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- 業績見通し「未定」企業に引き続き要警戒-10月~11月の中間決算公表に向けた示唆
2020年09月10日
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1――はじめに
2020年度第1四半期(4月~6月)の決算発表がほぼ一巡した。年度初めに業績見通し(期初予想)を「未定」としていた企業の半数弱が業績予想を公表したが、極めて悪い内容が目立ち株価も軟調だ。期初予想を公表しない理由を「コロナ禍の影響が読めないため」としていたケースが多いが、実際は「あまりに厳しい内容のため公表できなかった」のかもしれない。そうであれば、現時点でも「未定」の企業には警戒が必要だ。
2――「未定」としていた企業の半数弱が開示
3――「今回開示」企業は業績が大幅悪化の見通し
業績見通しの内訳を詳しく見ると(図表3)、「期初に開示済み」の企業は社数ベースで33%がコロナ禍でも増益を見込んでいるほか、57%(すなわち過半数)の企業が50%以内の減益で済む見通しだ。
これに対して「今回開示」した企業では増益見込みの企業が15%にとどまり、「50%以内の減益」も45%と相対的に少ない。その分、「50%超の減益」が24%を占めるほか、「赤字転落や赤字拡大」を見込む企業が16%にのぼる。図表2の結果が特定の企業が足を引っ張っているのではなく、全体的にかなり厳しいことがわかる。
「今回開示」した企業の業績見通しは市場予想との乖離も大きい(図表4)。証券会社のアナリストによる業績予想の平均値と会社側の予想を比較すると、「期初に開示済み」と「今回開示」の全体では会社予想が市場予想を14%ほど下回る(経常利益ベース)。
なかでも「今回開示」の会社予想は市場予想を20%下回っており、市場は想定以上に悪い内容を突きつけられた格好だ。一方、期初に開示していた企業は9%の下方乖離にとどまり、この程度の乖離は通常の範囲内といえる。期初予想が“発射台”となったことでアナリストがあまり楽観的な見通しを出さなかったためだろう。
邪推かもしれないが、今回初めて開示した企業の一部には、「コロナ禍の影響を見通せないため」というよりも、会社側の業績予想が「あまりに内容が悪いため」期初時点での見通し公表を見送ったという事情もあるかもしれない。
これに対して「今回開示」した企業では増益見込みの企業が15%にとどまり、「50%以内の減益」も45%と相対的に少ない。その分、「50%超の減益」が24%を占めるほか、「赤字転落や赤字拡大」を見込む企業が16%にのぼる。図表2の結果が特定の企業が足を引っ張っているのではなく、全体的にかなり厳しいことがわかる。
「今回開示」した企業の業績見通しは市場予想との乖離も大きい(図表4)。証券会社のアナリストによる業績予想の平均値と会社側の予想を比較すると、「期初に開示済み」と「今回開示」の全体では会社予想が市場予想を14%ほど下回る(経常利益ベース)。
なかでも「今回開示」の会社予想は市場予想を20%下回っており、市場は想定以上に悪い内容を突きつけられた格好だ。一方、期初に開示していた企業は9%の下方乖離にとどまり、この程度の乖離は通常の範囲内といえる。期初予想が“発射台”となったことでアナリストがあまり楽観的な見通しを出さなかったためだろう。
邪推かもしれないが、今回初めて開示した企業の一部には、「コロナ禍の影響を見通せないため」というよりも、会社側の業績予想が「あまりに内容が悪いため」期初時点での見通し公表を見送ったという事情もあるかもしれない。
4――株価の反応も厳しい
最後に「50%を超える大幅な減益」を見込む企業だが、さすがに「利益が半分以下に減る」となると市場の評価は厳しく、期初に開示済みであった企業でも改めて業績悪化が意識されて発表直後に売り込まれた。
特に「今回開示した企業」は株価の下落率が一時3%を超えて大きく売り込まれた。その後、発表前の水準を回復してはいるものの、株価の戻りが鈍い様子がみられる。
特に「今回開示した企業」は株価の下落率が一時3%を超えて大きく売り込まれた。その後、発表前の水準を回復してはいるものの、株価の戻りが鈍い様子がみられる。
5――中間決算に向けた示唆
今回は企業側の業績見通しと株価の反応を分析したものである。全体的に「今回開示」した企業は業績見通しも株価の反応も厳しいことが明らかとなった。結果の解釈としては、市場が期待し過ぎていた可能性のほかに、会社側の見通しが保守的過ぎる可能性もある。
一般に日本の上場企業は業績見通しを保守的に開示しておき、期末の実績が上振れする傾向が強い。過去をみてもリーマンショックが起きた08年度や東日本大震災に見舞われた11年度などを除いて、期末の実績値がほぼ例外なく企業側の見通しを上回った。
こうした前例を当てはめれば、中間決算、期末実績と時間が経つにつれて企業業績の改善期待が高まり、株価にもプラスに働くかもしれない。
一方で図表1のとおり全体の3割以上の企業がいまだ業績の見通しを公表していない。さすがに中間決算のときに開示すると思われるが、今回開示した企業と同様に厳しい内容となることも想定される。
コロナ禍の収束が見通せないだけでなく秋~冬にかけて第二波襲来の懸念も燻っており、業績見通しを開示した企業でも例年ほどの上方修正が期待できるか予断を許さない状況といえそうだ。株式投資に際しては、投資先や売買タイミングの徹底的な分散が賢明だろう。
一般に日本の上場企業は業績見通しを保守的に開示しておき、期末の実績が上振れする傾向が強い。過去をみてもリーマンショックが起きた08年度や東日本大震災に見舞われた11年度などを除いて、期末の実績値がほぼ例外なく企業側の見通しを上回った。
こうした前例を当てはめれば、中間決算、期末実績と時間が経つにつれて企業業績の改善期待が高まり、株価にもプラスに働くかもしれない。
一方で図表1のとおり全体の3割以上の企業がいまだ業績の見通しを公表していない。さすがに中間決算のときに開示すると思われるが、今回開示した企業と同様に厳しい内容となることも想定される。
コロナ禍の収束が見通せないだけでなく秋~冬にかけて第二波襲来の懸念も燻っており、業績見通しを開示した企業でも例年ほどの上方修正が期待できるか予断を許さない状況といえそうだ。株式投資に際しては、投資先や売買タイミングの徹底的な分散が賢明だろう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年09月10日「基礎研レポート」)
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経歴
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
2023年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト
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