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- 貸出・マネタリー統計(20年3月)~預金へのシフトが進行、銀行貸出は4月以降加速か
2020年04月13日
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1. 貸出動向:実質的には若干加速か
新型コロナウィルスの感染拡大に伴う景気の急減速、企業の資金繰り悪化を受けて、政府は銀行に対して企業の資金繰りを支援するよう要請しているが、3月の段階では貸出動向に殆ど変化はみられない。
ただし、過去の経済危機時を振り返ると、2009年のリーマンショックや2011年の東日本大震災の後も資金繰り支援等によって銀行貸出が伸び率を拡大した経緯がある(図表4)。現在、銀行は貸付先等から多くの支援要請を受けているとみられることから、4月以降は貸出増加ペースの加速が予想される。
ただし、過去の経済危機時を振り返ると、2009年のリーマンショックや2011年の東日本大震災の後も資金繰り支援等によって銀行貸出が伸び率を拡大した経緯がある(図表4)。現在、銀行は貸付先等から多くの支援要請を受けているとみられることから、4月以降は貸出増加ペースの加速が予想される。
2.マネタリーベース: 特殊要因で減少も、実質的には増勢加速
4月2日に発表された3月のマネタリーベースによると、日銀による通貨供給量(日銀当座預金+市中に流通する紙幣・貨幣)を示すマネタリーベースの前年比伸び率(平残)は2.8%と、前月(同3.6%)をかなり下回った(図表6)。日銀券(紙幣)発行高、貨幣流通高の伸びがやや低下した影響もあるが、何よりマネタリーベース全体の約8割を占める日銀当座預金の伸び率が前年比3.0%(前月は4.0%)と大きく低下したことが影響した(図表7)。
また、3月末時点のマネタリーベース残高は510兆円と前月末比で6.1兆円減少した。季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ても前月比3.4兆円減と2011年12月以来の減少幅を記録している(図表8)。日銀は新型コロナ拡大に伴う市場の混乱への対応として長期国債の買い入れを活発化した(7.7兆円、前年比2.2兆円)。しかし、一方でレポ市場の安定化のために国債売現先を実施したほか、大規模なドル資金供給オペ実施に伴う担保用の国債供給を行ったため、結果的にそれぞれ4.0兆円、19.2兆円の資金が吸収された。こうした特殊要因を除けば、マネタリーベースの増勢は加速していたと思われる。
また、3月末時点のマネタリーベース残高は510兆円と前月末比で6.1兆円減少した。季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ても前月比3.4兆円減と2011年12月以来の減少幅を記録している(図表8)。日銀は新型コロナ拡大に伴う市場の混乱への対応として長期国債の買い入れを活発化した(7.7兆円、前年比2.2兆円)。しかし、一方でレポ市場の安定化のために国債売現先を実施したほか、大規模なドル資金供給オペ実施に伴う担保用の国債供給を行ったため、結果的にそれぞれ4.0兆円、19.2兆円の資金が吸収された。こうした特殊要因を除けば、マネタリーベースの増勢は加速していたと思われる。
3.マネーストック: 預金へのシフトが進行、投資信託は急減速
4月13日に発表された3月のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨総量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比3.31%(前月は2.96%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同2.72%(前月は2.44%)とともに大きく上昇した。伸び率の上昇はともに5ヵ月連続となる(図表10)。最近では銀行貸出の伸びが底入れしているほか、経常収支の黒字(前年比)が拡大しており、マネーストックの伸びに繋がっていると考えられる。
M3の内訳では、現金通貨(前月1.90%→当月1.75%)の伸び率はやや低下したが、普通預金等の預金通貨(前月6.64%→当月6.94%)の伸び率が上昇し、全体の伸びをけん引した(図表11)。また、CD(譲渡性預金・前月▲0.03%→当月2.16%)の伸びもプラスに転じたほか、定期預金などの準通貨(前月▲2.55%→当月▲2.43%)のマイナス幅もやや縮小した。
M3の内訳では、現金通貨(前月1.90%→当月1.75%)の伸び率はやや低下したが、普通預金等の預金通貨(前月6.64%→当月6.94%)の伸び率が上昇し、全体の伸びをけん引した(図表11)。また、CD(譲渡性預金・前月▲0.03%→当月2.16%)の伸びもプラスに転じたほか、定期預金などの準通貨(前月▲2.55%→当月▲2.43%)のマイナス幅もやや縮小した。

内訳では、既述の通り、M3の伸び率が大きく上昇したものの、投資信託(私募やREITなども含む元本ベース前月10.4%→当月4.5%)の伸びが急減速し、金銭の信託(前月3.0%→当月2.9%)、金融債(前月▲6.6%→当月▲8.0%)、国債(前月▲2.4%→当月▲2.7%)の伸び率も低下したことで相殺された(図表12)。
マネーストック全体では、リスク性資産への資金流入が鈍化し、普通預金へのシフトが進んだ形になっている。新型コロナウィルスの感染拡大とそれに伴う経済活動の大幅な減速を受けて、企業や家計の間で流動性と安全性の高い預金に対する選好が強まった可能性が高い。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年04月13日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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