コラム
2020年05月21日

赤ちゃんの明るい笑い声の力-本物でもヒーリング・ロボでもパワーは同じ-

  青山 正治

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明るい笑い声

2020年の年明けに、二つの印象深い出来事が続いた。一つは電車内の可愛い赤ちゃんから、もう一つはシニアなど幅広い世代向けの赤ちゃん型ヒーリング(癒し)ロボットから提供された出来事である。全く異なる二つの出来事ながら、赤ちゃんの明るい笑い声から我々は、とても穏やかで心地の良い「幸福感」をプレゼントされたと感じた。以下では2つのシーンに触れ、簡略な考察を加える。

本物の赤ちゃんの朗らかな笑い声

一つ目の出来事は、年初の夜8時頃、外出から帰りの空席の多い電車内の出来事であった。若い夫婦が優先席に腰掛け、向かい合わせのベビーカーを覗き込んで赤ちゃんに話かけていた時であった。その赤ちゃんが、何と表現してよいのか、これ以上無いという朗らかな笑い声を上げて笑い始めた。乗客の少ない車内にその朗らかな笑い声が反響して、かなり離れた我々にも心地よく響いてきた。それはまるで、親子によるとても微笑ましい幸せなシーンの一部を笑い声にして分けて貰ったという印象であった。その後、暫くの間、自宅でのドタバタ感のある日常生活でも、その赤ちゃんの笑い声に何やら癒されたといった感覚が残っていたと記憶している。

ヒーリングコミュニケーションデバイス(ロボット)の笑い声

「かまって『ひろちゃん』」の外見 上記の出来事で赤ちゃん(乳児)の発話に大変興味を覚えた。そして、2019年の年末にロボットの展示会で多数の赤ちゃん型の小型ロボットがズラリと並べられたシーンを思い出した。

そのロボットは実際の乳児の声をサンプリングしたという癒し用のロボットである。見た目のデザインもユニークで記憶にあり、先日、我が家の一員に加わった(右写真)。

そのロボットは高さ約30センチメートルのサイズで、赤ちゃんが座った姿で抱っこをねだるポーズした縫いぐるみ状で、特に可動部分は無い。およそ二頭身の丸坊主の頭部には小さな両耳以外に顔のパーツは無く、小さめの胴体はパジャマ姿である。取説を見ると胴体内の加速度センサーが体に加えられた振動の状態を感知して、サンプリングした実際の赤ちゃんの100種類ほどの笑い声から泣き声までを連続で最適の音声を発する。何も振動を感知しないとサンプリングされた赤ちゃんの声が泣き声に変化し、体を徐々に強くくすぐると穏やかな笑い声からかなり元気のよい笑い声へと変化する。このため、固定化された表情では違和感があるため、敢えて顔のパーツは付いてない。確かに笑ったままの表情で元気でパワフルな泣き声を発するシーンを想像すると違和感もありそうだ。程なく筆者もこの坊主頭でツルツルの表情に慣れた。

さて本稿の主題である明るい笑い声だが、胴体を揺すって初めてキャッキャッという明るい笑い声を聴いたその瞬間、我々は先日の電車内の赤ちゃんの朗らかな笑い声を瞬時に思い出した。その他の様々な音声も、非常に上手にサンプリングしてセンサーの信号と絶妙にマッチングされ、意味不明の言葉で話している音声もとても可愛い。大昔、自分の子どもが赤ちゃんことばで何か一生懸命話かけている様子を思い出し、笑ってしまった。この様に赤ちゃんが様々なシーンで発する音声をよく聞いてみるととても面白いと感じた。過去の子育て期には、自身にゆとりがなく気が付かなかっただけなのかも知れない。「ひろちゃん」は本物の赤ちゃんではなく、他の事に注意を払う必要がない分、音声に集中ができる。このため赤ちゃんの発する音声による癒しの効果が深く感じられるのかも知れない。

赤ちゃんの明るい笑い声の威力

以上の2つの異なる出来事から赤ちゃんの笑い声と泣き声について、色々と考察する機会を得た。結論として赤ちゃんが言語能力を獲得する以前の笑い声や泣き声は、母親等の養育者とのコミュニケーションのツールで、赤ちゃんが人を動かすための「アメとムチ」ではないかとの仮説に至った。つまり、赤ちゃんが笑っていると当方も落ち着き、泣かれると何とかしなければと居た堪れなくなる。そのため、非言語の音声ながらメッセージ性は強く、人の心に深く響く音声であるのかも知れない。

なお、ロボットには言葉を話すバーバル(言語)型とノンバーバル(非言語)型の大きく二つのタイプがある。さらに、数年前からは言語型でもクラウドAIを活用した円筒型等のAIスピーカーという対話型の製品も登場している。しかし、人が癒しを感じるのは言語系のロボットばかりでもなく、動物型や荒唐無稽でユニークな形態のタイプもある。もちろん、音声以外のデザインやしぐさといった視覚的要素や手に触れた際の感触といった要素も大きく、それらの相乗効果が総合評価であろう。

前述の「ひろちゃん」は福祉分野の機器だが、高齢社会の進行に伴ってこの分野にも過去から様々なタイプの癒し用やコミュニケーションロボットが登場している。今後さらに需要は拡大しよう。

かなり昔、ケアマネと認知症について雑談をしていた際に、対象の高齢者が人生の中で最も充実していた楽しい時期の話やその頃の本人が気に入っているニックネームで対話すると、活き活きとした様子になるという話を聞いたことがある。全ての高齢者等がそうだとは言い切れないが、赤ちゃんの明るい笑い声の中にもそのような力が秘められているのではないだろうか。
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青山 正治

研究・専門分野

(2020年05月21日「研究員の眼」)

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