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2020年08月27日
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■期待先行の株価上昇、投資家は慎重姿勢を崩さず?
日本でも予断を許さない状況が続いているが、感染拡大のピークは過ぎて徐々に落ち着くという見方が増えているようだ。
一方、日銀や米FRBは超低金利環境を続ける姿勢を強調しており、投資マネーが株式市場から早期に引き揚げる公算は小さいと見られている。
また、米中関係の改善期待も投資家心理を和らげた。日本時間の25日午前、アメリカ通商代表部(USTR)は、中国と閣僚級の電話協議を開いたと発表した。アメリカ側によると、2月に発効した「第1段階の合意」に基づいて、中国がアメリカからの輸入を増やしており、「合意の進展を確認した」としている(あくまでアメリカ側の見解に過ぎないが)。
この発表を受けて市場では、大統領選を控えている中であっても、アメリカ側が中国に対して執拗に輸入拡大を迫る恐れが遠のいたと受け止められ、買い安心感に繋がったようだ。実際、25日の東京市場ではNYダウ先物と日経平均が連動して値上がりし、売買代金も7営業日ぶりに2兆円を超えた。
ただ、投資家の慎重姿勢も垣間見える。日経平均の2倍の値動きをするレバレッジ型ETF、およびマイナス2倍のダブルインバース型ETFの投資口数の推移を見ると、ここ1週間でレバレッジ型が増え、ダブルインバース型は減った。ヘッジファンドや個人の一部など短期志向の投資家が先高感をやや強めた様子がうかがえる。
とはいえ、株価が大幅上昇する前の8月上旬ほどはレバレッジ型ETFの口数は増えておらず、同じくダブルインバース型ETFの口数は減っていない。こうした状況から投資家が株価の先行きに疑念を抱きつつ、恐る恐る買っている様子もうかがえる。
一方、日銀や米FRBは超低金利環境を続ける姿勢を強調しており、投資マネーが株式市場から早期に引き揚げる公算は小さいと見られている。
また、米中関係の改善期待も投資家心理を和らげた。日本時間の25日午前、アメリカ通商代表部(USTR)は、中国と閣僚級の電話協議を開いたと発表した。アメリカ側によると、2月に発効した「第1段階の合意」に基づいて、中国がアメリカからの輸入を増やしており、「合意の進展を確認した」としている(あくまでアメリカ側の見解に過ぎないが)。
この発表を受けて市場では、大統領選を控えている中であっても、アメリカ側が中国に対して執拗に輸入拡大を迫る恐れが遠のいたと受け止められ、買い安心感に繋がったようだ。実際、25日の東京市場ではNYダウ先物と日経平均が連動して値上がりし、売買代金も7営業日ぶりに2兆円を超えた。
ただ、投資家の慎重姿勢も垣間見える。日経平均の2倍の値動きをするレバレッジ型ETF、およびマイナス2倍のダブルインバース型ETFの投資口数の推移を見ると、ここ1週間でレバレッジ型が増え、ダブルインバース型は減った。ヘッジファンドや個人の一部など短期志向の投資家が先高感をやや強めた様子がうかがえる。
とはいえ、株価が大幅上昇する前の8月上旬ほどはレバレッジ型ETFの口数は増えておらず、同じくダブルインバース型ETFの口数は減っていない。こうした状況から投資家が株価の先行きに疑念を抱きつつ、恐る恐る買っている様子もうかがえる。
■米低金利頼みの株価、一旦調整か
株価と実体経済の乖離を指摘する声がよく聞かれる。株価はコロナ前を回復する勢いなのに対して、足元の実態経済はコロナ前とは程遠い状況だ。つまり株価は景気回復を先取りしているわけだ。
確かに、日本で緊急事態宣言が再び発令される懸念は小さく、海外でも都市封鎖などの可能性は下がっている。世界的に景気が回復に向かうことは間違いないだろう。ただ、景気の回復ペースがそれほど速くない可能性が高まっていることを考えると、今の株価水準は来年以降の景気回復まで既に織り込んでいて、ややスピード違反のように思われる。
こうした期待先行による株高の大きな背景が米国の超低金利だ。株式と国債の投資魅力度(投資利回り)の差を表すのがイールドスプレッドだ。イールドスプレッドが高いほど株が割安なことを意味し、アメリカ市場では直近で3.8%ほどとなっている。
ここ数年を振り返ると、2018年1月や10月のようにイールドスプレッドが3%を下回ると株価が下落した。直近の株価上昇で株の割安さは下がったが、10年金利は0.6%程度の状況が続いているため、イールドスプレッドが3%より高い水準を維持しているわけだ。
確かに、日本で緊急事態宣言が再び発令される懸念は小さく、海外でも都市封鎖などの可能性は下がっている。世界的に景気が回復に向かうことは間違いないだろう。ただ、景気の回復ペースがそれほど速くない可能性が高まっていることを考えると、今の株価水準は来年以降の景気回復まで既に織り込んでいて、ややスピード違反のように思われる。
こうした期待先行による株高の大きな背景が米国の超低金利だ。株式と国債の投資魅力度(投資利回り)の差を表すのがイールドスプレッドだ。イールドスプレッドが高いほど株が割安なことを意味し、アメリカ市場では直近で3.8%ほどとなっている。
ここ数年を振り返ると、2018年1月や10月のようにイールドスプレッドが3%を下回ると株価が下落した。直近の株価上昇で株の割安さは下がったが、10年金利は0.6%程度の状況が続いているため、イールドスプレッドが3%より高い水準を維持しているわけだ。
問題は株式市場の期待どおりに景気が回復するかだが、いずれにしても近いうちに一旦、株価が下落する可能性が高そうだ。
というのも、仮に景気回復が“本物”であれば、債券市場が景気回復を織り込む過程で10年金利が上昇しイールドスプレッドが下がる。株の割安さが薄れて売りが膨らむだろう(その場合でも、FRBが追加手段を講じれば株価は早期に回復か)。逆に株式市場の期待に反して景気回復が鈍ければ、当然だが株価は調整を余儀なくされるだろう。
タイミングとしては、早ければ日本時間の27日夜に米ジャクソンホール(カンザスシティ)で行われるFRBパウエル議長の講演が挙げられる。市場では金融緩和にかなり積極的な姿勢を期待しており、講演内容がその期待に届かなければ市場のターニングポイントとなりうる。
逆にパウエル議長の講演が市場の期待以上に緩和的であれば、行き場を失った投資マネーが株式に流入し続ける“コロナバブル”に突入する可能性も指摘されている。その場合でも、遅くとも米大統領選前の調整は想定しておくべきだろう。
というのも、仮に景気回復が“本物”であれば、債券市場が景気回復を織り込む過程で10年金利が上昇しイールドスプレッドが下がる。株の割安さが薄れて売りが膨らむだろう(その場合でも、FRBが追加手段を講じれば株価は早期に回復か)。逆に株式市場の期待に反して景気回復が鈍ければ、当然だが株価は調整を余儀なくされるだろう。
タイミングとしては、早ければ日本時間の27日夜に米ジャクソンホール(カンザスシティ)で行われるFRBパウエル議長の講演が挙げられる。市場では金融緩和にかなり積極的な姿勢を期待しており、講演内容がその期待に届かなければ市場のターニングポイントとなりうる。
逆にパウエル議長の講演が市場の期待以上に緩和的であれば、行き場を失った投資マネーが株式に流入し続ける“コロナバブル”に突入する可能性も指摘されている。その場合でも、遅くとも米大統領選前の調整は想定しておくべきだろう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年08月27日「基礎研レター」)

03-3512-1852
経歴
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
2023年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト
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