2020年10月14日

英国雇用関連統計(9月)-最悪期は脱したが、先行きの不透明感も

経済研究部 准主任研究員   高山 武士

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1.結果の概要:失業率は増加、賃金・労働時間は改善が続く

10月13日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【9月】
失業保険申請件数1前月(270.37万件)から2.8万件増の273.17万件となった(図表1)。
申請件数の雇用者数に対する割合は7.6%となり、前月(同7.5%)から上昇した。

【8月(6-8月の3か月平均)】
失業率は4.5%で前月(4.1%)から上昇、市場予想2(4.3%)を上回った(図表1)。
就業者は3259.1万人で3か月前の3274.4万人から15.3万人の減少となった。
増減数は前月(▲1.2万人)から減り(減少幅の拡大)、市場予想(▲3.0万人)を下回った。
週平均賃金は、前年同期比▲0.0%で前月(▲1.0%)から改善、市場予想(▲0.6%)も上回った(図表2)。

(図表1)英国の失業保険申請件数、失業率/(図表2)賃金・労働時間の推移
 
1 求職者手当(JSA:Jobseekerʼs Allowance)、国民保険給付(National Insurance credits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは失業保険等申請件数について公式統計とはしておらず実験統計という位置付けで公表している。ただし、公表日の前月のデータを入手できるため、速報性の高さという利点がある。
2 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:第2波拡大で先行きの不透明感が高まる

9月の失業保険申請件数は8月から微増、申請者数の割合も7.6%と若干悪化した。
(図表3)求人数の変化(要因分解) 失業保険申請件数と同じく9月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、7-9月の平均求人数は48.8万件となり、4-6月(平均34.3万件)を底に改善を続けており、世界金融危機の水準(09年4-6月43.2万)やコロナ禍で急減した20年3-5月(48.2万)の水準を上回った(図表3)。
給与所得者データ3を見ると、9月の給与所得者は2832.6万人で前月差+2.0万人となり、2月以降に続いていた減少から増加に転じた4(図表4)。月あたり給与額(中間値)も前年同月比+4.3%と2019年4月(同+4.5%)以来の上昇率を記録した。なお、流出(退職など)と流入(就職など)の傾向を見ると、9月にはおおむねコロナ禍前の水準まで戻っているものの(図表5)、ONSでは、新規流入者は既存雇用者より40%ほど給与水準が低く、流入がやや低水準で推移していることが、給与(中間値)の上昇圧力になっていると言及している。>
(図表4)給与取得者データの推移/(図表5)英国給与所得者の流出入推移
続いて8月までのデータを確認する。

6-8月の失業率は4.5%となり、失業者は152.2万人まで増加した(前掲図表1)。一方、賃金関係では、6-8月の平均賃金が前年同期比▲0.0%(実質は▲0.8%)となり、マイナス幅の縮小が続いている(前掲図表2)。労働時間も27.3時間(前年同期差▲4.8時間)、フルタイム労働者で31.9時間(同▲5.4時間)となり、賃金や労働時間の面は改善が続いている。

雇用関係の多くのデータはコロナ禍の最悪期を脱したことを示唆しているが、英国では感染拡大の第2波が大きくなっており、地域の感染状況に応じて飲食店の深夜営業の停止や閉鎖など、行動制限を再強化する動きも目立っている。行動制限の再強化と合わせて営業停止を行う店舗向けの雇用支援策の導入も発表されたが5、政策規模は縮小されている。一方、感染回避的な行動は続くことで雇用の悪化圧力は年末にかけて大きくなるとみられ、先行きの不透明感は増していると言える。
 
3 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した実験統計。直近データは利用可能な情報の85%ほどを集計して算出。
4 雇用維持制度(Job Retention Scheme、CJRS、10月末まで)により一時休業している従業員は給与所得者としてカウントされるため、雇用維持制度の恩恵を受けられなかった人が一定いると見られる。給与所得者の減少の方が、労働力調査(LFS)ベースの就業者減より大きいが、ONSは無給の人が労働力調査において「就業者」と報告している可能性を指摘している。
5 これまでの雇用維持制度(CJRS)は8月1日に社会保障を政府負担から雇用主負担に変更、9月1日に賃金の政府負担率・上限額を引き下げており(月2500ポンドを上限に給与の80%まで支給→月2187.5ポンドを上限に70%支給、残額は雇用主負担)、10月1日以降はさらに政府負担率を引き下げ(月1,875ポンドを上限に60%支給、残額は雇用主負担)、10月末で終了する予定となっている。その後の雇用維持制度としては、21年1月まで雇用維持していた場合に1000ポンドの一時金を支給する制度(Job Retention Bonus)に支援規模を縮小する予定だったが、発表された新規の雇用支援策(Job Support Scheme、JSS)では営業停止店舗向けの支給(月額最大2,100ポンドを上限に給与の67%まで)を11月から6か月間実施する予定としている。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、国際経済

(2020年10月14日「経済・金融フラッシュ」)

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