2020年01月09日

NY金が乱高下、今後の行方は?

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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2.日銀金融政策(12月):「緩和方向を意識した政策運営」を維持

(日銀)維持
日銀は12月18日~19日の会合において金融政策を維持した。前回10月の会合で「物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定」へと強化した政策金利に関するフォワードガイダンス(以下、FG)も変更しなかった。声明文における景気の総括判断は「基調としては緩やかに拡大」に据え置いたものの、生産の判断を下方修正する一方で、公共投資の判断を上方修正した。
 
会合後の総裁会見において、黒田総裁は(米中協議での部分合意や英総選挙の結果を受けて)海外のリスクについては「若干明るい方向への動きがある」としつつも、「依然として海外経済のリスクは全体として高い水準にあり、警戒を要する」との見方を示し、「引き続き、緩和方向を意識した政策運営を行っていくことが適当」との考えを表明した。消費増税の影響については「これまでのところ、2014年4月の前回の消費税率引き上げのときほどは大きくないということに変わりはない」と評価した。

今後の選択肢として、マイナス金利深堀りについても「金融政策として必要な事態となれば十分あり得る」と、その可能性を否定しなかった一方で、金融緩和継続による金融システム等への副作用の説明にもかなりの時間を割き、十分注視していく姿勢を強調した。

なお、先日IMFから「10 年物よりも短い金利をターゲットにする」ことを提案されたことについては、「今、そういうことをする必要もないし適切でもない」と当面の可能性を否定する一方で、「将来、そういうことが絶対ないかと言われると、それは今後の経済・物価・金融情勢によって、金融政策決定会合において決めていくこと」と述べ、将来変更する可能性は排除しなかった。
短期政策金利の見通し/長期金利誘導目標の見通し
(今後の予想)
日銀はもともと追加緩和余地が乏しく、副作用への警戒を要する状況にある。また、昨年終盤以降、海外情勢に一部前向きな動きが現れたことで景気・物価の下振れ圧力に対応する必要性も低下している。従って、日銀は今後とも追加緩和を出きる限り回避し、適宜FGを強化する程度の措置に留めるだろう。

一方、今後もし大幅な円高が進行したり、内外景気が失速したりする場合には、日銀も動かざるを得なくなる。この際には、緩和の打ち止め感や副作用増大を覚悟のうえで、マイナス金利深堀り(副作用緩和策とセットで)を主軸とする本格的な追加緩和に踏み切ることになると見ている。
 

3.金融市場(12月)の振り返りと予測表

3.金融市場(12月)の振り返りと予測表

(10年国債利回り)
12月の動き 月初-0.0%台半ばでスタートし、月末は-0.0%台前半に。
月初、中国経済指標の改善や低調な国債入札結果を受けて3日に-0.0%台前半に上昇。5日には米中協議への懸念から一旦-0.0%台半ばへ低下したが、翌6日には弱い入札結果を受けて再び-0.0%台前半に上昇。しばらく膠着した推移に。その後、米中協議が「第1段階の合意」に至ったほか、英総選挙での保守党勝利で合意なき離脱のリスクが後退したことで安全資産需要が減少、スウェーデン中銀のマイナス金利解除を受けた欧州金利上昇もあり、20日には0.0%台と9ヵ月ぶりにプラス圏に浮上した。ただし、その後は米金利が伸び悩んだうえ、プラス圏での投資家による強い国債需要もあり、25日には再び-0.0%台前半に低下。月末にかけて同水準で推移した。
日米長期金利の推移(直近1年間)/日本国債イールドカーブの変化
日経平均株価の推移(直近1年間)/主要国株価の騰落率(12月)
(ドル円レート)
12月の動き 月初109円後半でスタートし、月末は109円台前半に。
月初、米経済指標の悪化や米中協議の長期化懸念を受けて円高が進み、4日には108円台後半に。しばらく、膠着した展開が続いた後、13日には米中協議が「第1段階の合意」に至ったうえ、英総選挙での保守党勝利で合意なき離脱のリスクが後退したことを受けてリスクオンの円売りが入り、109円台半ばに上昇した。その後は、欧米投資家がクリスマス休暇に入る中、109円台半ば付近での動意に乏しい推移が継続。月終盤には、対ユーロでのドル安がドル円に波及したほか、年末に向けたポジション調整のドル売りが入り、109円台前半で終了した。
ドル円レートの推移(直近1年間)/ユーロドルレートの推移(直近1年間)
(ユーロドルレート)
12月の動き 月初1.10ドル台前半でスタートし、月末は1.12ドル台前半に。
月初、米経済指標の悪化を受けて3日に1.10ドル台後半に上昇し、しばらく同水準での推移が継続。その後、FOMCを受けて米低金利政策の長期化観測が強まった一方で、ラガルドECB総裁会見がユーロ圏経済の先行きに対してやや楽観的と受け止められたことで、12日には1.11ドル台半ばに上昇した。下旬には良好な米経済指標を受けて23日に1.11ドルの節目を割り込んだが、米中の「第1段階の合意」に伴って欧州景気の先行き不安が後退したうえ、米株高に伴うリスク選好的なユーロ買いが発生したことでユーロドルは上昇し、月末は1.12ドル台前半で終了した。
金利・為替予測表(2020年1月9日現在)
 
 

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

(2020年01月09日「Weekly エコノミスト・レター」)

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