延長を含めて高齢者が継続して働く環境を構築しようとしています。また、働き方改革を推進し副業・兼業の普及促進も図っています。政府の目標通り、人々がより長く働き、より多様な分野で働くためには、企業もOJTなどの教育訓練以外に、より多様な学び直しが経験できる機会を提供する必要があります。
株式会社ワークポートが2020年2月に実施した調査結果によると、学び直しやスキルアップのための支援や取り組みを行っている企業に魅力を感じると回答した回答者の割合は93.5%に達しました。労働力不足が深刻化する中で、企業がより多様な学び直しの機会を提供すると、良い人材を獲得できる可能性も高くなるでしょう。従って、今後はより多くの人が参加できるようにe-ラーニングを含め、より多様な方法でリカレント教育が実施される環境を整える必要があると考えられます。
Q4.リカレント教育が地域社会や商店街の活性化にも貢献できますか?
筆者が参加した古川町商店街は、かつては“東の錦”もしくは“京の東の台所”と呼ばれていた京都を代表する商店街でした。しかしながら、後継者不足による閉店、店主の高齢化、店舗の住宅・マンション化、地域社会との連携不足などにより、店舗数や来場数が年々減るという問題が発生しました。そこで、古川町商店街は、フードコート祭りやランラン祭りなどの広域型イベントを開催し、商店街の活性化を目指し、このような緻密な努力の結果、2015年には31店舗まで減少していた店舗数は2018年には41店舗まで増加し、1日の来場者数も同期間に1,400人から3,100人まで増加しました。商店街を活性化させるために古川町商店街の皆様が大変な努力をしたのかがうかがえます。
今回、「京都リカレントステイ」を通じて、筆者を含めた多くの方が古川町商店街のことを知り、そして愛着を感じるようになったのではないかと考えられます。今後、リカレント教育が個人の知識や経験を豊かにするだけでなく、地域社会や商店街の活性化にも貢献できるシステムとして整備されることを心から願うところです。
※ その他ジェロントロジー関連のレポートはこちらからご確認下さい。
https://www.nli-research.co.jp/report_category/tag_category_id=15?site=nli
(2020年11月02日「ジェロントロジーレポート」)
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生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
金 明中 (きむ みょんじゅん)
研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計
03-3512-1825
- プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職
・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師
・2019年 労働政策研究会議準備委員会準備委員
東アジア経済経営学会理事
・2021年 第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員
【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)
金 明中のレポート
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