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コロナ禍で農産物直売利用者が増加~生産の場が日常生活圏にあることのありがたさ
社会研究部 都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任 塩澤 誠一郎
ひとりであれば適当に済ますところだが、子どものためにきちんとした食事を作るようにもなった。そうなると食材にも意識が向くようになり、どうせなら新鮮な野菜を使いたいと思うようになる。
JAが運営している共同直売所に行くことが多くなり、そこでもらった農産物直売所マップを手に、5月の連休にウォーキングを兼ねて、直売所巡りをしてみた。コマツナ、スナップエンドウ、ノラボウナ、ナバナ、タカナ、ナガネギ、サトイモ、カブなどを購入した。新鮮なことは間違いない。スーパーより安い気がする。もちろんおいしい。漬物で目にすることが多いタカナは初めて生で口にし、サラダにも向いていると思ったりするなど、新たな発見もあった。
実はこのような人も増えたようである。知人の農業者から、直売の利用者が大幅に増加していると聞いた。普段から購入している人の利用頻度が上がり、新規の利用者も増えたという。その要因を問うと、普段から利用している人は近所の方が多く、人の多いスーパーに行くのを避けた分、直売の利用頻度が高くなったという。
新規の利用者は二つの傾向があるという。一つは、体力維持と気分転換のために散歩やウォーキングする人が増え、そのついでに直売所が目にとまり購入していくケース。もう一つは、在宅勤務中の人で、通勤していたときは直売所が開いている時間に利用できず、この機会に利用したというケースである。どちらも筆者自身に当てはまり、納得できる。
緊急事態宣言で外出自粛生活が長引く中、直売所で農産物を購入し、調理して食した人は、このような身近に農業がある環境をどのように感じているだろうか。
市街地に農地が点在し、所々に直売所があって、新鮮な作物を身近に得られる。生産者が作物を育てていることで、それを享受することができる。生産者と消費者の物理的距離が近いこと、それが、都市農業の特徴であり、日本の都市の特徴である。コロナ禍の在宅生活という非日常の中で、生産の場が日常生活圏にあることのありがたさを、改めて感じたところである。日常が戻っても変わらない価値として、それが持続していくことを望みたい。
03-3512-1814
- 【職歴】
1994年 (株)住宅・都市問題研究所入社
2004年 ニッセイ基礎研究所
2020年より現職
・技術士(建設部門、都市及び地方計画)
【加入団体等】
・我孫子市都市計画審議会委員
・日本建築学会
・日本都市計画学会
(2020年05月26日「研究員の眼」)
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