2020年12月08日

ジェロントロジーとは?-人生100年時代の基礎知識

基礎研REPORT(冊子版)12月号[vol.285]

生活研究部 主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任   前田 展弘

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近年、“ジェロントロジー”という言葉を見聞きする機会が増えていないだろうか。ニッセイ基礎研究所は2001年から、民間シンクタンクとしては唯一、ジェロントロジーの研究に取り組んできている。ここで改めてジェロントロジーが一体どのようなものか紹介したい。

ジェロントロジーとは、『人生100年時代の基礎知識』

ジェロントロジー(Gerontology)は、“AGING”、つまり個人の「加齢(年をとること)」と、社会の「高齢化」を研究対象とした一つの学問であり知識基盤である。「加齢に伴う心身の変化を研究し、高齢社会における個人と社会の様々な課題を解決することを目的とした、AGING(加齢・高齢化)を科学する学問」がジェロントロジーと言える*。ギリシャ語の「高齢者」の意味を表すGerontに、「学」を表すologyがついた造語である。日本では「老年学」「加齢学」と訳されることが多いが、それ以外にも「長寿学」「高齢学」「熟年学」「創齢学」「人間年輪学」「長寿社会の人間学」「人生の未来学」「生きがいの科学」など多様な訳が見られる。筆者もメンバーである東京大学高齢社会総合研究機構(Institute of Gerontology)では「高齢社会総合研究学」と訳している。
 
ジェロントロジーの歴史は実は古く、すでに1世紀の時が経っている。1903年にフランス・パスツール研究所のメチニコフ博士が長寿に関する研究をジェロントロジーと命名したとされ、1930年代以降、主にアメリカを中心に発展してきた。現在もアメリカでは約250の大学や研究機関でジェロントロジーの研究や教育が進められている。日本では1960年代以降、日本老年学会を中心とした学会での活動は行われてきているが、世間一般までの広がりはなかったように思われる。しかしながら、人生100年時代の到来とともにようやく日本でも、長寿時代の新たな生き方、超高齢社会のあり方、高齢者市場の開拓の仕方などが模索されるなかで、ジェロントロジーへの関心と注目が高まってきているということなのであろう。
ジェロントロジー

ジェロントロジーに含まれる知識

では、ジェロントロジーはどのような知識や情報を提供してくれるのか。その範囲は極めて広範多岐に及ぶが、中心となる骨格は次の2つである。一つは、個人が“より良く”長生きしていくために知っておくべき「長寿時代(人生100年時代)のライフデザイン」に関わる知識と情報。「健康」に関することはもちろん、理想の「生き方や老い方」、高齢期の「活躍」の仕方、「お金」や「住まい」のこと、医療や介護そして終末期のことなどが含まれる。もう一つは、社会が持続的に発展していくための「超高齢社会のデザイン」に関わる知識と情報。社会保障制度全般から、医療、介護、年金、住宅、交通システムに関わる制度・政策、ジェロンテクノロジー(福祉工学)や高齢者に関わる法制度などを含む。下記の書籍「東大がつくった高齢社会の教科書」(東京大学高齢社会総合研究機構編著、(株)ニッセイ基礎研究所編集協力)の目次を見ていただくと、ジェロントロジーのカバー範囲がご理解いただけるかと思う。
ジェロントロジーの教科書
ニッセイ基礎研究所ではHPの中で「ジェロントロジーを学ぼう」というコーナーを新たに2020年10月より開設した。こちらも併せてご覧いただくとジェロントロジーの主なエッセンスはご理解いただけると思う。ぜひ、ジェロントロジーを学ばれ、これからの人生設計、また企業としての新たな事業展開、地域の新たなまちづくりなど多様な面でジェロントロジーから得た知識と情報を活かしていただければ幸いである。
 
* 筆者がジェロントロジーの実態を踏まえて整理した解釈。ジェロントロジーの定義に関しては、『現代エイジング辞典』(1996年)では「老年学は人口の高齢化にともなって起きてきた種々の変化や問題を解決するために、生物学、医学、心理学、経済学、社会学、社会福祉学、建築学などの自然科学と社会科学の関連した科学の協力によってできた総合科学」とされる。
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生活研究部   主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任

前田 展弘 (まえだ のぶひろ)

研究・専門分野
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)、超高齢社会・市場、QOL(Quality of Life)、ライフデザイン

(2020年12月08日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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