- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 保険 >
- 保険会社経営 >
- MEGA BIG 1等はいつ出るか?-1等最高12億円の期待はますます高まる
MEGA BIG 1等はいつ出るか?-1等最高12億円の期待はますます高まる
保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
サッカーの試合観戦に花を添えるスポーツくじも本格的に再開している。今年2月に発売されたMEGA BIGも6月に再開されており、現在は、試合の開催に合わせて、毎週1、2回のペースで、くじが行われている。
ところが、MEGA BIGは、これまで一度も1等が出ていない。そのことについて、少し考えてみたい。
なお、あらかじめお断りしておくが、筆者はスポーツ評論家ではなく、サッカーについても一般的な知識しか有していない。したがって、特定のチームの戦力やチーム間の対戦成績などをもとに専門的な予想を述べることはできない。あくまで統計的な確率だけを頼りに考えることにする。
◆MEGA BIGの1等当せん確率
MEGA BIGは、BIGと同じくコンピュータがランダムに試合結果を選択するタイプだ。指定されたサッカー12試合の90分間の試合結果が、くじの対象となる。ただし、試合結果といっても、BIGのように、ゲームの勝敗が対象になるわけではない。対戦する両チームの合計得点数が対象となる。
1つのゲームの合計得点数に基づいて、「1点以下=【1】」、「2点=【2】」、「3点=【3】」、「4点以上=【4】」の4通りに試合結果を分けている。12試合すべてについて、コンピュータの選択した結果が実際の試合結果と一致した場合、1等当せんとなる。MEGA BIGは1口300円で、1等の当せん金は、キャリーオーバーがない場合、最高7億円。キャリーオーバーがある場合は、最高12億円となる。
このキャリーオーバーがある場合の12億円という当せん金は、公営競技を除いて、これまでの日本くじ史上最高額となっている。
MEGA BIGなどのスポーツくじが宝くじと異なる点は、1口の当せん確率が必ずしも同じではないというところだろう。宝くじならば、何組の何番であろうと、当せん確率は変わらない。どの番号のくじでも当せん確率は同じだ。
2019年のJ1のリーグ戦の結果をみてみると、全306試合のうち、【1】は80試合(26.1%)、【2】は85試合(27.8%)、【3】は63試合(20.6%)、【4】は78試合(25.5%)であった。そこで、今年も両チームの合計得点数が【1】【2】【3】【4】となる確率はこの割合のとおり、26.1%、27.8%、20.6%、25.5%であると仮定してみよう。
こう仮定すると、当せん確率が一番高いくじは全試合が【2】のくじで、1等当せん確率は、0.0000211%となる。逆に当せん確率が一番低いくじは全試合が【3】のくじで、1等当せん確率は、0.00000058%となる。このように、くじによって当せん確率は大きく異なる。
1等の当せん確率は、平均的には0.000006%となる。1試合には4通りの結果がありうるので、12試合では、その12乗の「1677万7216通り」の結果が考えられる。この中から1通りだけ1等が出るという確率だ。これは、2000万枚に1枚の1等当せんが出る「年末ジャンボ宝くじ」よりも高い、1等当せん確率となる。
◆これまでの販売口数からすると、1等が出ていてもおかしくない?
ところが、まだ一度も1等が出ていない。どう考えたらよいだろうか。
ここで、徹底的に簡略化して考えてみよう。まず、サッカーの試合とか合計得点数とかという要素はすべて取り除く。そのうえで、コンピュータによる1口の試合結果の選択はランダムに行われる。ある1口と別の1口の間で、試合結果の選択はまったく無関係に独立して行なわれる。そして、最後に当せんとなる試合の結果もランダムに決まるとしてみよう。
すると、これは1677万7216回に1回当たりが出る「仮想のくじ引き」を考えることに行き着く。そして、この仮想のくじ引きを2177万51回引いたときに、1回も当たりが出ない確率はどれくらいか? という問題として捉えることができる。
実は、計算上この仮想のくじ引きで、くじを2177万51回引いたら、約73%の確率で1回は当たりが出ることになる。これだけくじを引いても、まだ当たりが出ないのは、約27%の確率となる。ちなみに、1回は当たりが出る確率が50%を超えるためには何回くじを引いたらよいかを計算すると、1162万9080回という結果が導かれる。
つまり、2177万51口分の投票で、まだ1等が出ていないという現在の状況は、仮想のくじ引きによると約27%の低確率のケースに相当する。
◆ギャンブラーの誤謬には要注意!
コイン投げで「表が出たら勝ち」「裏が出たら負け」というギャンブルを何回も繰り返すとする。裏が続いて負けが込んでくると、プレーヤーは「そろそろ表が出そうだ」という感じがしてくる。そして、ますますこのギャンブルにのめり込んでしまう。ところが、冷静に考えてみれば、コインで表が出る確率は、常に2分の1だ。過去に裏が出続けていたとしても、次回に表の出る確率が上がるわけではない。
この話は、MEGA BIGにもあてはまる。これまでに1等が一度も出ていないからといって、次回の1等の当せん確率が上がるわけではない。1等の当せん確率は、平均的に0.000006%(=1677万7216分の1)のままで、変わっていない。
変わっているのは、キャリーオーバー(当せん金の繰越額)の額だ。MEGA BIGは1等が出ていないため、キャリーオーバーが積み上がっている。現在、その額は22億8千万円に達している。1等当せんに対する人々の期待が高まっている表れといえるだろう。
人々の期待という点では、MEGA BIGを含めて、どんなくじでも、1つはっきりしていることがある。「買わなければ、絶対に当たらない」ということだ。くじのワクワク感を味わうためには、くじを買うしかないわけだ。
冷静にギャンブラーの誤謬の話を踏まえつつ、くじを買って次節のサッカーの試合と、MEGA BIGの結果をワクワクしながら見てみる。これがウィズコロナでの新しいスポーツ観戦のあり方なのかもしれないと思われるが、いかがだろうか。
(2020年09月02日「研究員の眼」)
保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
篠原 拓也のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/11/26 | 年末ジャンボ くじ購入の配分法-2つの宝くじからどのようにポートフォリオを組成する? | 篠原 拓也 | 研究員の眼 |
2024/11/19 | 年末ジャンボ 今年はどう狙う?-3つの高額当せんを踏まえて、くじの買い方を考えてみよう | 篠原 拓也 | 研究員の眼 |
2024/11/12 | ティッピングポイントのモデル化-気候変動のレジームシフトをどのようにモデル化するか? | 篠原 拓也 | 基礎研レター |
2024/11/05 | サイコロを3回振るギャンブル-平均的に収支トントンのギャンブルはどのように設定できるか? | 篠原 拓也 | 研究員の眼 |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年12月02日
2025年度の年金額の見通しは1.9%増で、年金財政の健全化に貢献 (後編)-2025年度の見通しと注目点 -
2024年12月02日
2025年度の年金額の見通しは1.9%増で、年金財政の健全化に貢献 (前編)-年金額改定の仕組み -
2024年12月02日
なぜ日本では「女性活躍」が進まないのか~“切り札”としての男性育休取得推進~ -
2024年12月02日
法人企業統計24年7-9月期-経常利益は7四半期ぶりに減少したが、設備投資は堅調を維持 -
2024年12月02日
ユーロ圏消費者物価(24年11月)-総合指数は2か月連続上昇、2.3%に
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【MEGA BIG 1等はいつ出るか?-1等最高12億円の期待はますます高まる】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
MEGA BIG 1等はいつ出るか?-1等最高12億円の期待はますます高まるのレポート Topへ