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- 原油相場でくすぶる急変動のリスク
2019年11月01日
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■要旨
- 原油価格(WTI先物)は5月下旬以降、50ドル台半ばを中心とする安定した推移を見せている。ただし、需要・供給のそれぞれに大きな不確実要因を抱えている。
- 原油需要サイドの大きな不確実要因は米中貿易摩擦だ。その悪影響によって世界経済の減速は顕著になってきており、原油需要の押し下げに繋がっている。今後、米中協議で本格的な合意が為されるのか、それとも、協議が決裂し、さらなる関税引き上げ合戦に陥るのかによって原油需要は多大な影響を受けることになるが、不透明感は強い。
- 原油供給サイドの大きな不確実要因は中東の地政学リスクだ。9月にサウジの石油施設が攻撃を受けて大規模な生産停止が発生したことで、原油価格が一時的に急騰した。今後もこうした武力攻撃による生産減少リスクは高い。もし大規模な生産停止が発生し、復旧に時間を要する事態となれば、原油価格は今回以上に高騰・高止まりするだろう。
- こうした需給の変動に対して調整弁がうまく機能すれば、需給バランスは保たれるが、調整弁役と目される米シェールオイルやOPECプラスの動向にも不確実性がある。シェールオイルの生産には多くの要素が絡むため、原油需給や価格との関係が不安定だ。OPECプラスによる生産調整は世界の需給バランスの調整に大きく寄与してきたが、各国の利害が大きく絡んでくるだけに、今後、迅速かつ適切な合意形成が出来ないおそれもある。
- 今後来年にかけての原油市場について、筆者の中心的な見通しとしては、需給バランスの大幅な偏りは避けられ、原油価格も現状と大差ない50ドル台前半~後半で推移すると見込んでいる。ただし、既述のとおり、需要・供給のそれぞれに大きな不確実要因を抱えており、調整弁もうまく機能しないおそれがあるだけに、需給バランスが急激にタイト化したり緩和化したりすることで、価格が急変動するリスクも高いと言わざるを得ない。目先では、米中首脳会談で部分合意の署名が行われるか?12月半ばに予定されている米政権による追加関税第4弾が実行されるか?12月上旬に開催されるOPEC総会ならびにOPECプラス会合で減産拡大が決定されるか?という点が注目される。
- 仮に今後、原油価格が大幅に下落した場合には、産油国経済の減速懸念やオイルマネーによる株売りなどから世界的に株価が下落し、リスクオフの円高が進みかねない。一方、逆に原油価格が急騰した場合にも、産油国を除く多くの国々にとって逆風になるため、株安・円高が発生するだろう。「原油価格の安定が続くか否か」は、世界経済や金融市場全体にとって重要性が高い。
■目次
1.トピック:原油相場でくすぶる急変動のリスク
・原油市場は50ドル台で安定的に推移
・需要サイド:米中貿易摩擦と世界経済減速懸念
・供給サイド:地政学リスクに伴う供給減
・需給調整弁:機能しないおそれも
・原油相場が市場全体に大きな影響を与える可能性も
2.日銀金融政策(10月):追加緩和を見送り(ガイダンス強化のみ)
・(日銀)維持(フォワードガイダンスを強化)
・今後の予想
3.金融市場(10月)の振り返りと予測表
・10年国債利回り
・ドル円レート
・ユーロドルレート
1.トピック:原油相場でくすぶる急変動のリスク
・原油市場は50ドル台で安定的に推移
・需要サイド:米中貿易摩擦と世界経済減速懸念
・供給サイド:地政学リスクに伴う供給減
・需給調整弁:機能しないおそれも
・原油相場が市場全体に大きな影響を与える可能性も
2.日銀金融政策(10月):追加緩和を見送り(ガイダンス強化のみ)
・(日銀)維持(フォワードガイダンスを強化)
・今後の予想
3.金融市場(10月)の振り返りと予測表
・10年国債利回り
・ドル円レート
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(2019年11月01日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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