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コラム
2019年03月07日
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今、都市農業をめぐる状況は大きく変化しようとしていて、関係するイベント告知を頻繁に目にするようになった。そうした場に参加して感じるのは、当の農業者以上に都市住民の期待が高いことだ。まちなかの農への関心はかつてないほどの高まりと言ってよいだろう。
とはいえ、農業に関心がない層には、フーンといったところかもしれない。では、健康はどうだろう。農に関心がなくても、健康に気を使っている人は多いのではないか。実は農と健康は繋がりが深い。筆者自身それに気付かされたのはつい最近のことだ。
千葉県主催の関係者向け研修会で農を生かしたまちづくりをテーマに講演した際、同県職員の保健師さんから声を掛けられた。こうした機会に聴講者と名刺交換することはよくあるが、保健師は初めてだ。最初はなぜ?と思ったものの、話を伺うとなるほどそうかと合点がいった。
保健師の仕事は市民の健康を守ること。健康にとって食は最も重要で、だからこそ農に関心が向くという。農と食と健康はダイレクトに結びついている。農と健康というとこれまでは、農作業が健康によいといった側面ばかり語られてきた。しかし、そもそも農が生み出す作物が、食を通じて人々の健康を司っている。大方の人がそこで農とつながっているのだ。
もう一つ興味深いのは、保健師が地域に根ざして仕事をしている点だ。公衆衛生の専門家として、人々の健康の背景にある地域社会に目を向け、ときには地域の課題を解決するところから、住民全体に関わる健康問題の改善を図ろうとする。その意味でも、地域の農に関心を持つのは当然と言える。
さすれば、同じく地域に根付いて、地域の環境を意識しながら仕事をする農業者と近しい関係とも捉えられる。お互いの専門性を生かしながら、農を通じて共に地域住民の健康を支える、地域づくりを担っていくことが可能ではないか。それが、都市農業の振興にもつながるはずだ。
ところが、実はこれまであまり接点がなかったそうである。行政の中でも保健と農政の連携はまれだという。そこで今後は、健康づくりを推進する協議会や食育計画の中で、関係を築いていきたいとのことであった。非常に期待するとともに、同様な取り組みが各地に広がってほしいものである。
筆者は以前から、まちづくりの中で農を捉え、地域住民と一緒に農を生かしていくことが重要だと主張してきた。なぜなら地域には、農に対する多様な期待が潜在していて、それに応えて農の新たな可能性を引き出せば、地域の価値・魅力が高まり、農の存在がいっそう重要度を増すと考えているからだ。それには、農を外に向けて開いていく必要がある。開けば、ここで紹介したように、思わぬところから新しいつながりが生まれていくだろう。
農と食と健康というつながりから、改めてそれに気づいたのである。
とはいえ、農業に関心がない層には、フーンといったところかもしれない。では、健康はどうだろう。農に関心がなくても、健康に気を使っている人は多いのではないか。実は農と健康は繋がりが深い。筆者自身それに気付かされたのはつい最近のことだ。
千葉県主催の関係者向け研修会で農を生かしたまちづくりをテーマに講演した際、同県職員の保健師さんから声を掛けられた。こうした機会に聴講者と名刺交換することはよくあるが、保健師は初めてだ。最初はなぜ?と思ったものの、話を伺うとなるほどそうかと合点がいった。
保健師の仕事は市民の健康を守ること。健康にとって食は最も重要で、だからこそ農に関心が向くという。農と食と健康はダイレクトに結びついている。農と健康というとこれまでは、農作業が健康によいといった側面ばかり語られてきた。しかし、そもそも農が生み出す作物が、食を通じて人々の健康を司っている。大方の人がそこで農とつながっているのだ。
もう一つ興味深いのは、保健師が地域に根ざして仕事をしている点だ。公衆衛生の専門家として、人々の健康の背景にある地域社会に目を向け、ときには地域の課題を解決するところから、住民全体に関わる健康問題の改善を図ろうとする。その意味でも、地域の農に関心を持つのは当然と言える。
さすれば、同じく地域に根付いて、地域の環境を意識しながら仕事をする農業者と近しい関係とも捉えられる。お互いの専門性を生かしながら、農を通じて共に地域住民の健康を支える、地域づくりを担っていくことが可能ではないか。それが、都市農業の振興にもつながるはずだ。
ところが、実はこれまであまり接点がなかったそうである。行政の中でも保健と農政の連携はまれだという。そこで今後は、健康づくりを推進する協議会や食育計画の中で、関係を築いていきたいとのことであった。非常に期待するとともに、同様な取り組みが各地に広がってほしいものである。
筆者は以前から、まちづくりの中で農を捉え、地域住民と一緒に農を生かしていくことが重要だと主張してきた。なぜなら地域には、農に対する多様な期待が潜在していて、それに応えて農の新たな可能性を引き出せば、地域の価値・魅力が高まり、農の存在がいっそう重要度を増すと考えているからだ。それには、農を外に向けて開いていく必要がある。開けば、ここで紹介したように、思わぬところから新しいつながりが生まれていくだろう。
農と食と健康というつながりから、改めてそれに気づいたのである。
(2019年03月07日「研究員の眼」)

03-3512-1814
経歴
- 【職歴】
1994年 (株)住宅・都市問題研究所入社
2004年 ニッセイ基礎研究所
2020年より現職
・技術士(建設部門、都市及び地方計画)
【加入団体等】
・我孫子市都市計画審議会委員
・日本建築学会
・日本都市計画学会
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