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- 異例ずくめの株主総会-新型コロナの影響により運営方法に注目が集まる年に。
コラム
2020年06月25日
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全上場企業の約6割が3月決算企業のため、毎年、定時株主総会は6月に集中する。これは、会社法で定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないと定められており、多くの会社が定款で事業年度末日から3ヶ月以内に定時株主総会を開催すると定めているからである。この3カ月以内の理由は、会社法で、基準日を定めることにより、当該基準日をもって株主名簿に記載されている株主を、株主総会で権利行使することができる株主とすることができるとされ、多くの会社が招集通知等の実務上の利便性から事業年度の末日を基準日としており、また、会社法で基準日の株主が行使することができる権利は,当該基準日から3カ月以内に行使するものに限ると定められているからである。
ただし、今年は新型コロナの影響から、そもそも株主総会が期日までに開催できるかが心配され、開催日程を7月以降に延期、または株主総会を2回にわけて開催する「継続会」も多くの企業が検討したようだ。
しかし、実際に日程の延期や「継続会」の開催を決定した企業はごくわずかであった。基準日の移行により配当を受けとれない投資家が出る懸念や、決算が確定しない状態で役員の選任等について議決権行使を求められるなど、株主への影響が小さくないことが、その理由と考えられる。
2020年の株主総会集中日は6月26日(金)、25日(木)、24日(水)の順に高い。株主への影響を考慮して基準日から3カ月以内の中で、企業ができるだけ長く準備期間を確保しようと開催日程を後ろ倒しにした結果、集中率が例年より高まったと考えられる。
定時株主総会当日の運営に関しても、「バーチャル株主総会」の開催、お土産の中止といった運営上の変革が進んでいることも今年の株主総会の特徴である。数年前からこうした動きはあったが、今回の新型コロナ感染拡大防止策として株主来場者数を絞るため、急速に進んでいるようだ。
もともと「バーチャル株主総会」は、遠方からでも株主総会に参加できるなど、株主総会への参加・出席の機会をより拡大し、企業と株主の建設的な対話を促すことを目的として始まった。新型コロナ対応で実施する企業が増えれば、今後、開催日程の分散や、たとえ開催日が集中していても、株主は今までより多くの企業の株主総会に参加することが可能になるかもしれない。
ただし、株主総会は開催場所を定めなければいけない規定のため、現状では「バーチャル株主総会」のみの開催は認められていない。また、円滑な運営のためには、会社サイドにおいて、株主総会での通信環境の整備や撮影カメラ・音響設備の設置等の運営ノウハウが必要であり、加えて、株主サイドがパソコンやタブレット、インターネット等を活用可能であることが前提とされるなど、普及にはまだまだ課題も多い。しかし、実際の実務の中で現実的に可能な範囲で徐々に取り入れていくことで、変革に向かって少しでも前に進むことが望ましいのではないだろうか。
今回の新型コロナ対応を契機として、今後の株主総会の運営方法の変革が、結果的に企業と株主の対話の拡大につながり、中長期的な企業価値向上に寄与することを期待したい。
ただし、今年は新型コロナの影響から、そもそも株主総会が期日までに開催できるかが心配され、開催日程を7月以降に延期、または株主総会を2回にわけて開催する「継続会」も多くの企業が検討したようだ。
しかし、実際に日程の延期や「継続会」の開催を決定した企業はごくわずかであった。基準日の移行により配当を受けとれない投資家が出る懸念や、決算が確定しない状態で役員の選任等について議決権行使を求められるなど、株主への影響が小さくないことが、その理由と考えられる。
2020年の株主総会集中日は6月26日(金)、25日(木)、24日(水)の順に高い。株主への影響を考慮して基準日から3カ月以内の中で、企業ができるだけ長く準備期間を確保しようと開催日程を後ろ倒しにした結果、集中率が例年より高まったと考えられる。
定時株主総会当日の運営に関しても、「バーチャル株主総会」の開催、お土産の中止といった運営上の変革が進んでいることも今年の株主総会の特徴である。数年前からこうした動きはあったが、今回の新型コロナ感染拡大防止策として株主来場者数を絞るため、急速に進んでいるようだ。
もともと「バーチャル株主総会」は、遠方からでも株主総会に参加できるなど、株主総会への参加・出席の機会をより拡大し、企業と株主の建設的な対話を促すことを目的として始まった。新型コロナ対応で実施する企業が増えれば、今後、開催日程の分散や、たとえ開催日が集中していても、株主は今までより多くの企業の株主総会に参加することが可能になるかもしれない。
ただし、株主総会は開催場所を定めなければいけない規定のため、現状では「バーチャル株主総会」のみの開催は認められていない。また、円滑な運営のためには、会社サイドにおいて、株主総会での通信環境の整備や撮影カメラ・音響設備の設置等の運営ノウハウが必要であり、加えて、株主サイドがパソコンやタブレット、インターネット等を活用可能であることが前提とされるなど、普及にはまだまだ課題も多い。しかし、実際の実務の中で現実的に可能な範囲で徐々に取り入れていくことで、変革に向かって少しでも前に進むことが望ましいのではないだろうか。
今回の新型コロナ対応を契機として、今後の株主総会の運営方法の変革が、結果的に企業と株主の対話の拡大につながり、中長期的な企業価値向上に寄与することを期待したい。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年06月25日「研究員の眼」)
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経歴
- 【職歴】
2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
2015年 ニッセイ基礎研究所入社
2020年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)
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