2020年05月12日

新型コロナ感染予防に対する企業の取り組みー被用者に対するアンケート調査より

基礎研REPORT(冊子版)5月号[vol.278]

保険研究部 准主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任   村松 容子

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新型コロナウイルスの感染が拡大し続けている。企業における対策に関連して、2月21日、厚生労働省は、日本経済団体連合会、日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会といった経済団体へ、職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けて、労働者が発熱などの風邪の症状が見られる際に、休みやすい環境や労働者が安心して休むことができるよう収入に配慮した病気休暇制度の整備、感染リスクを減らす観点からテレワークや時差通勤の積極的な活用の促進などの取り組みへの協力を要請した。3月2日には、全国の小中学校と高校、特別支援学校に臨時休校が要請され、子どもをもつ従業員への対応も必要となった。
 
大阪商工会議所のまとめによると、時差出勤とテレワークの実施率は、資本金3億円超の大手企業では、それぞれ83.0%、54.7%が実施している一方で、資本金3億円以下の中小企業では、それぞれ20.7%、9.5%にとどまっており、企業規模による差があったとされている。また、非正規雇用者の契約打ち切りや新規採用者の内定取り消し等の問題も新聞等で報道されている。
 
ニッセイ基礎研究所では、2020年2月28日から被用者を対象とした「働き方と健康に関するアンケート調査」を実施した*1。本稿では、3月9日までに回収されたデータ3,126サンプルから企業規模や業種、通勤手段、地域による違いを紹介する。なお、今回の調査対象には非正規の就労者も含まれているが、フルタイム就労者を想定した調査であり、所定労働時間はおよそ9割が7~8時間だった。

1―取り組みの最多は「オフィスに消毒液の設置」。何の取り組みもない勤務先も4割

まず、勤務先が実施している*2 取り組みをみると、調査対象者の55.9%が勤務先でなんらかの取り組みを実施していると回答した。取り組みの内容としては、「オフィスに消毒液の設置」が34.9%で最も高く、次いで「会社イベントの中止・延期(24.0%)」「セミナー、打ち合わせ等の制限(21.0%)」、「時差出勤(18.5%)」が続いた。なんらかの取り組みを行っている勤務先は、今回提示した取り組み11個中、平均3.10個を実施していた。一方、44.1%が「とくにない」と回答しており、取り組みを実施している企業と、していない企業で差があった。
企業属性別実施状況

2―取り組み実施は企業規模で大きな差

企業規模別にみると、規模が大きくなるほど「なんらかの取り組みあり」が高く、300名未満の企業では半数以上が何の取り組みも行っていなかった。
 
全体で最も実施率が高かった「オフィスに消毒液の設置」は、いずれの規模の企業でも最も高かった。規模の小さい企業では「マスク配布」が、規模の大きい企業では「会社イベントの中止・延期」が高い傾向があった。公務員では、地方公務員の方が国家公務員よりも取り組んでいる割合が高かった。両者を比較すると、地方公務員で高かったのは「オフィスに消毒液の設置」「会社イベントの中止・延期」であり、国家公務員で高かったのは「時差出勤」「テレワーク」だった。
 
地域別では大きな差はなかったが、東京・神奈川・千葉で「時差出勤」「テレワーク」が他地域より高かった。2月28日に緊急事態宣言を行った北海道は、取り組みを実施している勤務先が多く、「飲み会等個人的なイベントの自粛」が23.7%、「出勤停止・自粛」が11.5%と他の地域と比べて高かった。
 
なお、「海外に拠点がある」「海外企業との業務上のやりとりが頻繁」「勤務先企業には外国人が多い」といった企業、および従業員の健康増進に熱心な企業で、対策が行われている割合が高かった。

3―テレワークや時差出勤は、管理職・マネジメント、技術系専門職で導入されている

続いて、回答者の雇用形態や役職でみると、一般社員・職員、契約社員、派遣社員では大きな差はなく、管理職以上で実施している取り組みを多く回答していた。
 
職種でみると、管理職・マネジメントで取り組み実施率が特に高かった。今回の調査では、実施のための議論をしている場合も含めて回答してもらったため、管理職の方が勤務先の取り組みについて多くの情報を持っている可能性があること、会社イベントの中止や延期は管理職に徹底されている可能性があること、「時差出勤」や「テレワーク」等では管理業務の方が導入しやすい可能性があることが考えられる。「時差出勤」は、管理職・マネジメントの他、事務系専門職や技術系専門職でも高く、「テレワーク」は技術系専門職でも高かった。
 
人と接することが多いと思われる医療福祉、教育関係の専門職、営業職、販売職、接客サービス職のうち、「マスクの配布」は営業職で高く、医療福祉、教育関係の専門職、販売職、接客サービス職は「時差出勤」「テレワーク」の実施率が低かった。医療福祉、教育関係の専門職は、「マスクの配布」「オフィスに消毒液設置」のいずれかを実施している割合が高かった。
 
「時差出勤」や「テレワーク」は大都市に居住しており公共交通機関で通勤する被用者で特に高かった。
被用者属性別情報

4―人と接する職種で取り組みが行き届いていない可能性

以上みてきたとおり、3月上旬における感染予防のための企業の取り組みの実施状況は、規模だけでなく、職種や従業員の通勤手段でも大きな差があった。
 
4月以降は、感染の拡大とともに、通常どおりの業務を継続することができない企業が増えていると思われる。一方で、これまでどおりの業務遂行が求められる被用者もいる。人と接することが多い職種では、そもそも感染リスクが高いうえ、テレワークや時差通勤等の実施で人と接する機会を減らすことが難しく、予防がしづらいと思われる。テレワークや時差通勤等の導入だけでなく、人と接する職種の従業員を守るための対策を別途検討する必要があるだろう。
 
*1 ニッセイ基礎研究所「2019年度 被用者の働き方と健康に関する調査」全国18~64歳の男女被用者を対象とするインターネット調査。2020年2月28日より実施。本稿では、3月9日までに回収された3,126サンプルを対象に分析した。
*2 実施のための議論をしている場合を含む
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保険研究部   准主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療

(2020年05月12日「基礎研マンスリー」)

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