2020年09月09日

景気ウォッチャー調査(20年8月)~現状判断DIは4か月連続改善も、飲食に懸念~

経済研究部 准主任研究員   山下 大輔

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1.景気の現状判断DIは4か月連続で改善、先行き判断DIも2か月ぶりに改善

9月8日に内閣府が公表した2020年8月の景気ウォッチャー調査(調査期間:8月25日~31日)によると、3か月前との比較による景気の現状判断DI(季節調整値)は43.9と前月から2.8ポイント上昇した。また、2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は42.4と前月から6.4ポイント上昇した。

今回の結果からは、緊急事態宣言の解除により、経済活動が再開され、景況感に持ち直しの動きが継続していることが確認された。また、新型コロナウイルス感染症の感染状況の落ち着きにより、先行きへの警戒感が和らいできているように思われる。ただし、現状判断DI、先行き判断DIともに依然として50を下回っており、景況感が依然として厳しい状況であることに変わりはない。

また、地域別でみると、現状判断DI(季節調整値)は北陸、沖縄以外の地域では前月より上昇し、先行き判断DI(季節調整値)は全ての地域で前月より上昇した。沖縄の現状判断DI(季節調整値)は、前月差▲10.0ポイントの35.9であり、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による沖縄県独自の緊急事態宣言が調査期間中に継続していたことが影響したものとみられる(沖縄県独自の緊急事態宣言は8月1日~9月5日まで発出)。
現状判断DI・先行き判断DIの推移/地域別現状判断DI・先行き判断DIの前月差

2.景気の現状判断DI(季節調整値):全体としては下げ止まりつつも、飲食は悪化

現状判断DI(季節調整値)は、4月に7.9まで落ち込んだ後に5月から4か月連続で改善した。ただし、景気の現状判断DIの回答者構成比をみると、改善と回答した割合(「良くなっている」と「やや良くなっている」の回答の合計)は7月より減少しており(7月:25.4%→8月:23.8%)、現状判断DIが前月よりも上昇したのは、現状維持(「変わらない」)と回答した割合(7月:31.5%→8月:39.1%)の増加と、悪化と回答した割合(「悪くなっている」と「やや悪くなっている」の回答の合計)(7月:43.1%→8月:37.1%)の減少によるものである点に留意する必要がある。
現状判断DI・回答者構成比/現状判断DIの内訳の推移
現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連(前月差+2.0ポイント)、企業動向関連(同+3.3ポイント)、雇用関連(同+7.4ポイント)の全てで改善した。また、家計動向関連の内訳をみると、住宅関連(前月差+4.5ポイント)と小売関連(同+3.3ポイント)は上昇する一方で、飲食関連(同▲4.4ポイント)は低下した。なお、サービス関連(同+0.5ポイント)はほぼ横ばいであった。企業動向関連の内訳においても、製造業(前月差+4.2ポイント)、非製造業(同+2.4ポイント)の双方で改善した。

回答者のコメントをみると、飲食関連について、「フリー客はだいぶん戻ってきているが、やはり10人以上集まる会食などの予約はなかなか入らないので、3か月前と同じ状況が続いている」(南関東・一般レストラン)、「新型コロナウイルスの感染拡大が収まらないなか、いまだに新たなクラスターが発生している現状では、景気の先行きは暗いものになる」(甲信越・高級レストラン)など、飲食店の厳しい経営状況が伺われ、大人数での宴会や会食等の自粛、ソーシャル・ディスタンスを図るために客席を減らして営業を行っていることなどが影響しているように思われた。また、「新型コロナウイルスがまだまだ落ち着かず、客足が戻っていない。インバウンドを対象に営業していた店舗は、閉店も考えている」(九州・一般レストラン)、「周辺の老舗飲食店の閉店や仲卸業者の廃業が相次いでいる」(北陸・スーパー)など、閉店・廃業に言及するコメントもみられた。Go To トラベルキャンペーンについては、「Go To Travelキャンペーンの効果もあり、宿泊の予約が順調に入っている。」(中国・観光型ホテル)、「県民割引やGo To Travelキャンペーンなどの宿泊補助金制度のお陰で、露天風呂付き客室を始め単価の高い部屋の稼働が良い。」(北陸・観光型旅館)など、その政策効果の発現に言及するコメントがあるものの、「Go To Travelキャンペーンが始まり、消費が少し動くと期待したが、効果は限定的であり、客の大きな動きにはつながっていない。対症療法ではなく、ワクチンの開発や、ウイルスとの共存方法などを提示しない限り、客が動くことはないと感じる。」(近畿・旅行代理店)など、新型コロナウイルス感染症の感染状況が落ち着かない限りは政策効果が不十分なものにしかならない可能性を示唆するコメントも散見された。また、8月の特徴である猛暑については、「8月は猛暑のお陰でエアコンなどの季節商材が売れており、エアコンは前年比150%である。前年も猛暑だったが、前年よりも更に単価が高く、台数もアップしている」(東北・家電量販店)や「暑さのためなのか、景気が悪化しているからなのか、人出が少なく、来客数も減少している」(中国・商店街)など、景況感へのプラス面とマイナス面の影響のそれぞれを指摘するコメントがあった。

3.景気の先行き判断DI(季節調整値):全ての内訳で改善

2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は、7月には新型コロナウイルス感染症の感染者の増加に対する懸念から大きく落ち込んだが、8月に再び改善に転じた。景気の先行き判断DIの回答者構成比をみると、上述の現状判断DIの回答者構成比の動きとは異なり、改善と回答した割合(「良くなっている」と「やや良くなっている」の回答の合計)(7月:11.2%→8月:14.7%)と現状維持(「変わらない」)と回答した割合(7月:39.8%→8月:48.5%)が増加し、悪化と回答した割合(「悪くなっている」と「やや悪くなっている」の回答の合計)(7月:49.0%→8月:36.8%)は減少している。ただし、現状維持の回答割合が約半数近くに達しており、2~3か月先も現状と変わらないという予想が広がっていることが示唆される。
先行き判断DI・回答者構成比/先行き判断DIの内訳の推移
先行き判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連(前月差+6.7ポイント)、企業動向関連(同+4.8ポイント)、雇用関連(同+8.0ポイント)の全てで前月より改善した。家計動向関連と企業動向関連の内訳の全てが前月より改善した(小売関連:前月差+7.8ポイント、飲食関連:同+6.3ポイント、サービス関連:同+5.3ポイント、住宅関連:同+3.7ポイント、製造業:同+5.5ポイント、非製造業:同+4.8ポイント)。

回答者のコメントからは、「新型コロナウイルスの影響により経済社会が変化しており、以前の状態に戻る時期がいつになるのか見通しが立たないことから、今後の景気は現状のままで推移する」(北海道・司法書士)、「新型コロナウイルスと共存する社会がスタンダードになる」(四国・一般レストラン)など、新型コロナウイルス感染症が終息しない限り、先行きは現状と変わらず、大きく景気が戻ることは期待しにくいことを示唆するものが多々あった。また、「雇用調整助成金の延長が決まり、大量の失業者が生まれる可能性は低い」(四国・職業安定所)、「国の休業補償が、年内は延長になったこともあり、しばらくの景気は横ばいである。」(九州・新聞社[求人広告])などのコメントからは、政策による下支え効果が大きいことが伺われた。

緊急事態宣言が解除され、全体としては経済活動の持ち直しの動きが継続している状況ではあるが、新型コロナウイルス感染症の感染状況を意識しながらの経済活動にならざるをえない。新型コロナウイルス感染症の終息が見通せない限りは抜本的な景況感の改善は見込みにくいと思われる。当面は、新型コロナウイルス感染症と共存するためのソーシャル・ディスタンスなどの「新しい生活様式」に適応しながらいかに経済活動を継続していくか、「新しい生活様式」への適応に限界のある業種に対していかにセーフティネットを確保していくかが問われるだろう。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

山下 大輔 (やました だいすけ)

研究・専門分野
日本経済

(2020年09月09日「経済・金融フラッシュ」)

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