2020年03月31日

鉱工業生産20年2月-2月までは持ち直しも、新型コロナの影響で3月以降の急減産は不可避

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.2月の生産は3ヵ月連続の上昇

経済産業省が3月31日に公表した鉱工業指数によると、20年2月の鉱工業生産指数は前月比0.4%(1月:同1.0%)と3ヵ月連続で上昇し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比0.1%、当社予想は同▲0.9%)を上回る結果となった。出荷指数は前月比2.6%と3ヵ月連続の上昇、在庫指数は前月比▲2.0%と3ヵ月ぶりの低下となった。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 2月の生産を業種別に見ると、中国の生産停止に伴う部品供給の停滞により一部の自動車メーカーが工場の操業停止を余儀なくされたことから、自動車が前月比▲2.4%の低下となったが、グローバルなITサイクルの底入れを受けて、電子部品・デバイスが前月比10.7%の大幅増産となったことが生産全体を押し上げた。
財別の出荷動向 財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は19年10-12月期の前期比▲6.2%の後、20年1月が前月比▲5.2%、2月が同0.7%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は19年10-12月期の前期比▲3.8%の後、20年1月が前月比▲1.5%、2月が同3.8%となった。20年1、2月の平均を19年10-12月期と比較すると、資本財(除く輸送機械)は0.7%高いが、建設財は▲0.5%低い水準となっている。3月の資本財(除く輸送機械)、建設財の生産見込みはそれぞれ前月比▲10.7%、同▲7.9%の大幅減産となっているため、1-3月期の資本財出荷(除く輸送機械)、建設財出荷はいずれも前期比でマイナスとなる可能性が高い。

消費財出荷指数は19年10-12月期の前期比▲5.8%の後、20年1月が前月比4.5%、2月が同1.1%となった。20年1、2月の平均は19年10-12月期よりも3.3%高い水準となっている。

消費税率引き上げ後の消費関連指標を確認すると、19年10月に駆け込み需要の反動に台風19号の影響が加わり大きく落ち込んだ後、11月以降は緩やかな持ち直しが続いてきたが、2月は百貨店を中心に弱めの動きとなった。3月の消費は各種イベント、会合の中止、外出自粛の影響などから大幅に落ち込むことが見込まれる。

GDP統計の民間消費は、消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動などから、19年10-12月期に前期比▲2.8%の大幅減少となった。現時点では、20年1-3月期は2四半期連続の減少となることを予想している。

2.1-3月期は3四半期連続の減産へ

製造工業生産予測指数は、20年3月が前月比▲5.3%、4月が同7.5%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(2月)、予測修正率(3月)はそれぞれ▲3.2%、▲1.4%であった。
最近の実現率、予測修正率の推移 今回の予測指数は3/10時点で調査されており、新型コロナウィルスの影響がある程度反映されているが、状況はその後一段と深刻化している。もともと実際の生産は計画を下回る傾向があるが、3月以降の下振れ幅は通常よりも大きくなる公算が大きい。

20年2月の生産指数を3月の予測指数で先延ばしすると、20年1-3月期の生産は前期比0.0%となる。1-3月期の生産は19年10-12月期(前期比▲4.1%)に比べればマイナス幅は縮小するものの、3四半期連続の減産となることが見込まれる。

鉱工業生産は3ヵ月連続で上昇したが、依然として消費税率引き上げ前の水準を大きく下回っており、持ち直しのペースは緩やかにとどまっている。現時点では、新型コロナウィルスの感染拡大による国内需要の落ち込みは旅行、外食などのサービスが中心となっているため、鉱工業生産への影響は限定的にとどまっている。しかし、3月以降は世界各国の工場停止に伴うサプライチェーン寸断の影響で大きく落ち込むことは避けられないだろう。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2020年03月31日「経済・金融フラッシュ」)

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