2020年03月06日

2020年度の金融市場を読む~注目テーマと展望

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
  1. 新型肺炎の拡大により、内外経済と金融市場の様相が一変した。改めて今後の市場の注目テーマを俯瞰すると、グローバルな材料としては、「新型肺炎の動向と影響」、「米大統領選の行方」、「米中貿易摩擦の行方」が、国内については、「増税後の景気と新型肺炎の動向(五輪開催)」、「衆議院解散・総選挙の可能性と安倍政権の行方」が挙げられる。
     
  2. このうち最重要テーマは、新型肺炎の動向と影響だ。筆者は感染症の専門性を持ち合わせていないが、新型肺炎の拡大は止まる気配が見られないことから、当面続くと見込まれる。また、感染拡大後の2月以降の経済指標がこれから内外で公表されることから、市場の懸念は一旦さらに高まる可能性が高い。来月にかけて、日経平均は20000円を割り込む場面もあるだろう。その後は、メインシナリオとして4-6月に終息に向かうと見込んでいる。新型肺炎が終息すれば、内外の経済活動は順調に回復するはず。また、国内では増税後の反動減が緩和するうえ、五輪も無事開催にこぎつけることで、夏場にかけて株価も順調に持ち直すと見ている。米大統領選については、トランプ再選がメインシナリオと見ている。この場合、大統領選後には、前回同様、不透明感の緩和や再選を好感する形の株高が予想される。年度末の日経平均は23000円台と予想している。ドル円も当面は1ドル105円を割り込む場面もありそうだが、新型肺炎が終息すれば、やや円安方向に戻るだろう。さらに、秋以降はトランプ大統領再選に加え、FRBの利上げ再開を受けたドル買いが予想される。年度末のドル円レートは110円台と予想している。
     
  3. ただし、新型肺炎の動向を見通すことは極めて困難であるため、不確実性が高い点は否めない。仮に新型肺炎の拡大が夏以降も続き、世界経済への悪影響も拡大を続ければ、株価は19000円を、ドル円も100円を大きく割り込む事態になりかねない。
2020年度の主なスケジュール(見込み)
■目次

1.トピック:2020年度の金融市場を読む
  ・年初の市場動向
  ・2020年度の注目テーマ
  ・メインシナリオと下振れリスク
2.日銀金融政策(2月):新型肺炎の影響に「最大限の注意を払う」
  ・(日銀)維持(開催なし)
  ・今後の予想
3.金融市場(2月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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