2020年10月07日

歩くのが大変になったら買い物をどうするの?

生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子

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Q1.車が運転できなくなり、足腰が弱って歩くのが大変になったら、買い物に行くのはどうしたら良いですか?

■公共交通機関や電動車椅子等を利用して、買い物に出かける工夫をしましょう。地域によって、移動販売車や買い物バス、食堂などのサービスもあります。
自分で車の運転ができなくなり、足腰が弱ってスーパーまで歩くのも大変になったら、日々の飲食料をどのように確保したら良いでしょうか。子どもや配偶者が買ってきてくれたり、スーパーまで車で送ってくれたりすれば良いですが、それができるとは限りません。65歳以上の高齢者のうち、子どもと同居している人は4割を切っています。配偶者も同様に足腰が弱ったり、先立たれたりする可能性もあります。誰もが、老後、一人暮らしになる可能性があります。

身体機能の衰えには個人差がありますが、多くの人が80歳頃から、歩くのが大変になってきます。まして、買い物した荷物を抱えて歩くのは大きな負担になります。2015年時点で、食料品へのアクセスが困難な人口は国内で計825万人に上ると農林水産政策研究所が推計しています。公共交通が貧弱な地方のみならず、都市部でも、大型店の出店に伴って最寄りの小規模店が閉鎖する「フードデザート(食の砂漠)」という事象が発生し、買い物が困難な高齢者が増えているのです。「人生100年」と言われる中、歩行が大変になった後の買い物をどうするか、あらかじめイメージしておいた方が良いでしょう。

後述するように、飲食料や弁当を宅配してもらうこともできますが、歩くことや、外出して人と会話すること自体が健康状態を維持するために重要ですから、歩けるうちは、できるだけ自らスーパー等へ出かける方が望ましいでしょう。

まずは、スーパー等まで行く公共交通があるかどうかを確認しておきましょう。エリアによっては、路線バスの他、市町村が運行するコミュニティバスや乗合タクシーなどが利用できます。現役世代のうちは、バスを利用する機会は少ないかもしれませんが、年を取ると近距離移動が増えるため、バスが身近な移動手段になる人も多いのです。こうした交通機関が少ない過疎地等では、市町村が後期高齢者などを対象にタクシー利用券を配布しているケースもあります。ただし、利用金額には上限があります。

次に、電動車椅子などの歩行補助具を用いて出かける方法も考えられます。電動車椅子の最高速度は時速6キロ以下で、道路交通法では「歩行者」の扱いになるため、運転免許証を返納した後も乗ることができます。移動範囲が一気に広がり、外出を楽しむ機会が増えるかもしれません。ただし、スーパーやショッピングセンター等の店内では利用できないことがあるため、あらかじめ、施設側に確認が必要です。また、新品を購入すると20~50万円、レンタルでも月に数万円ほどかかります。要介護認定を受け、要介護2以上の認定を受けている人は、介護保険を利用して自己負担1~3割でレンタルすることもできます。

消費者がスーパー等へ出かけるのではなく、逆に、スーパー等がトラックに商品を乗せて地域を回る移動販売車もあります。「買い物難民」の問題が注目されるようになってから、全国的に増加しました。ただし、商品の品揃えには限りがあります。また生協などの中には、自宅付近から店舗まで送迎する「買い物バス」を運行しているところもあります。買い物バスで乗り合わせた人と会話したり、交流したりできるメリットがあります。さらに、地域によっては、NPO法人などが運営する高齢者向けの食堂もあります。

Q2.かしこい飲食料の調達方法は?

■ネットスーパーや弁当の宅配サービスを利用できます。
新型コロナウイルスの影響もあり、最近、増えているのがネットスーパーです。事前にインターネットで注文した商品を自宅に届けてくれます。最近では、百貨店やコンビニエンスストアの中にも宅配を始めたところがあります。ただし、生鮮食品の品揃えや配送料は事業者によって異なります。注文の期限は配達数日前までというケースから、即日OKとしているケースまで、様々です。

ネットスーパーは需要が大きい割に、在庫管理が難しく、配送コストが高い等の事情により、事業単体では赤字経営が多く、廃業やサービス中止も相次いでいます。10年後、20年後、どのようなネットスーパーが運営されているかは分かりません。

また、家事代行業者や配送事業者が実施する買い物代行サービスを利用することもできます。

弁当の宅配を利用する方法もあります。高齢者向けに量や栄養バランスに配慮した弁当を宅配する事業者も増えています。また、新型コロナウイルスの流行後、多くの飲食店がウーバーイーツなどの配送事業者を利用して出前を開始しました。タクシー会社による弁当の宅配も制度化され、地方でも選択肢は増えてきています。

Q3.買い物に関する公的補助はありますか?

■介護保険を利用して、ヘルパー等に、飲食料品の買い物を依頼することができる場合もあります。
日常生活に支援や介護が必要な状態になったら、介護保険を利用することができます。ただし介護保険事業を実施する市町村によって、サービス内容や利用料が異なります。利用するには、まず要介護認定を受け、ケアマネージャー等から、利用計画を作成してもらう必要があります。自己負担は利用料の1~3割です。

要介護認定を受けた人は、同居家族がおらず、自身では家事ができない場合に、訪問看護の「生活援助」としてヘルパー等に飲食料等の買い物を依頼することができる場合があります。自治体によっては、要支援認定を受けた高齢者らを対象に、ボランティア等が運転する車で、スーパーまで送迎する取組を行っているところもあります。

※ その他ジェロントロジー関連のレポートはこちらからご確認下さい。
https://www.nli-research.co.jp/report_category/tag_category_id=15?site=nli

(2020年10月07日「ジェロントロジーレポート」)

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生活研究部   准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任

坊 美生子 (ぼう みおこ)

研究・専門分野
中高年女性のライフデザイン、高齢者の交通サービス、ジェロントロジー

経歴
  • 【職歴】
     2002年 読売新聞大阪本社入社
     2017年 ニッセイ基礎研究所入社

    【委員活動】
     2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
     2023年度  日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員

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