2020年07月10日

若者に関するエトセトラ(2)-若者言葉について考える2-推ししか勝たん-

生活研究部 研究員 廣瀨 涼

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■要旨

前回のレポートで筆者は、若者の間で使われる従来の使用方法とは異なる接尾辞“み”について論じた。これは、“新しいみ形”と呼ばれており、例えばやばい、うれしい、といった形容詞には、接尾辞“さ”をつけた「やばさ」「うれしさ」という言葉が以前から使用されてきたが、それが、“み”に置き換えられ、若者言葉においては「やばみ」「うれしみ」と変化しているのである。この背景には語呂がいい点や接尾辞“み”が曖昧さを表すことができるという点が支持されていると述べた。その中で筆者は頻出語として動詞「わかる」に“み”を足した「わかりみ」という言葉を例に挙げ、その用法について論述した。「わかりみ」は主に以下の4つの使用用途がある。
 
(1) 賛同・同意・・・賛同や共感する際に「わかりみ」と反応することで相槌の機能
(2) 了解・把握・・・「わかった」という返答と同義で「わかりみ」が使われる
(3) 共感・理解の強調・・・「わかりみ」の後ろに“深い”、“強い”、“すごい”のように形容詞をつけることで相手の意見に対する共感を強調する
(4) 強い肯定・・・「わかりみ」の後ろに断定を表す“しかない”をつけることで、何かを強く肯定する意味をもつ。
 
(4)強い肯定を表す「わかりみ」+“しかない”は、「わかりみ」の用途の一例である一方で、これは若者言葉である「しかない」という語自体の使用用途でもある。これは、“新しいみ形”と同様にSNSを中心に使用されている若者言葉で、“しかない”や“ない”という言葉を用いて、それ以外にない・疑問の余地がないといったように何かを強く肯定するような場面で使われている。本レポートではこのような断定を表す“しかない”や“ない”を用いた頻出語である「推ししか勝たん」という語に着目し、使用され始めた背景や現状を整理し、若者言葉や若者文化の傾向について論じる。

■目次

1――若者言葉における「断定」とは
2――「推し」とは何か。何に勝つのか。
3――「推ししか勝たん」の持つ意味
4――“推ししか勝たん”の今
5――「推ししか勝たん」の汎用性
6――オタクと若者
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生活研究部   研究員

廣瀨 涼 (ひろせ りょう)

研究・専門分野
消費文化、マーケティング、ブランド論、サブカルチャー、テーマパーク、ノスタルジア

経歴
  • 【経歴】
    2019年 大学院博士課程を経て、
         ニッセイ基礎研究所入社

    ・令和6年度 東京都生活文化スポーツ局都民安全推進部若年支援課広報関連審査委員

    【加入団体等】
    ・経済社会学会
    ・コンテンツ文化史学会
    ・余暇ツーリズム学会
    ・コンテンツ教育学会
    ・総合観光学会

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