- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 金融・為替 >
- 金融市場・外国為替(通貨・相場) >
- 楽観モードの揺り戻しに注意~マーケット・カルテ11月号
2019年10月21日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大

ただし、今回の部分合意は、「比較的容易な領域でとりあえず合意し、摩擦の激化が一旦先送りされた」に過ぎず、摩擦解消の道筋が開けたわけではない。両国の主張の隔たりは依然大きく、今後も一筋縄では行きそうにないうえ、今回見直されなかった既往の追加関税が世界経済の重荷になり続ける。従って、今後は一旦楽観の揺り戻しによる円高方向への調整局面を迎えると見ている。金融政策面では、FRBによる今年3回目の利下げは市場で織り込み済みだが、日銀が本格的な追加緩和を見送ると予想されることも円高反応に繋がるだろう。
一方で、来年年初に米大統領選モードへ突入することを踏まえると、トランプ大統領に残された時間は限られている。早ければ年末に摩擦の緩和に繋がる合意に向けた動きが現れ、ドル円は持ち直す可能性が高いと見ている。3カ月後の水準は現状程度と予想している。
ユーロ円は、今月、米中部分合意に伴うリスクオンの円売りに加えて、英国とEUとの離脱交渉進展・離脱案合意に伴うユーロ買いを受けて大幅に上昇し、足元では120円台前半で推移している。今後は利益確定的なユーロ売り圧力が予想されること、米中協議が一筋縄ではいかないとみられることなどから、ドル円同様、一旦円高方向への揺り戻しが予想される。ユーロ圏の景気低迷が続くこともユーロの重荷になる。ドル円同様、年末頃からは円安方向に向うものの、3カ月後の水準は現状比でやや円高ユーロ安に留まると見ている。
長期金利は、今月、日銀による国債買入れ減額方針とリスクオンの流れを受けて上昇し、足元は▲0.14%付近で推移している。今後は為替同様、米中協議等を材料に一旦調整で低下した後、年末頃にはリスクオンで持ち直す展開を予想しているが、世界的な金融緩和の流れはしばらく続き、金利の持ち直しを抑制する。日銀も大幅な国債買入れ減額を続けることは出来ないことから、3カ月後は現状より若干低い水準に留まると見ている。
(執筆時点:2019/10/21)
(2019年10月21日「基礎研マンスリー」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
上野 剛志のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/08/22 | 米利下げ再開が視野に、円高進行の目途は?~マーケット・カルテ9月号 | 上野 剛志 | 基礎研マンスリー |
2025/08/12 | 貸出・マネタリー統計(25年7月)~銀行貸出が連月で急増、定期預金も増勢を拡大中 | 上野 剛志 | 経済・金融フラッシュ |
2025/08/04 | 長期金利1.6%到達は通過点か?~今後の金利見通し | 上野 剛志 | Weekly エコノミスト・レター |
2025/07/23 | 参院選・日米関税合意を受けて円相場はどう動く?~マーケット・カルテ8月号 | 上野 剛志 | 基礎研マンスリー |
新着記事
-
2025年09月03日
増え行く単身世帯と消費市場への影響(4)-教養娯楽・交際費から見る「自分時間」「人間関係」「自己表現」への投資 -
2025年09月03日
DC制度運営の再点検を -
2025年09月03日
成立した年金制度改正が将来の年金額に与える影響 -
2025年09月03日
日本の人的資本投資の現状と課題 -
2025年09月03日
外国人が支える人口動態~多言語対応等の居住支援が喫緊の課題
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【楽観モードの揺り戻しに注意~マーケット・カルテ11月号】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
楽観モードの揺り戻しに注意~マーケット・カルテ11月号のレポート Topへ