2019年12月10日

EIOPAがソルベンシーIIの2020年レビューに関するCPを公表(5)-ボラティリティ調整について(その1)-

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(3) オプション3:資産主導型アプローチ
資産と技術的準備金の修正に関する様々な可能性の組み合わせは、資産主導型アプローチの様々な変形をもたらす。最も「純粋な」または「高度な」アプローチは、プロキシをまったく使用しないことであり、これは、リスク中立化ステップを使用して資産の市場価値を修正し、これに基づいて技術的準備金の計算を再実行することを意味する。ただし、これは負担が大きすぎることから、以下のオプションが考えられる。

・オプションa:デュレーション・プロキシ・ステップを使用して資産の市場価値を変更し、この基準で技術的準備金計算を再実行する。
・オプションb:デュレーション・プロキシ・ステップを使用して資産の市場価格を変更し、別のプロキシを使用して技術的準備金への影響を計算する
・オプションc:デュレーション・プロキシ・ステップを使用して資産の市場価値を修正し、技術的準備金への影響を考慮しない。
オプション3:資産主導型アプローチ
(4) オプション4:確定利付資産の金額と資産負債デュレーションのミスマッチを反映した調整
オプション4:確定利付資産の金額と資産負債デュレーションのミスマッチを反映した調整
(5) オプション5:負債の非流動性を考慮した調整
オプション5:負債の非流動性を考慮した調整
(6) オプション6:スプレッドの割合として計算されるリスク補正
オプション6:スプレッドの割合として計算されるリスク補正
(7) オプション7:VAの国固有の増加のトリガー及び計算を修正
オプション7:VAの国固有の増加のトリガー及び計算を修正
(8) オプション8:VAの危機的状況における機能と恒久的なツール機能との間の明確な分離
オプション8:VAの危機的状況における機能と恒久的なツール機能との間の明確な分離
4|2つのアプローチの評価
2つのアプローチについては、長所(Pros)と短所(Cons)が以下の通りに整理されている。

(1)アプローチ1
アプローチ1に従うVAの設計に対する修正は、開示及び報告に関する以下の追加要件によって補足されるべきである。
2つのアプローチの評価・アプローチ1
(2)アプローチ2
アプローチ2に従うVAの設計に対する修正は、開示及び報告に関する以下の追加要件によって補足されるべきである。
2つのアプローチの評価・アプローチ2
5|各オプションと2つのアプローチの影響分析
EIOPAは、オプション1、4、5及び6並びにアプローチ1及び2について、影響分析を行っており、その結果は以下の通りである。

(1)オプション1
オプション1の全サンプルに対する影響は、サンプル会社の加重平均VAが0.24%から0.28%に増加し、VAの影響は(現在の184億ユーロから)32億ユーロ増加して216億ユーロとなる。

(2)オプション4
オプション4の全サンプルに対する影響は、サンプル会社の加重平均VAが0.24%から0.27%に増加し、VAの影響は20億ユーロ増加して204億ユーロとなる。

(3)オプション5
オプション5の全サンプルに対する影響は、サンプル会社の加重平均VAは0.24%に維持されて変わらず、VAの影響はⅠ億ユーロ減少して183 億ユーロとなる。

(4)オプション6
オプション6の全サンプルに対する影響は、サンプル会社の加重平均VAが0.24%から0.22%に減少し、VAの影響は15億ユーロ減少して169 億ユーロとなる。

(5)アプローチ1
アプローチ1の全サンプルに対する影響は、サンプル会社の加重平均VAが0.24%から0.19%に減少し、VAの影響は40億ユーロ減少して144 億ユーロとなる。

(6)アプローチ2
アプローチ2の全サンプルに対する影響は、サンプル会社の加重平均VAが0.24%から0.19%に減少し、VAの影響は37億ユーロ減少して147 億ユーロとなる。
6|EIOPAの対応
EIOPAは、以上の各種オプションと2つのアプローチの提示及びそれらの影響分析を踏まえて、利害関係者に対して、アプローチ1とアプローチ2についてどのように考えているのか等についての意見を求めている。
 

5―まとめ

5―まとめ

以上、今回のレポートでは、ソルベンシーIIの2020年のレビューに関するCPの「ボラティリティ調整(VA)」に関する内容のうち、「技術的改善」及び「設計」について報告した。

次回のレポートでは、「ボラティリティ調整(MA)」に関する内容のうちの「一般適用比率」、「標準式における動的VA」、「VA使用の承認」及び「内部モデルにおける動的VA」について報告する。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2019年12月10日「保険・年金フォーカス」)

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【EIOPAがソルベンシーIIの2020年レビューに関するCPを公表(5)-ボラティリティ調整について(その1)-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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