2020年07月15日

「仙台オフィス市場」の現況と見通し(2020年)~新型コロナウィルスの感染拡大を踏まえた市場見通し

金融研究部 主任研究員   吉田 資

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1. はじめに

仙台のオフィス空室率は、2013年以降、新規供給が限定的であることを反映し、低下傾向で推移している。需給の逼迫に伴い、募集賃料も上昇基調で推移している。一方、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う外出自粛要請並びに緊急事態宣言の発令は、経済活動に対して広範囲にわたって甚大な影響をもたらしている。本稿では、仙台のオフィスの現況を概観した上で、新型コロナウィルスの感染拡大が及ぼす影響を踏まえて、2024年までの賃料予測を行う。
 

2. 仙台オフィス市場の現況

2. 仙台オフィス市場の現況

2-1. 空室率および賃料の動向
三幸エステートによると、仙台市の空室率(2020年7月時点)は4.8%となり、5%を切る低水準で推移している。仙台では、2013年以降、新規供給が限定的であった一方、オフィス需要は、館内(内部)増床や東北エリアの拠点集約などを背景に底堅く、需給環境が逼迫している。空室率を規模1別にみると、2016年以降、規模が大きいビルと中型未満のビルの間で、格差が生じている。2020年7月時点の空室率は、移転集約等を受け皿となる「大規模ビル」が4.0%、「大型ビル」が4.1%であるのに対し、「中型ビル」が6.6%、「小型ビル」が8.1%とやや高水準であった。(図表1)。募集賃料は、需給の逼迫を受けて、上昇傾向で推移しており、2020年7月時点で10,900円/月・坪(前年比+4.3%)となった(図表-2)。
図表-1 仙台オフィスの規模別空室率/図表-2 仙台オフィスの空室率と募集賃料
 
1 三幸エステートの定義による。大規模ビルは基準階面積200坪以上、大型は同100~200坪未満、中型は同50~100坪未満、小型は同20~50坪未満。
2-2. オフィス市場の需給動向
三鬼商事によると、仙台ビジネス地区では、総ストックを表す「賃貸可能面積」は、低水準の新規供給が続いた影響や、築古ビルの取り壊し等が進んだことで、2009年末の45.0万坪から2019年末の46.1万坪へ10年間で1.1万坪増加(年率+0.2%)に留まった。一方、テナントによる「賃貸面積」は、10年連続で増加しており、2009年末の36.7万坪から2019年末の44.2万坪へと10年間で7.5万坪増加(年率+2.0%)した。この結果、仙台ビジネス地区の「空室面積」は2010年末の9.0万坪をピークに減少し、2019年末には1.9万坪となった(図表-3)。
図表-3 仙台ビジネス地区の賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積
ただし足元では、三鬼商事によれば、新型コロナウィルスの影響で店舗閉鎖や利用面積縮小の動きが徐々に広がっている模様であり、「賃貸面積」は43.8万坪に減少し、「空室面積」は2.4万坪と増加に転じている。
図表-4 仙台ビジネス地区の賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積の増減
2-3. 空室率と募集賃料のエリア別動向
2019年末時点で「賃貸可能面積」最もが大きいエリアは、「駅前地区(35.6%)」で、次いで「一番町周辺地区(31.3%)」、「駅東地区(14.4%)」、「県庁・市役所周辺地区(13.3%)」の順となっている(図表-5)。

「賃貸可能面積」は、「駅東地区」(前年比+1千坪)を除いて、前年から増減がなかった(図表-6)。一方、テナントによる「賃貸面積」は、「県庁・市役所周辺地区(前年比+1千坪)」や「駅東地区(+0.9千坪)」、「駅前地区(+0.4千坪)」で増加した。
図表-5 仙台ビジネス地区の地区別オフィス面積構成比(2019年)/図表-6 仙台ビジネス地区の地区別オフィス需給面積増分(2019年)
エリア別の空室率(2020年6月時点)を確認すると、「県庁・市役所周辺地区」が5.8%(前年比▲0.9%)、「駅東地区」が6.2%(同▲0.5%)と改善する一方、「仙台花京院テラス」が竣工した「駅前地区」が4.7%(同+2.2%)、「周辺オフィス地区」が9.6%(同+1.5%)、「一番町周辺地区」が4.0%(同+0.9%)と上昇している(図表-7左図)。

募集賃料は、仙台駅から近い「駅前地区」や「駅東地区」が上昇基調で推移しているに対して、その他のエリアは横ばいで推移しており、エリア間で格差がみてとれる(図表-7右図)。
図表-7 仙台ビジネス地区の地区別空室率・募集賃料の推移(月次)

3. 新型コロナウィルスの感染拡大がオフィス需要に及ぼす影響

3. 新型コロナウィルスの感染拡大がオフィス需要に及ぼす影響

3-1. 就業者数の増加
宮城県の就業者数は、リーマンショックや東日本大震災の影響等を受けて長期的に減少傾向で推移していたが、2012年以降回復に転じており、2019年の就業者は122.5万人(対前年+1.3%)に達した(図表-8)。こうした就業者数の増加がオフィス需要を下支えしてきた。

しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて、雇用環境は急速に悪化している。仙台市経済局・仙台商工会議所「仙台市地域経済動向調査報告」によれば、「増員する」と答えた事業所の割合から「減員する」と答えた事業所の割合「従業員数DI」(2020年第1四半期)は、「正規従業員数DI」で+16.8(前期比▲9.3)、「非正規従業員数DI」で▲0.8(前期比▲14.1)に悪化した。特に、「非正規従業員数DI」は2011年第1四半期以来、10年ぶりにマイナスとなった。(図表-9)。
図表-8 宮城県の就業者数/図表-9 従業員数DI
また、「新型コロナウィルス感染症の影響」に関して、「影響がある」(「現在出ている」または「今後影響が出る懸念がある」)と回答した事業所が9割以上を占めるほか(図表-10)、「実施した対応策」として、「従業員の雇用調整」との回答が19.4%と、最も多かった(図表-11)。事業環境に対する先行き不安から、今後、これまでオフィス需要を支えてきたオフィスワーカー数は減少に向かう可能性が高いと考えられる。
図表-10 新型コロナウイルス感染症の影響/図表-11 実施した対応策
3-2. 働き方改革を背景としたオフィス環境の改善
2016年より始まった「働き方改革」に多くの企業が積極的に取り組んでいる。デロイトトーマツ「働き方改革の実態調査」によれば、「働き方改革を推進中」もしくは「実施した」を回答した企業の割合は、約9割に達した。「働き方改革」の一環でオフィス環境の整備に取り組む企業は多い。従業員満足度の向上、人材採用時の優位性確保などを目的に、好立地な高機能オフィスへの移転を検討する企業は増えていた。

財務省財務総合政策研究所「法人企業景気予測調査(2020 年第2 四半期時点)」によれば、宮城県の「企業の景況判断BSI」は、▲55.4となり、リーマンショック時の2009年第1四半期(▲49.2)を下回った。宮城県の景況感は急速に悪化している(図表-12)。
図表-12 企業の景況判断BSI(宮城県)
景況感が大きく後退したことで、設備投資にも縮小の兆しが見える。帝国データバンク「設備投資に関する東北6県企業の意識調査」によれば、2020年度の設備投資計画に関して、設備投資計画が「ある」との回答割合(「すでに実施した」、「予定している」、「実施を検討中」の合計割合)は52.6%となり、前回(2019 年度・61.4%)および前々回(2018 年度・62.0%)の水準を下回った(図表-13)。また、「予定している設備投資の内容」について、「事業所等の増設・拡大(建替え含む)」との回答は14.4%に留まった(図表-14)。

足もとでは、新型コロナの感染拡大を受けて企業の事業環境が悪化しており、先行きの不透明感も強まっている。今後、企業業績の悪化や設備投資の縮小とともに、オフィス環境の改善を意図して、費用をかけてまで拠点を移転しようとする動きはひとまず鈍化する可能性が高い。三幸エステートによれば、新型コロナウィルスによる業績への影響を懸念し、オフィスの新規開設や拡張移転計画を一旦見直す企業が増えている模様である。
図表-13 設備投資計画/図表-14 予定している設備投資の内容
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

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