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新型コロナ 第2波襲来の脅威-第1 波を上回る大波は来るのか?
基礎研REPORT(冊子版)8月号[vol.281]
保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
* “Reviewing the History of Pandemic Influenza: Understanding Patterns of Emergence and Transmission” Patrick R. Saunders-Hastings and Daniel Krewski (Pathogens v.5(4), 2016 Dec, https://www.mdpi.com/2076-0817/5/4/66)
◆第2波の被害が甚大だったケースも
【スペインかぜ】
1918年に、アメリカで流行開始。主に、春に第1波、秋に第2波、冬から翌年にかけて第3波が襲来した。このうち、第2波がもっとも大きく、世界中に破滅的な大惨事をもたらした。
【アジアかぜ】
1957年に、感染が拡大。春に第1波、11月以降に第2波が襲来。このときも、第2波のほうが大きな被害をもたらした。夏季にも感染は続いていて、秋の学校再開とともに、それが拡大したものと考えられている。
【香港かぜ】
1968~69年に第1波、1969~70年に第2波が起こった。アメリカとカナダでは、死亡者の大半が第1波で発生。ヨーロッパ、アジア諸国では、第2波で多く発生した。2つの波の間にウイルスの変異が発生して、地域ごとに感染率が違ったことが原因とみられている。
◆新型インフルエンザは感染の波に違い
感染が開始したメキシコでは、春、夏、秋の3回の波が到来。回を重ねるごとに、被害の規模は大きくなった。アメリカでは、波が2つあった。新規感染者は、6月のピーク後、一旦減少し、9月に増勢に転じた。10月の第2波のピーク時には、第1波のピークの2倍以上となった。
ヨーロッパ諸国でも、春から夏の第1波の後、秋にそれを上回る被害をもたらす第2波が襲来するパターンがみられた。
アジアでは、インドで、2009年9月、12月、2010年8月と3回の波があった。特に、3回目の波はWHOがパンデミック宣言を解除した後に起こった。中国では、感染の波は、2009年11月をピークとする1回だけだった。入国管理を徹底したことが、第2波を防いだと考えられている。
日本でも、波は、2009年11月がピークの1回だけだった。死亡者が少なく、「日本の奇跡」と言われた。背景として、国民皆保険制度の確立、公衆衛生の徹底、清潔な生活習慣(入浴や食事での箸の使用等)といった要因が指摘されている。
◆新型コロナ感染の「3つのシナリオ」
【シナリオ1】 小波の連続
現在の第1波の後に、少し小さな第2波がやって来る。その後1~2年、こうした波が繰り返しやって来て、やがて小さくなっていくという。
【シナリオ2】 第1波を上回る第2波
スペインかぜやアジアかぜのように、2020年秋から冬に、第1波を上回る第2波が襲来する。そして、2021年以降も小さな波がやって来るという。
【シナリオ3】 明確な波が起こらない
第1波が収まった後、明らかな波は起こらずに、感染は徐々に小さくなる。各地域で感染の拡大と収束を繰り返しながら、流行が続いていくという。
3つのうち、【シナリオ2】は何としても避けたいところだろう。大きな第2波の襲来は、生活や社会経済活動を止めてしまう。何回も小波が来る【シナリオ1】も、好ましくない。波が来るごとに、生活や社会経済活動に制限がかかってしまうからだ。やはり、明らかな波が起こらない【シナリオ3】が望ましいだろう。
4月に緊急事態宣言に至ったときを思い起こすと、3月以降、全国各地でクラスターが発生していた。今後、第2波が襲来する場合も、まずあちこちでクラスターが起こり、それが大きな流行につながっていくというパターンが考えられる。
今回の新型コロナでも、「日本の奇跡」が再現できるかどうか、これからが正念場と言えそうだが、いかがだろうか。
(2020年08月06日「基礎研マンスリー」)
保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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