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- ECB政策理事会-第2波でリスクは下方、12月の「再調整」を強調
2020年10月30日
1.結果の概要:政策は変更なし
10月29日、欧州中央銀行(ECB:European Central Bank)は政策理事会を開催し、金融政策について決定した。概要は以下の通り。
【金融政策決定内容】
・リスクが下方に傾いていること、12月の金融政策手段の再調整を明示
・今回の変更はなし
【記者会見での発言(趣旨)】
・理事会は、(12月に)行動が必要であるという事実、再調整することが正しい方法であるという事実について、完全に合意している
・今回の理事会では具体的な政策手段の変更については、議論していない
・デフレリスクは全く予想していない
2.金融政策の評価:12月の追加緩和について言及
今回の理事会は、新型コロナウイルスの感染が急拡大し、封じ込め政策の強化を余儀なくされる地域が多くなるなかで、追加緩和の期待も急速に高まるなかでの会合だった。
理事会での結果は9月に続き現状維持の決定となったが、声明文の冒頭には12月に金融政策手段を再調整(recalibrate)すると明記、質疑応答でも何らかの行動をする点を強調した。
同時に、声明文ではリスクが下方に傾いていることに言及した。ただし、質疑応答ではデフレリスクは予想していないとして、エネルギー価格低迷やドイツのVAT引き下げなど一時的な物価下落圧力が緩和されれば、2021年後半には上昇基調に回帰すると考えていると述べている。
金融政策については、具体的な再調整手段が、PEPPの規模拡大なのか延長なのか、どの程度なのといった詳細については触れず、すべてを検討している旨を強調、手段もPEPPに限定されるものではない点も指摘している。ただし、PEPPの持つ柔軟性には度々触れていることから、12月の理事会では、PEPPの規模拡大・期間延長を中心に議論されるものと見られる。
理事会での結果は9月に続き現状維持の決定となったが、声明文の冒頭には12月に金融政策手段を再調整(recalibrate)すると明記、質疑応答でも何らかの行動をする点を強調した。
同時に、声明文ではリスクが下方に傾いていることに言及した。ただし、質疑応答ではデフレリスクは予想していないとして、エネルギー価格低迷やドイツのVAT引き下げなど一時的な物価下落圧力が緩和されれば、2021年後半には上昇基調に回帰すると考えていると述べている。
金融政策については、具体的な再調整手段が、PEPPの規模拡大なのか延長なのか、どの程度なのといった詳細については触れず、すべてを検討している旨を強調、手段もPEPPに限定されるものではない点も指摘している。ただし、PEPPの持つ柔軟性には度々触れていることから、12月の理事会では、PEPPの規模拡大・期間延長を中心に議論されるものと見られる。
3.声明の概要(金融政策の方針)
10月30日の政策理事会で発表された声明は以下の通り。
- 追加緩和へのスタンス(最終箇所にあったものを冒頭に移動し拡充・具体化)
- 現在のリスクが明らかに下方に傾いているなかで、理事会は注意深く、感染拡大、ワクチン開発、為替レートの状況を注視する
- 12月のスタッフ見通しで経済見通しとリスクバランスを十分に再評価できるだろう
- この最新の評価に基づいて理事会は、適切に金融政策手段を再調整(recalibrate)することで、状況に対応し、資金調達環境を良好に保ち、経済回復を支え、感染拡大によるインフレ率への負の影響を緩和する
- これにより、インフレ率は対称性へのコミットメントに沿った形で、持続的に目標へと収束していくだろう
- 政策金利の維持(変更なし)
- 主要リファイナンス・オペ(MRO)金利:0.00%
- 限界貸出ファシリティ金利:0.25%
- 預金ファシリティ金利:▲0.50%
- フォワードガイダンス(変更なし)
- インフレ見通しが、見通し期間において2%に十分近いがやや下回る水準へと確実に収束し、かつ、インフレ動向に一貫して反映されるまで、政策金利は現行水準もしくはより低い水準を維持する
- インフレ見通しが、見通し期間において2%に十分近いがやや下回る水準へと確実に収束し、かつ、インフレ動向に一貫して反映されるまで、政策金利は現行水準もしくはより低い水準を維持する
- PEPPの継続(変更なし)
- 総枠1兆3500億ユーロの資産購入を実施
- 緩和的な金融政策姿勢でパンデミックに伴うインフレ見通しの下方シフトの相殺に貢献
- 購入に際しては、実施期間、資産クラス、国構成について柔軟性を持って行う
- これにより理事会は金融政策の円滑な伝達に関するリスクを回避する
- 少なくとも2021年6月までPEPPの実施(変更なし)
- 理事会は、PEPPによる資産購入を新型コロナ危機が去るまで実施する
- 理事会は、PEPPによる資産購入を新型コロナ危機が去るまで実施する
- PEPP元本償還分の再投資の実施(変更なし)
- PEPPの元本償還の再投資は少なくとも2022年末まで実施する
- 将来のPEPPの元本償還(roll-off)が適切な金融政策に影響しないよう管理する
- 資産購入プログラム(APP)の実施(変更なし)
- 月額200億ユーロに加えて、年末までの総枠1200億ユーロの購入を実施
- 毎月の購入は、緩和的な政策金利の影響が強化されるまで必要な限り継続
- 政策金利の引き上げが実施される直前まで実施
- APPの元本償還再投資(変更なし)
- APPの元本償還分は全額再投資を実施
- 利上げ後の相応の期間、十分な流動性と金融緩和を維持するために必要な限り実施
- 十分な流動性供給の実施(文言の変更、政策上の変更なし)
- リファイナンス・オペを通じて十分な流動性供給を継続
- 特にTLTROⅢは銀行の魅力的な資金源であり、企業・家計への貸出支援となっている
4.記者会見の概要
政策理事会後の記者会見における主な内容は以下の通り。
(冒頭説明)
(経済分析)
(金融分析)
(検討結果)
(冒頭説明)
- 本日の理事会には欧州委員会のドンブロウスキス副委員長も出席した
- コロナウイルスの再拡大は、公衆衛生およびユーロ圏・世界経済への新たな課題となっている
- 最新の情報によると、ユーロ圏の回復は、夏の間に部分的で不均一だが力強い回復をしたのち、予想以上のペースで勢いを失いつつある
- ウイルスの拡大と封じ込め政策の強化は経済活動の重しになり、短期的な見通しを明らかに悪化させている
- 実際、製造業は回復が続いているものの、サービス業の活動は減速している
- 財政政策は家計・企業を支えているものの、消費者は感染拡大や雇用・所得へ影響を危惧している
- さらに、財務状況の悪化と経済見通しの不確実性の高まりが企業の設備投資への重しとなっている
- インフレ率は、エネルギー価格の低迷および、需要低迷、労働市場や生産市場の停滞を反映した物価情報圧力の弱さにより、抑制されている
- 3月初旬以降の金融政策は、全業種・地域の資金調達環境を支え、ユーロ圏経済の回復と中期的物価安定への重要な支援となっている
- (声明文冒頭の追加緩和へのスタンス、12月の金融政策手段の再調整に言及)
- 緩和的な金融政策姿勢を取ることを再確認した
- 金融政策の決定内容
- (具体内容は上記第3節記載の通り)
(経済分析)
- ユーロ圏の実質GDPは20年4-6月期に前期比▲11.8%と減少した
- 4月を底として、7-9月期は強い回復を見せ、上半期の落ち込みの半分を戻した
- 夏以降の感染拡大と封じ込め政策の強化は短期的な見通しへの明らかな逆風である
- 実際、最新統計や調査、高頻度データでは、10-12月期の経済活動が大きく鈍化していることを示している
- 加えて、経済状況は業種によって異なる
- 特にサービス業は、社会活動・移動制限により大きな影響を受け、鈍化している
- 感染拡大に関する不確実性が労働市場や消費・投資の急回復を弱める可能性が高いなかで、ユーロ圏経済は、良好な資金調達環境、拡張的な財政政策によって支えられる必要がある
- ユーロ圏経済の見通しを取り巻くリスクは、明らかに下方に傾いている
- これはウイルスの感染拡大と封じ込め政策の強化、および、感染拡大が今後の経済・金融市場にもたらす不確実性によるリスクである
- これはウイルスの感染拡大と封じ込め政策の強化、および、感染拡大が今後の経済・金融市場にもたらす不確実性によるリスクである
- インフレ率は、エネルギー価格および非エネルギーの財・サービスの価格を反映し8月▲0.2%から9月▲0.3%に下落した
- 原油価格の動向と一時的なドイツ付加価値税(VAT)の引き下げを考慮すると、21年初までマイナス圏で推移する可能性が高い。
- 短期的な物価圧力は需要の弱さ、特に観光・旅行関連業の弱さ、賃金上昇圧力の弱さ、為替相場の増価(上昇)による弱さが続くだろう
- 感染拡大の影響が剥落すれば、緩和的な金融・財政政策に支えられた需要回復によって中期的には、物価上昇圧力があるだろう
- 市場観測・サーベイ調査による長期的インフレ期待は引き続き低水準にとどまっている
(金融分析)
- M3伸び率は8月の9.5%から9月に10.4%と上昇、コロナ禍前の水準を大きく上回っている
- 通貨の強い拡大は、域内の信用拡大、ユーロシステムによる資産購入、金融部門における予防的な理由からの貨幣保有選好が反映されている
- 流動性の高い狭義通貨(M1)が引き続き広義通貨の伸びをけん引している
- 民間部門への貸付も引き続き新型コロナウイルスが経済活動へ与えた影響を受けている
- 非金融法人向け貸付はコロナ禍直後の強い上昇の後、8月・9月は7.1%と安定している
- しかし、最近の月次貸出動向は鈍化している
- 家計向け貸出伸び率は8月3.0%、9月3.1%と微増した
- 民間部門への貸出伸び率は引き続き歴史的低金利の恩恵を受けている
- 7-9月期の銀行貸出調査によれば、企業への貸出姿勢は厳格化している
- 資金調達環境と財務状況は良好であるものの、リスク認識の高まりが信用創造への重しとなっている
- 調査対象行は、7-9月期の企業の借入需要が緊急流動性確保の必要性低下や設備投資の弱まりを反映して鈍化している、と報告している
- 家計のネットでの借入需要は増加しているが、家計への貸出姿勢は厳格化を示している
- 我々の政策手段は、各国政府・欧州機関による政策とともに、引き続きコロナ禍の影響を大きく受けた人たちへの資金調達支援となるだろう
(検討結果)
- 経済分析・金融分析の結果、物価安定のために十分な金融緩和策が必要であると確認された
- ユーロ圏経済の急激な縮小と民間需要の減少を踏まると、野心的かつ協調した財政政策が重要
- コロナ禍対応としての財政政策は、可能な限り一時的かつ対象を絞る必要があるが、企業や家計の需要は弱く、回復が遅れるリスクが高まっていることから、引き続き財政政策による支援が必要である
- 欧州理事会の労働者・企業・国家のための5400億ユーロの政策は重要な支援となる
- 理事会は、「次世代EU」基金の主要な役割を認識しており、遅延なく実行することの重要性を強調する
- 基金が生産的な公共支出に使用され、生産性向上の構造政策が伴うのであれば、「次世代EU」はより迅速に、より強く、より均一な回復に寄与し、加盟国経済の強靭さと潜在成長率を高め、域内の金融政策の実効性も支えるだろう
- こうした構造政策は特に、長期的な構造的・制度的な脆弱性に対処し、グリーンやデジタルへの移行を加速させるために重要である
(2020年10月30日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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